福岡グルメ小説“N氏の晩餐”/西新「リカリカ」のビストロフレンチ

「秋深き隣は何をする人ぞ」

と詠んだのはかの俳人・松尾芭蕉だが、せっかくの有給休暇をもらった今日は朝から隣のマンションがカンカン、ガタガタ騒々しい。

ベランダから覗いてみると、どうやら外壁の傷みを補修するようで、鉄パイプの足場を組む準備が着々と進行している。

音楽でもかけてゆっくり読書でもしたかったのだが、到底それを許してくれるような雰囲気ではなく、デニッシュとハーブティーの簡単な朝食兼昼食をとると、急かされるように外に出た。

天神の百貨店や地下街をぶらついたあと、ふと思い立って百道浜の博物館へ。

先週、東京から訪ねてきた取引先の人が、東京の美術館で2,3年前にあった「日本国宝展」で、金印を見るために3時間並んだという話を思い出したのだ。

福岡では並ばずに見られて、しかも入場料200円。写真撮影もOK。

わずか一辺2.3cm。江戸時代に志賀島のお百姓さんが畑の中から見つけたらしいけど、そんな奇跡みたいな話があるのだろうか。本当に不思議だ。

帰り際、ロビーに設置されていた模型に目がとまる。

よく見てみると、この博物館、金印の形してる!

しかも、上から見ると正方形・・・というのは当たり前だけど、市政100周年を記念してつくられたので、一辺の長さを100mにしてあるという徹底ぶり。こんな遊び心があるところがこの街の魅力かもしれない。

そうこうしているうちに夜の訪れ。

今日は月に一度のN氏の晩餐。

待ち合わせのお店は、西新から藤崎に伸びる商店街から一本入ったところにあるビストロ。

西新は路地裏が美味しいことは学習済みなので、今日も期待がふくらむ。

カウンター席のほかにテーブルがいくつも並ぶ店内は、仕事帰りの会社員や学生と思しき若い人たちで8割方埋まっていてとても賑やか。

一番奥のテーブル席でN氏と合流。

まずは生ビールで乾杯して前菜8種盛りからスタート。

安定のラインナップ。肉の粒感を感じるパテに、優しいオムレツ、ポテサラをハムで巻いたりなんかして、その合間にオリーブとかピクルスを挟んで、、、という楽しい流れ作業。しかもよく見ると8種じゃなくて9種あるじゃない!

嬉しい誤算に後続の料理への期待高まる。

続いてガーリックシュリンプが添えらたサラダ。海老のぷりぷり感がもうたまらない。

N氏が選んだ今夜のワインはフランスの白。

涼しい地域のシャルドネはキリッとした酸味が特徴。一方、暖かい地方のシャルドネはトロピカルでフルーティー。今日のシャルドネはフランスでも南部の地中海に面したラングドック=ルシヨン地域のものだからちょっと後者寄り。そしてシャルドネは“麦わら”と称される色の美しさも味の一つ・・・という滑らかな解説が入る。知って飲むのと知らずに飲むのとでは味が何倍も変わるような気がするのはなぜ?

ジュレがかかったローストビーフにはマスタードをちょっとつけて。

続いて出てきた煮込料理「カスレ」は、もともとフランス南西部の郷土料理なんだそう。メニューを一瞥しただけで、ワインと料理の産地を瞬時にペアリングさせるなんて、私には百年経ってもできそうにない芸当だわ。もちろん合わないわけがない。

締めはローストチキンのニョッキ。いままで食べたニョッキの中で一番柔らかくて心地よい触感。チキンの塩味とさらっとしたクリームソースの相性が抜群。

ワイングラスの最後の一滴を飲み干して一息つくと、心地よい喧噪がBGMのように耳に響いてきた。

「天高く馬肥ゆる秋」

私はそんな言葉を思い浮かべながら満喫の一日を振り返っていた。

 

※情報は2016.11.9時点のものです

リカリカ

住所福岡市早良区西新5-2-32
TEL092-822-1555

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AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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