41歳で突然半身不随…「スパルタ病棟」【病床ROCK尺】vol.8

 

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ある程度状態が良くなってきたところで、看護師さんたちから「空いた時間に立つ練習しましょうか」というお誘い。日々忙しい看護師さんたちが「少しでもよくなれば」と願ってリハビリに協力してくれるのはありがたいことでした。 この頃は左脚に体重が乗せられず、立ち上がってしばらくすると自然に膝が曲がってくる「膝折れ」という状態。右足と左足で別の体重計に乗ると、左は5キロくらいという惨状で、とにかく右手を離して立つというのが不安でした。

最初は1分くらいから立つ練習をして、徐々に3分まで立てるようになったある日のこと。熱心な看護師さんが「じゃあ次は3分を目標に立ってみましょうか」。立ったのはいいのですが、いくら待っても3分が経たない。最近カップラーメンを作ってないから時間の感覚が鈍くなっているのかな、と思いきや

「ごめん、もう4分です」

時計見るのを忘れていたそうです。

看護師さん曰く

「やればできるじゃないですか。折れていたのは膝じゃなくて、心だったようですね」

その後、膝を金具で固定する長い装具と杖を使い、歩く練習を始めました。この装具はロックを外して膝を固定しない状態にできるタイプのもの。動きはスムーズですが、その分筋力が必要で危険なのです。ある日、通りかかった担当の理学療法士さんが「あれ、もうロック外しているんですか。意外とスムーズに歩けていますね」と平然と声を掛けます。

顔色が変わったのは僕だけのようです。近いうちに膝下までの短い装具に取り替える予定で、ぼちぼち安定感のなさにも慣れておかないといけない時期ではありましたが、まだロックを外す許可は出ていなかったのです。看護師さん曰く「忘れていました」。

何というか、僕のリハビリに限って「忘れていた」が多過ぎませんか。ミステリーを書くときのプロットで「全部偶然」という説明にしてしまったら、御都合主義と言われますよ。

 

Profile

法坂一広(ほうさか いっこう)

福岡市を拠点に活動する弁護士、小説家。2011年に『弁護士探偵物語・天使の分け前』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞。以降、弁護士探偵物語シリーズを執筆する。最新作は『ダーティ・ワーク』(幻冬舎文庫、2015年)。趣味はアビスパ観戦とトレイルランニング。西日本新聞社刊登山情報紙『のぼろ』でショートストーリーを連載中。

 

※情報は2016.10.27時点のものです

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