41歳で突然半身不随…「リハビリにもランウェイがあった」【病床ROCK尺】vol.9

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リハビリ入院した病院はよく研修もしていて、僕のようなわりと見栄えのいい患者は「デモンストレーション患者」というのを頼まれることがありました。こちらはいつも通りリハビリを受けていて、それを何十人かが見学しているという状況です。

僕は人前に出るのがあまり気にならないので、特に何ということはありません。ただ、リハビリを施術してくれるのがいつもの療法士さんではなく“えらい先生”に変わります。とりあえず出て行ってリハビリを受けて、元気になって帰るという演出が必要かな、と気を遣ったりしますが、いくら何でもわざとらしい奇跡が起きるはずもありません。

ある日の研修のことです。前に出て行って、担当のH先生に「立って下さい」と言われたので車椅子から立ち上がると、なぜか会場に緊張が走ります。しばらくして落ち着くと、皆さん、僕の足元を覗き込む。「この人、本当に立てるの? 何か補助具を使っているんじゃないの?」と確認されたようでした。病状をどのように紹介されたのかは聞いてなかったのですが、「オレはそんなにひどい状態だったんだな」と今さら思いました。その頃はもう多少は手離しでも歩けるくらいにはなっていたんですけどね。

それから約1時間リハビリが続きました。僕からしたら、いつも担当してくれる療法士さんのリハビリと目に見えた違いが分かるようなものでもなく。研修が終わって「お疲れ様、では車椅子まで歩いて帰って下さい」と言われ、10メートルほど先にある車椅子まで歩くことになりました。みなさんに注目される中を歩くなんてまさにランウェイだなぁと思い、そのまま歩きかけたのですが、ふと1時間前の出来事を思い出しました。なにせ、立ち上がっただけで会場に緊張が走るような患者が、1時間のリハで歩いてしまっては、いくら何でもサクラ疑惑が生じるだろう。自重して杖だけもらったので、ランウェイ感はイマイチ。

 

Profile

法坂一広(ほうさか いっこう)

福岡市を拠点に活動する弁護士、小説家。2011年に『弁護士探偵物語・天使の分け前』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞。以降、弁護士探偵物語シリーズを執筆する。最新作は『ダーティ・ワーク』(幻冬舎文庫、2015年)。趣味はアビスパ観戦とトレイルランニング。西日本新聞社刊登山情報紙『のぼろ』でショートストーリーを連載中。

 

※情報は2016.11.24時点のものです

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