福岡グルメ小説“N氏の晩餐”/けやき通り「ヌワラエリヤ」のスリランカカリーと“ギャラリー梯子酒”

冬晴れの空に飛行機雲。

気温はぐっと下がって肌を刺す冷たさだけど、空気が澄んでいて気持ちいい。

半月ほど前、親友の寛子から久しぶりに連絡があり、けやき通り散策のお誘い。1日限定で面白そうなイベントが開かれるらしい。

寛子は会社の元同僚。3年前に脱サラして今は革細工職人として糸島に小さな工房を構えている。寛子が手掛ける革製品には国内外からの注文が引きも切らず、1年から2年待ちの状態という。

飾らない人柄にとびっきりの美的センス。私のかけがえのない親友だ。

※寛子が初登場した【“N氏の晩餐”/新天町「飛うめ」で粋な昼酒】はこちら

けやき通りのスリランカレストランで待ち合わせ。

広々とした店内はアジアンテイストの装飾品や調度品であふれているが、“雑然”という印象は全くなく、高いレベルで調和がとれている。

スリランカカリー登場。まず見た目で食欲倍増。

さらっとしたルーとライスをスプーンですくって一口。多種多様なスパイスの辛さと風味、そして旨味をココナッツのコクと甘みが優しく包み込む。まさに絶品。

デザートはマンゴーソースがかかったアイスと香り豊かな紅茶。口の中で鳴り響いていた交響曲が心地よく静まっていく感じ。

お腹もほどよく満たされ、けやき通りを護国神社の方角に向かって歩きだす。

お目当てのイベントは、ワイングラスを片手にけやき通りの6つのギャラリーを巡り歩くという企画らしい。今回が3回目で寛子は1回目から毎回参加しているそう。ギャラリーなんて縁もゆかりもなかった私にとっては、本当に未知の世界。だけど今日は心強い道案内がいるので安心して楽しめそうだ。

1つ目のギャラリーで受付をする。1500円を支払ってワイン3杯分のチケットがついたパスポートをゲット。

本物のワイングラスが手渡され、自分のものとわかるようにグラスの足にサインを入れるよう勧められる。これが“マイグラス”となって、今日のギャラリークルージングのお供になる。

控えめにイニシャルを一文字書き入れた私に対して、寛子はさすがの遊び心。楽しんでいる。

ギャラリーの中にあるカウンターにはワインとグラスがたくさん並んでいて、ちょっとテンションが上がる。いよいよギャラリーを巡る冒険、スタートだ。

奥の方では、作品を前に“ギャラリートーク”が展開中。

よく見たら解説しているのは、9月のホテルアートフェアでN氏から紹介された、ギャラリストのMさんだ。Mさんの熱い解説にみんな真剣に、それでいて楽しそうに聞き入っている。

アートフェアを紹介した【“N氏の晩餐”/アートフェア初体験と中洲「Bar Higuchi」のモスコミュール】はこちら

次なるギャラリーに移動。

ギャラリーはガラス張りになっていて、一方からは護国神社の緑が、もう一方からは舞鶴公園の緑が一面に広がっている。

その緑をバックにして、博多港に架かる荒津大橋を描いた作品が展示されていた。ちょっとどんよりとした雲がかかっていて、博多湾の雰囲気がよく出ている。

絵に見入っていて気づかなかったが、奥の方で寛子が茶色い髪と豊かな髭、そして緑色の目が印象的な男性と話している。どうやらフランス語のようだ。

寛子が私にその男性を紹介してくれる。フランス・ニース出身の画家、ニコラ・デペトリスさん。日本人の女性と結婚して、現在は福岡に住んでいて、日本とフランスを行き来しながら作品を制作されているとのこと。

「福岡の街の風景が大好き」というニコラさんの言葉にその柔らかな笑顔が相まってとても親近感を感じる。アーティストと会話できるなんて、なんて贅沢なんだろう。

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