私は実写化に対する怒りを『プロゴルファー猿』で、乗り越えました。

怒りを抱えています。

怒りを避けて生きているのに、それは突然やって来るのです。不可抗力としてやって来るのです。不可抗力の怒り、それはつまり、原作の実写化です。

近年、漫画等々の実写化が続きます。CG技術の進歩や原作ストーリーの質の高さを考えれば自然な流れなのかもしれません。ですが私のように器の小さい人間には、耐えられません。直近でいうと、ジョジョの実写化です。しかも四部です。四部には吉良吉影が出てきます。吉良吉影は私の最愛のサイコパスです。もしや誰かが吉良を演じるかもと想像するだけで、わなわな震えます。ですが、ジョジョはまだ耐えられます。いつか来るだろうと覚悟が出来ていたからです。私に追い打ちをかけたもの、それが三島由紀夫【美しい星】の実写化です。【美しい星】は三島作品の中でも特にお気に入りです。何度も読み直しています。普段は書店の新潮文庫の三島の棚にひっそり一冊挟まれてあるだけのこの本が、実写化キャンペーンに伴い、雑誌の横に大量に平積みされていました。私はショックのあまり眩暈を覚えました。秘密の恋人が晒されたような、行きつけの食堂が孤独のグルメに出たような、そういう切なくて悲しい怒りの感情です。

 

我々はこの怒りをどう鎮めればよいのでしょう。自分の脳内で構築された愛読書の世界を外部の人間が全く違う世界観で再現し、それを世にぶちまけ続けるという現実とどのように向き合えば良いのでしょう。そう悩んでいるある日、気付いたのです。答えはプロゴルファー猿にあるのだ、と。

何故、突然プロゴルファー猿かというと、実は先日、ゴルフに誘われたからなのです。以前よりゴルフなんて死んでもやりたくないと思っていました。服装やプレイ代にお金がかかり、見栄の張り合いをしているような先入観があるからです。先入観は良くありません。ですが、劣等感がなく無駄遣いのきらいな私のような人間にとって、ゴルフはどうにも相性の悪いスポーツに思えるのです。しかしそこで、いや、確か歴史上の偉大な人物に私が尊敬していたゴルファーがいたはずだ。誰だったかな。そうだ、彼の名前は、プロゴルファー猿だ!と思い出した次第であります。

 

一旦、プロゴルファー猿に集中しましょう。

彼の本名は、猿谷猿造です。居住地は、H県奥山市の猿ヶ瀬です。猿で貫いています。ですが干支は、まさかのうさぎ年です(昭和38年生まれ)。ゴルフは六歳で始めます。賭けゴルフ専門です。関西弁訛りで、金への執着が凄まじく、稼いだ賞金は木の切り株に隠してあります。市販の薬が身体に合わず、病気やケガは薬草と湯治で治します。なので、薬草の知識は非常に長けています。ゴルフクラブは、手作りです。木を削って作ります。シューズは履きません。シューズを履かないため雨の日のゴルフ対決では苦戦をしますが、滑り止め代りに松脂を手足に塗りたくり、グリップにして克服します。

 

プロゴルファー猿、最高じゃないですか。

今回、改めてプロゴルファー猿を学んでいるうちに、彼に対する親しみと尊敬の気持ちが胸から溢れました。プロゴルファー猿は、現代人に夢と希望を与えます。貧困も、階級も、劣等感も、全て超越します。守銭奴を公言し、偽善を忌み、清濁併せ呑む潔さがあります。プロゴルファー猿こそ、実写化されるべきものではありませんか。実写化をすると、大抵が大衆用に歪曲したストーリーとなります。原作にある複雑さや難解さというものが削除されます。ですがプロゴルファー猿の場合、このままいけます。実写化に最適の作品です。今、我々取り組むべきことは、ジョジョでも三島作品でもなく、プロゴルファー猿の実写化です。私は一日本人として、プロゴルファー猿の実写化を世界に訴え、プロゴルファー猿の啓蒙活動をします。そう心に決意したのであります。と、そのときに、ジョジョ等の実写化に対する怒りが消えていることに気付きました。つまり、実写化されたくなかった作品の実写化に意識を集中して悲しむより、寧ろ実写化して欲しい作品を見つけ、そこに意識を集中させることによって怒りを浄化したのであります。

勿論、これは諸刃の剣です。実写化の場合、プロゴルファー猿は是非とも猫ひろしに演じて欲しいのですが、猫ひろしではなく池乃めだかを推す人もいるでしょう。その場合は、猫ひろしが猿を演じることで池乃めだか推しの人のプロゴルファー猿の世界観を破壊することになり、私がジョジョ実写化に対して抱いた憤りを池乃めだか推しの人が抱えることになります。そういう矛盾を踏まえてなお、私は実写化に対する怒りは実写化で浄化すべきだと思うのです。

 

誰かが何かを実写化すること、それによって自分の世界が壊されたような気分になること、これはコントロール出来ないことです。私がその物語を想像することが自由なように、誰かが違う想像をすることは自由だからです。そして権力と財力のある者の想像が、その想像の具現化に成功するのです。悪しき資本主義!ですが憤らず、プロゴルファー猿作戦で乗り切りましょう。具現化の成功率は置いといて、誰しも想像の自由を持つのであれば、いっそのこと互いの想像の自由を十分に利用し、自分の理想的な実写化に集中する方が愉快です。

 

今後も続くであろう、商業主義の実写化。いちいち心に波風を立てない為にも、我々は肯定できる実写化を想像しましょう。私自身、今日も明日もプロゴルファー猿の実写化を夢見て、健やかに過ごしていければと思うのでありました。

 

※情報は2017.4.20時点のものです

カミーユ綾香

北九州市出身。在日韓国人と中国残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。 警固インターナショナルの代表として、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。http://www.kego-international.com/

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