びじゅチューン!井上涼さん独占インタビュー「福岡は家族っぽい雰囲気」

  • 2018.7.4

「びじゅチューン!『井上涼の印象派ライブin福岡』」で九州国立博物館にやってきた、アーティストの井上涼さんに突撃、独占インタビュー! あのゆるっとした、なのに妙に印象に残って脳内リピートしてしまう曲と、ついつい目が引き寄せられるアニメーションの作品は、どのようにして作られているのでしょう。制作の話を中心に、いろいろお話を伺いました。

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―井上さんの作品は、作詞から作曲、アニメーションから歌唱まですべてご自身で手掛けられるということですが、そのアイデアはどのように湧いてくるんでしょう。

井上 「びじゅチューン!」の場合は、オリジナルの美術作品の図録やネットで検索した画像など、見られる範囲の画像を元に、まず簡単にさらさらってシャープペンシルで描き写します。絵って、ふわっと見るだけだったらあんまり何も感じないことが多いんですけど、描き写すと、「あれっ?こんなところにこんな人描かれてたんだ」って意外と気づくことが多くて。たとえば、ルノワールの《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》の場合、「ピンクのほっぺたの人がいっぱいいるな、なんか幸せそうだな」って。気づいたところから生まれることが多いです。

―作品の背景や、作家の意図するものなどを取り入れたりするんですか?

井上 発想した後に、その作品について調べて肉づけしていくことはよくありますが、最初のとっかかりは、自分が見てどう思ったかというのを大事にしています。「びじゅチューン!」は美術に対して親しみを感じてほしいという目的の番組ですし、私が最初に思ったことが皆さんにとっても、「あっ、私もちょっと似たようなこと思ったかも」っていうことにつながるかもしれないので、その第一印象が大切だと思っています。あとは、その時々で思った事を歌にしていくというふうに進めています。

―美術が好きな人はもちろん、美術って難しいと思っている人たちも惹きつけるのは、作品と少し離れた視点がポイントのように思えるのですが。

井上 そうですね。でも、必ずしもインスピレーションだけではありません。たとえばフェルメールの《牛乳を注ぐ女》も、重心を左側に傾けて牛乳をそっとかけているように見えるところから発想しています。このように画家が描くそのものの絵から発想するようにすると、不思議と絵の範疇の中に収まるように、近いところにいけるんじゃないかなって思います。

―実際の作品とテーマが異なってても、違和感がないのはそういうことなんですね。

井上 ほんとですか? だったらうれしいです(笑)。言われてみればそうかもな~ぐらいに思ってもらえたら、なんか一番いいかな。

 

 

―制作過程を教えていただけますか。

井上 大きくは歌から作って、その後、アニメを作ります。歌も先に歌詞ができて、そして伴奏ができて曲として仕上がって、スタジオ部分の内容を決めて撮影をして、最後にアニメができて番組ができるという感じです。

―井上さんの作品は、曲が耳というか脳にずっと残るほど印象的です。音楽は、吹奏楽部で経験されたと聞きましたが。

井上 もっとたどれば母がピアノの先生だったんで、音楽が身近なところにあったんです。もうちょっというと父も彫刻をやっていて、美術も音楽も身近なところにある生活をしていたので、そもそも音楽には親しみをもっていました。そこに高校の時に吹奏楽部に入って、トランペットを担当しました。トロンボーンとかチューバとかいっぱい分かれて、低音はこの人たちがこの人数でやっててとか、上の方ではフルートがキラキラ2人ぐらいでやってるんだとか、物理的に音楽を垣間見るような体験をして、「もしかしてパーツを作ることができたら音楽全体も自分で作ることができるんじゃないかなぁ」と感じたのが、今に生きていると思います。強豪高校ではなかったのですが、自分にとっては鮮烈な体験でした。

―話は変わりまして、「至上の印象派展」のご感想を教えてください。

井上 私もなんとなくというか、中途半端な知識が付いてきたんですけど、そんな知識量をもってみても、ゴッホがあるし、セザンヌもあるし、ルノワールもあるし、なんか有名芸能人がいっぱいいるかのような印象を受ける、とても楽しい展覧会だと思います。しかもいろんな人たちによるタッチの違う絵が並んでいる。あの人はこう描いていたけど、この人はこうなんだって、たとえば人の顔という共通点で見てみるとおもしろいですね。セザンヌの作品は未完成で手数がそんなに入ってないけど人に見えるなぁとか、マネは上手いけど筆が早そうだなとか。風景画でも近いところと遠いところを一緒に描いている人もいれば、遠いところだけ描いている人もいるし。たくさん画家が並んでいるから、それぞれの画家の視点が推測できてとてもおもしろい。しかも、カラフルですしね、いろんな意味で。

ポール・セザンヌ《庭師ヴァリエ(老庭師)》1904-06年

ポール・セザンヌ《庭師ヴァリエ(老庭師)》1904-06年

エドゥアール・マネ《オリエンタル風の衣装をまとった若い女》1871年頃

エドゥアール・マネ《オリエンタル風の衣装をまとった若い女》1871年頃

 

―曲にしたい作品はありましたか?

井上 気になったという点では、ピサロの雪景色の絵ですね。けっこう地味な作品ですが、とってもきれいな雪景色が描かれていて。なんかそういう綺麗だなとか思ったときはなんかしら曲にできることが多いので、ピサロの雪の絵は曲にできそうかもと思います。

カミーユ・ピサロ《ルーヴシエンヌの雪道》(1870年頃)

カミーユ・ピサロ《ルーヴシエンヌの雪道》(1870年頃)

 

―「びじゅチューン!」はどのように作品を選んでるのですか?

井上 プロデューサーと一緒に選んでいます。子どもたちが後になって、歴史や美術の授業で勉強する時に、「なんで知ってるんだっけ?」って思えるような有名な作品が中心です。西洋と東洋と日本のもの、建築や立体などまんべんなく網羅しています。

―5年前にも福岡で2日限りの個展をされましたが、福岡の印象は。

井上 実は福岡は今回で5回目なんです。昨日、すっごい美味しいモツ鍋を食べて、印象がすごくモツ鍋に寄ってるんですけど……(笑)。優しい印象ですね。ライブでもそうでした。プロジェクターで絵が映し出されたときも「あー」とか言ってくれて、家族っぽい雰囲気のような空気感が出ていました。

―うれしい感想ですね。では、最後に今後の活動について教えてください。

井上 今年の夏、「びじゅチューン!」とのコラボ企画として、鹿児島県・霧島アートの森で7月6日から「井上涼展 夏休み!オバケびじゅチュ館」を、東京国立博物館で7月24日から「なりきり日本画美術館」展を開催します。それらの展覧会と番組のことで頭がいっぱいなので、それより先のことをまったく考えられないんですが……その展覧会をできるだけよいものにしたいなと思っていますし、また番組も頑張って作っていかねばという気持ちです。

―霧島アートの森! 鹿児島はアルトネの掲載エリアです。ぜひ、見どころを教えてください。

井上 展覧会は2部構成で、半分が「びじゅチューン!」がどうやってできているかを紹介します。制作プロセスや、成果物として私が描いた原画や作品スケッチとか、音がどうやって重なっていってるかなどを展示します。番組がこうやってできているんだな、ここは大変そうだなと感じてもらえるんじゃないかと。もう半分は私の個人の作品で、ここ数年作っている忍者がでてくる作品と、夏だしホラーがみんな好きだろうなとちょっと怖めの作品を出そうかなと思っています。プロジェクターを何台も使って、壁とか床とか、部屋全体で作品を上映する感じですね。盛りだくさんな展示に加え、美術館の森の中にある彫刻も見ることができるので、3倍ぐらい楽しめる感じの覚悟でお越しください。

井上涼(いのうえ・りょう)
アーティスト。金沢美術工芸大学卒業。卒業制作作品《赤ずきんと健康》がBACA-JA2001映像コンテンツ部門で佳作受賞し、話題に。2012年にアニメ作品《YODOKARI》が第24回CGアニメコンテストで佳作受賞。2013年8月より、テレビ番組「びじゅチューン!」での作品を手掛ける。

「びじゅチューン!」
世界の「びじゅつ」を歌とアニメで紹介する番組。毎週水曜19:50よりNHK Eテレにて放映中。

作品画像はいずれも
©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland)  Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)


ライター:木下貴子

※情報は2018.7.4時点のものです

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