熊本の美しい風景をたくさんの人に伝えたい 佐野直さん

4月15日(土)から、けやき通りのギャラリーBiNで個展を開催する佐野直さんに会うため、桜の花がほころび始めた春の一日、彼女が活動の拠点としている熊本市を訪れた。

待ち合わせ場所にした熊本の繁華街・下通商店街に颯爽と現れた、アーティスト・佐野直さん。

インタビューの前に寄りたい場所があるとのことで、案内されたのはアーケード街の中にある書店内に設けられたギャラリースペース。そこでは地元の作家、松永健志さんの展覧会「200円/2000点の/作品たち」が開かれていた。ハガキ大の薄茶色の紙に色鉛筆で丁寧に描かれた作品たちに見入る佐野さん。

レジで会計を済ませた佐野さんに、何枚購入したか尋ねてみると、「一枚に決めようと思ったんですけど、決めきれなくて二枚買っちゃいました。」という意外な答えが返ってきた。

「一番好きな一枚を決める、というのが大事だと思うんです。そうすることで、その一枚への思い入れや記憶がずっと残る、という気がして・・・。」

その言葉に彼女の中にある強い「芯」のようなものを感じた。

それから、熊本市の中心部にある熊本現代美術館に移動して、今回の個展に向けての意気込みや作品制作にかける思いを聞いてみた。

―まずは、アーティストを目指そうと思ったきっかけについて教えていただけますか?

佐野 私は三姉妹の末っ子なんですが、3人とも小さいときから絵を習いに行かされていて、そのまま自然な成りゆきとして大学(福岡教育大学生涯スポーツ芸術課程)で美術を学び、今に至るという感じですね。

 

―佐野さんの絵の特徴は、点描画法を使った色鮮やかな色彩表現だと思うのですが、この技法にたどり着いたのはいつ頃ですか?

佐野 小さなころから、点描が好きでした。とはいえ、そのころは今みたいな細かい描写ではなく、おおざっぱに大きな筆で描くという感じでしたが…。そうですね、一番大きかったのは、大学4年の頃、英国に留学したことでしょうね。そのときに訪れたノルウェーのソグネ・フィヨルドの美しさに魅了され、「この景色を表現するには点描しかない」と思ったんです。そして、アクリル絵具をベースに描いた作品を油絵具で仕上げるというスタイルと、画面に余白を作るスタイルをその頃確立しました。

「LandscapeⅠ」130cm×162cm(2010年)

「LandscapeⅠ」130cm×162cm(2010年)

 

―やはり一番影響を受けたのは印象派の作家たちですか?

佐野 個人的にはムンクやゴッホといった「表現主義」、いわば感情を作品に投影するような作家の画法を意識して作品を制作していたのですが、あるとき、モネの作品を見て、「似てるな…。」と思いました。緑の色彩の中に赤がぽつんと一点あったり、青の色彩の中に黒がぽつんと一点あったり。モネの絵を見る機会は多かったので、知らず知らずのうちに影響を受けていたのでしょうね。

 

―佐野さんの作品のモチーフは、海や山、田園風景や都市の夜景など、同じ風景画でも多種多様ですが、その風景は実在する場所なのですか?

佐野 大学を卒業したのち、しばらくは福岡に拠点を置いて作品を制作していたのですが、2年ほど前に故郷(熊本県合志市)に近い、熊本市に拠点を移しました。それからは、意識的に熊本の風景を描いています。今回の個展の案内状に使用した「far away 2」という作品は、宇土港からみた島原半島を描いたものです。また、展示予定の「Pattern 2」は有明海に面した御輿来海岸(おこしきかいがん)の干潟を描いたもの、「fall 2」は小国町の鍋ヶ滝を描いたものです。作品を制作していてあらためて思うのは、熊本は本当に豊かな自然と素晴らしい風景に囲まれた土地だということですね。

「far away 2」33.3cm×53cm (2016年)

「far away 2」33.3cm×53cm (2016年)

 

「Pattern 2」41cm×31.8cm (2017年)

「Pattern 2」41cm×31.8cm (2017年)

 

「fall 2」24.2cm×41cm (2016年)

「fall 2」24.2cm×41cm (2016年)

 

―今回の個展にかける思いはいかがでしょうか?

佐野 一辺1メートルを超える作品を描くこともあるのですが、今回は比較的小さめの作品を展示しますので、ご自身の部屋に飾るイメージで見ていただきたいですね。海外に行くと、一般庶民の家庭に本物の絵が飾ってあることはごくごく普通なのですが、日本だと、飾ってあったとしても有名作家の有名作品のポスターや複製品、というパターンが多くて、本当に損をしていると思います。部屋の壁に本物の絵がドーンとかかっているだけで、本当に豊かで幸せな気持ちになるんですけどね。

 

―個展の会場にもいらっしゃるのですか?

佐野 4月15日(土)、16日(日)と4月21日(金)、22日(土)、23日(日)の5日間の会期中はほとんど会場にいる予定で、来場者の皆さんとお話しできるのを楽しみにしています。作家にとって自分の作品を好きになってくれる人というのは本当にかけがえがない存在です。声をかけていただいたり、感想を教えていただいたりするだけで、嬉しい気持ちになるだけではなく、次なる作品制作のエネルギーが湧いてくるような気がします。それに、4月15日(土)は、けやき通りの6ギャラリーをワイングラス片手に巡る「ギャラリー梯子酒」というイベントが開催されるそうで、お酒が大好きな私にとっては夢のような一日になりそうです。(笑)

取材の後、通りにあったビアホールの前で記念撮影。

熊本の印象的な風景がけやき通りのギャラリーに広がる5日間。その場所で「私ならこの一点」という気持ちで佐野さんの作品たちを眺めてみたいと思った。

企画・構成/福博ツナグ文藝社

1 / 2

関連タグ

この記事もおすすめ