175億円分!?“奇跡の生還”を果たした名画に注目! <九州国立博物館>

ルノワール、セザンヌ、ファン・ゴッホ、モネ、ピカソ…。誰もが一度は耳にしたことがある豪華な作家たちの名作が勢ぞろいする「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」が、太宰府市の九州国立博物館で開催されています。スイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890−1956)がたった一人で集めた約600点ものコレクションのうち、選りすぐりの64点の名画が一度に鑑賞でき、またその約半数が日本初公開ということで話題を集めています!

<目次>
「突然の悲劇」欧州史上最大の美術品盗難事件が起こる
ゆがんで見える…? セザンヌの傑作「赤いチョッキの少年」
最愛の妻の死が近づく中で描いた モネの「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」
ドガが下書きなしで描いた「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」
ファン・ゴッホが最晩年に描いた「花咲くマロニエの枝」


盗難被害にあった4作品 左上:フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」、
左中:エドガー・ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」、左下:クロード・モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」、右:ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」

盗難被害にあった4作品 左上:フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」、
左中:エドガー・ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」、左下:クロード・モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」、右:ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」

中でも注目は、当時の被害総額およそ175億円と推定される「欧州史上最大の美術品盗難事件」に巻き込まれながらも帰還した“奇跡”の4点です。本稿ではこの4点について解説していきますので、展覧会ではポイントを踏まえて鑑賞してみてくださいね。

 

「突然の悲劇」欧州史上最大の美術品盗難事件が起こる

2008年2月10日、日曜日の閉館約30分前に事件は起きました。武装した3人の男たちが押し入り、エドガー・ドガ(1834-1917)、ポール・セザンヌ(1839-1906)、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-90)、クロード・モネ(1840-1926)の4作品(当時の被害総額約175億円)を盗み出しました。ファン・ゴッホとモネの作品は8日後スイスで盗難車から見つかり、その後ドガとセザンヌの作品も発見されました。

幸運にも作品の状態はいずれも良いままで、容疑者4人も逮捕されています。奇跡の生還を果たした“強運”の4点。今回はこれら全てが福岡で見られるまたとない機会です。

 

ゆがんで見える…? セザンヌの傑作「赤いチョッキの少年」

ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」

ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」

セザンヌの肖像画の中でも最も有名な作品。少年の周辺の濃い色調と、顔や右腕を覆う白いシャツ、赤いチョッキとのコントラストが鮮やかで、思わず目を奪われます。また、少年の背中と長さが際立つ右腕の曲線、それに対抗して延びるテーブルの斜め線の構図から、空間に不思議なゆがみを感じる印象的な作品。

さらに、少年の腕に注目すると、右腕が左腕に比べて異様に長く不自然に感じる人もいるのでは? しかし、作品全体としてはその不自然さは気にならず、むしろ自然に見えるから不思議です。

 

最愛の妻の死が近づく中で描いた モネの「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」

クロード・モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」

クロード・モネ「ヴェトゥイユ近郊のヒナゲシ畑」

最愛の妻カミーユの健康状態が悪くなったり、支援者が破産したり、モネにとって苦難が続いていた1870年代後半に描かれた作品。カミーユは79年、32歳で死去。その悲しみが近づいていた79年頃に描かれたとされますが、細かいタッチで描かれたヒナゲシの花はどれも鮮やかで生き生きと咲き誇り、作品は幸福感に満ちています。

緑に囲まれた街の風景と空の描写では筆のタッチが違い、筆の運びに抑揚をつけてヴェトゥイユの風景を描き出しているのがよく分かります。

 

ドガが下書きなしで描いた「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」

エドガー・ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」

エドガー・ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」

長い付き合いの友人であるリュドヴィック・ルピック伯爵と2人の娘が屋外で過ごしている姿を描いた1枚。ドガは、リュドヴィックを度々描いていて、この作品はアトリエで3人の肖像画を描き、その後屋外の背景を描き込んだものとされています。素早さと綿密さを合わせ持った筆致は、ドガが得意とした手法とされます。

この作品はデッサンなど事前準備なしに描かれたとされ、モデル親子の一瞬の姿を生き生きと記録しています。

 

ファン・ゴッホが最晩年に描いた「花咲くマロニエの枝」

フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」

フィンセント・ファン・ゴッホ「花咲くマロニエの枝」

ビュールレが集めた7点のファン・ゴッホの作品の中で唯一の花の絵画。1890年、ファン・ゴッホは療養院を退院した2か月後に銃で自ら命を絶ちますが、そのわずか2か月の間に約80点を制作するほど、死の直前まで創作に意欲を燃やしていました。「花咲くマロニエの枝」も最晩年に描かれた作品の一つですが、それでも筆触は厚みを増し、ファン・ゴッホがパリ時代に取り入れた新印象派主義の技法を独自に発展させていたことを示しています。

花が咲く枝を、人生の節目における「始まり」と見なしていたというファン・ゴッホ。弟のテオが息子を授かった後、「花咲くアーモンドの枝」を描いて送り、弟を訪ねた際にそれを見たことがきっかけで、この作品を制作した可能性があるとされています。

 

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」は名だたる巨匠たちの作品が一度に見られる貴重な機会です。ビッグネームの競演は、普段美術館に行き慣れていない人でも楽しめるはず。雨の多いこの季節、九州国立博物館に足を運んでみてはいかが?

 

All images: ⓒFoundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland)
Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

 

<九州国立博物館 至上の印象派展 ビュールレ・コレクション>
■会場:九州国立博物館(太宰府天満宮横)
■開催期間:2018年7月16日(月・祝)まで好評開催中
■休館日:6月4日(月)、6月18日(月)、7月2日(月)
■開館時間
・9時30分〜17時00分(入館は16時30分まで)
・金曜日・土曜日【夜間開館】9時30分〜20時00分(入館は19時30分まで)
■料金
・一般 1,600円(1,400円)、高大生 900円(700円)、小中生 500円(300円) 
 ※( )内は夜間割引および団体料金。

そのほか、詳しくは※公式HPへ

※情報は2018.5.30時点のものです

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