九州紀行小説 “Q子の休日” vol.3/福岡県筑後市「羽犬塚の羽犬伝説」

船小屋温泉郷の散策を終えた私たちは、「船小屋」というバス停から久留米行きのバスに乗った。

10分ほどで筑後船小屋の隣の駅、羽犬塚に到着。

羽犬塚の街を南北に貫く国道209号線を北上しながら10分ほど歩くと「薩摩街道」と記された標識を発見。

この道はかつて江戸と薩摩を結ぶ街道で、羽犬塚は街道沿いの宿場町として栄えたそう。豊臣秀吉や天璋院篤姫も通った道、泊まった場所、と物知りミツグくんが解説してくれる。

羽犬塚小学校の前に羽犬の像を発見。事前学習万全のミツグくんによると、400年もの長き間、この地に語り継がれる「羽犬伝説」からこの土地の名前が生まれたそう。

しかも「羽犬伝説」には2つの説があって、

ひとつは、昔この地に羽の生えたどう猛な犬がいたというもの。「羽犬は旅人を襲ったり家畜を食い殺したりして住民から恐れられていた。天正15年(1587年)4月、天下統一をめざす豊臣秀吉は薩摩(さつま)の島津氏討伐のため九州に遠征、この時羽犬によって行く手を阻まれた。大軍を繰り出しやっとの思いでそれを退治した秀吉は、羽犬の賢さと強さに感心し、この犬のために塚をつくり丁寧に葬った」という“悪犬説”。

もうひとつは、九州遠征に羽が生えたように跳び回る犬を秀吉が連れて来たというもの。「その犬は、この地で病気にかかり死んでしまった。大変かわいがっていた秀吉は悲しみに暮れ、それを見かねた家来たちは、その犬のために塚をつくり葬った」という“良犬説”。

この街にはいくつか羽犬像があるらしいけど、こちらの羽犬くんはどう見ても人を襲うようには見えないわ。“良犬説”ね。某通信会社のCMに出てくる犬にちょっと似てるので勝手に「お父さん」と命名。

「ペガサスとかグリフォンとか羽の生えた伝説の動物はいるけど、これは今まで見たなかで一番シュールだな」。

ミツグくんがぽつりとつぶやく。私も深く同意。

近くのお寺では「お父さん」のお墓を発見。これがまさに「羽犬塚」。隣には豊臣秀吉が寄進したという六地蔵さまが祀られている。きれいなお花が手向けられていて、伝説とともに今でも地元の人たちに大切にされていることがわかる。

国道から鬱蒼と茂った緑が見えたので路地を入って行ってみる。鳥居があるので神社だということはわかるが、社殿がすっぽりと緑でおおわれている。

境内のど真ん中に大木というより巨木。クスノキのご神木がそそり立っている。

その境内の片隅に面白いものを発見。

高さ30センチほどのかわいらしいミニ鳥居。ミツグくんと一緒に、

「子供用かな?」

なんて話していると、ちょうどお参りに来ていた地元のおばあちゃんが、

「腹ばいになって2つともくぐると婦人病に効くとですよ」

と教えてくれた。

気づくと、隣に立っている敏腕紀行ライター・ミツグくんが訴えるような目で私をジッと見つめている。

これはやれということだな・・・。

ミツグくんと私の「愛の結晶」を育むためと思えば容易いことよ、そう言い聞かせてシャッター音の雨あらしの中、なんとか2つの鳥居をくぐりぬける。胸から膝にかけて砂まみれ。

「よし!これで十分だ」

ミツグくんの勢いのいい締めの言葉で、今回の取材はこれにて終了。

羽犬塚駅から在来線に乗って一路博多へ。二人とも歩き疲れて爆睡。危うく降り損ねるところだった。

博多駅のホームに降り立った私たちが目指したのは最近のお気に入り。1番ホームのスタンディングはかたラーメン屋さんだ。

もちろんオーダーは「素うどん」ならぬ「素ラーメン」。390円なり。

トッピングの紅ショウガ、高菜、ゴマでデコレートすると何となく豪華になるじゃない。

お腹もふくれて大満足。次はどこに連れて行ってくれるのかな。

ミツグくんと私の九州“深”発見の旅はまだまだ続くのだった。

<九州紀行小説 “Q子の休日” vol.1~3/福岡県筑後市編 完>

【参考サイト】

■筑後市公式ホームページ「キラリ!筑後遺産」

http://www.city.chikugo.lg.jp/kankou/_1070.html

 

※情報は2016.11.2時点のものです

AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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