モネが好きだったスイーツとは?【レシピ付きコラム】

  • 2018.6.4

7月16日まで、九州国立博物館で「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」展が開催されています。スイスの実業家で、熱いアートコレクターだったエミール・ゲオルク・ビュールレさんが集めた屈指のコレクションがまとめてやってくるというこの展覧会。オランダの国民的画家フランス・ハルスからはじまり、ドラクロワやクールベ、アングルなど19世紀フランスの巨匠、ルノワール、ファン・ゴッホ、ボナールなど、印象派・ポスト印象派、20世紀の巨匠までがずらりと並ぶ驚異的な展覧会です。

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東京会場での展示の様子

東京会場での展示の様子

展示室にかけられた約60点「全て名画」といってもいいこの展覧会で、個人的にひときわ会えて嬉しかった作品をご紹介させていただきます。

■充実のゴッホコーナー
展覧会では6点のゴッホ作品が展示されています。
ゴッホの画業はオランダ時代を出発点として、パリ、アルル、サン=レミ、オーヴェールと、大きく5つの時期に分けることができます。
今回、嬉しいことにその5つの時期を全部網羅するゴッホ作品が揃っているのです。
ゴッホコーナーの中の1点《花咲くマロニエの枝》は美しく大きな絵です。73×92cmという巨大なキャンバスにクローズアップされたマロニエの花が描かれています。
1890年5月、ゴッホは南フランスのサン=レミからオーヴェール=シュル=オワーズに移り暮らしました。5月20日にこの町に着くと、ゴッホは直ぐに絵のモチーフを探し始めます。そして5月25日、早速下宿の近くにある大きなマロニエの木を描くのです。
ともかく彼はいつも絵を描きたくてしょうがなかったのでしょう。新しい場所に移ると、まずは町中を歩き回って描きたいものを探しまわるのです。町並みや家、畑や果樹園、野に咲く小さな花など、画家は遠くを見たり、近くを見たり、上や下に目線を動かしながら、必死にモチーフを探しまわるのでした。
そうして出会ったマロニエの木。この時期、フランスのあちらこちらでマロニエの花は丁度満開を迎えていました。ゴッホは数日後、木から枝を自らカットしたのでしょうか、花瓶に生けた《花咲くマロニエの枝》をクローズアップで描いたのです。

■死を前に描いた「花咲くマロニエの枝」
ひまわりの画家としても知られるゴッホですが、彼は心底花を愛した人でした。
オーヴェールでゴッホの世話人だったドクター・ガシェの家には見晴らしの良い庭があり、画家はその庭で花の絵をいくつか描いています。この絵も庭に置いてあった赤いテーブルの上に花瓶を置いて描いたものです。絵の手前を見ていただくと、大きなストロークで赤い絵の具が塗られていますが、これはテーブルの色ということになりますね。

フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲くマロニエの枝》

フィンセント・ファン・ゴッホ《花咲くマロニエの枝》

力強く枝を伸ばすマロニエ。葉は黄緑から深い緑まで色調豊かに彩られています。白い花は小さく愛らしく咲き誇ります。背景はゴッホが愛する色、プルシャン・ブルーです。とりわけ大きなストロークとくっきりとした筆目はこの時期に見られる特徴の一つです。
同年の7月末、ゴッホは自ら命を絶ってしまいます。最後の地となったオーヴェールでは約70日の間に80点以上もの絵を描きました。最後まで制作意欲を失わなかったゴッホ。その死を2ヶ月後に控えながらも、画家は花の輝きを画面に表そうと必死に描きました。《花咲くマロニエの枝》には、花を愛し、絵を描くことを愛したゴッホの最後のきらめきが込められているようにも思えるのです。

■モネの傑作いろいろ
この展覧会には全部で4点のモネ作品が展示されています。幅4.25メートルに及ぶ睡蓮を描いた作品《睡蓮の池、緑の反映》(1920-1926)は展覧会の大きな見所の一つです。この睡蓮もそうですが、モネは「水辺の風景」をこよなく愛し、繰り返し描きました。《陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン》(1899-1901)もロンドンに流れるテムズ河畔という水辺の風景を舞台に描かれた作品です。

クロード・モネ《陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン》

クロード・モネ《陽を浴びるウォータールー橋、ロンドン》

1870年、普仏戦争を避け、モネは初めてロンドンを訪れました。それから約30年の月日を経て、1899年から3年の間、3度この町に滞在し、たくさんの絵を描きました。この絵もその間に描かれたものです。
やわらかな筆致は画面に溶け出さんばかりです。夕暮れ時のテムズ川とそこに掛かるウォータールー橋は、霞の中でぼんやりと佇みます。右下にはゆっくりと進む二艘の帆船の姿も描かれています。
流れゆく川も、堅牢な橋も、霞の中で一体となり、光と淡い色彩が幻想的な風景を奏でています。モネの優しいタッチが美しく印象的な作品です。

■モネの好きだったスイーツ
モネは好物やいつか食べてみたい料理のレシピを綴ったノートを残しています。200点に及ぶ料理やスイーツのレシピが連なるこのノートに、イギリス風のお菓子がいくつか登場します。
度々ロンドンを訪れたモネは、フランスのお菓子とはまた違った趣向のイギリス菓子に胸をときめかせたのかもしれません。そんなモネの顔を想像しながら、料理ノートの中からスコーンを再現してみました。

さっくりホロホロとしたスコーン。イギリスでは「クロテッドクリーム」やジャムをたっぷりつけていただきます。クロテッドクリームは、バターと生クリームの間のような、脂肪分たっぷりなクリームです。

晩年のモネの写真を見ると、長く髭を伸ばし、ちょっとお腹が大きいという印象があります。光がある限り、日中のほとんどは絵を描いていたというモネ。彼にとって、三度の食事やティータイムは、筆を置く限られた休憩時間として、とても大切だったのではないでしょうか。

食いしん坊なモネにも想いを馳せつつ、その作品を展示室で楽しんでくださいね!

*スコーンのレシピ

材料(約6個分)
薄力粉 200g
ベーキングパウダー 小さじ2
砂糖 30g
塩 ひとつまみ
バター 70g
卵黄 1個分
牛乳 80cc
強力粉(打ち粉)適量
生地の表面に塗る牛乳 適量

1 ボウルに薄力粉とベーキングパウダーをふるい入れ、砂糖、塩を加えよく混ぜる。
2 バターを小さくカットし、1に加えよく混ぜる。その際、粉とバターを摺り合わせるようによく混ぜ合わせる。
3 2に卵黄と牛乳を入れ、ヘラで混ぜ合わせてからまとめ、ラップで包んで30分以上休ませる。
4 打ち粉をして、3の生地を綿棒で1cmくらいの厚さに伸ばし、直径5cmくらいの丸い方で抜く。
5 5の表面に牛乳を塗り、210℃に予熱したオーブンで15〜20分焼く。

All images:©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland)
Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

 

ライター
林 綾野

キュレーター、アートライター。

美術館での展覧会企画、絵画鑑賞のワークショップ、美術書の企画・執筆を手がける。画家の創作への思いやその人柄、食の趣向などを探求、紹介し、芸術作品との新な出会いを提案。絵に描かれた「食」のレシピ制作や画家の好物料理の再現など、アートを多角的に紹介する試みを行う。近著に『浮世絵に見る江戸の食卓』(美術出版社)『絵本でよむ画家のおはなし ぼくはクロード・モネ』『ミッフィーの食卓』(講談社)などがある。

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本記事を寄稿いただいた林綾野さんは、モネやゴッホに関する書籍を発行されています。この機会に様々な形で印象派の作家、作品に触れてみてはいかがでしょう。

【林綾野さんによる印象派関連著作】
「ぼくはクロード・モネ」
「ぼくはフィンセント・ファン・ゴッホ」
「モネ 庭とレシピ」

また、「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」タイアップ企画として、福岡市内の一部書店では印象派関連書籍の特集コーナーを展開しています。書籍のおすすめポイントや参加書店等の詳細はアルトネの今後の記事で発信予定です。お楽しみに!(アルトネ編集部)

※情報は2018.6.4時点のものです

九州国立博物館

住所福岡県太宰府市石坂4-7-2
TEL050-5542-8600(NTTハローダイヤル)
URLhttp://www.kyuhaku.jp/

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