鎌倉のアイドル写真?国宝「随身庭騎絵巻」 連載「オークラコレクション裏話」㊤

 12月9日まで、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開催中の展覧会「オークラコレクション」。明治・大正期の実業家大倉喜八郎と長男でホテルオークラ創業者の喜七郎が集めた美術品約110点には、隠された逸話がある。九州国立博物館の主任研究員、山下善也さんに、展示作品の裏話を聞いた。

連載「オークラコレクション裏話」㊥ 幻の若冲版木が縁側に 伊藤若冲の「乗興舟」 
連載「オークラコレクション裏話」㊦ あの大作にパクリ疑惑 横山大観の「夜桜」 

国宝「随身庭騎絵巻」(ずいじんていきえまき)

 かつて天皇らを警護するSPは「随身(ずいじん)」と呼ばれ、屈強さだけでなく、容姿端麗であることが求められた。そんなイケメン9人を描いたこの作品は、いわば鎌倉時代の「男性アイドル写真集」。

随身庭騎絵巻

随身庭騎絵巻(部分)

 ところが、よく見ると、太った出っ歯の男や、細いつり目の痩せこけた男もいるではないか。正直「どこがイケメンなの?」と突っ込みたくなる。

随身庭騎絵巻(部分)

随身庭騎絵巻(部分)

 作者は画家の藤原信実(のぶざね)。父親の隆信と並んで「似顔絵」の名手と称賛された。九州国立博物館の主任研究員、山下善也さんによると、中国から当時伝わった写実的な技法を使って、顔や体形を細かく描き分けている点が特徴。その巧みな筆は、人物の性格までも浮き彫りにしたという。

 「貴族たちは信実に描かれるのを嫌ったという話が文献に残っているんですよ」。山下さんの解説を聞きながら、信実の鋭い観察眼にびくびくする貴族たちを想像した。信実は周囲にちやほやされる彼らを決して美化せず、むしろ小さな〝弱点〟をわざと誇張して描いたのかもしれない。たくましい美男子エリート集団への痛烈な風刺。現代の非エリート中年男としては、思わずにやりとしてしまった。

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オークラコレクション 12月9日まで開催。
■会場:九州国立博物館(〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4丁7-2)
■休館日:毎週月曜日
■開館時間:
  日曜日・火曜〜木曜日9時30分〜17時00分(入館は16時30分まで)
  金曜日・土曜日【夜間開館】9時30分〜20時00分(入館は19時30分まで)
■観覧料: 一 般 1,500円、高大生 1,000円、小中生 600円
■問い合わせ:NTTハローダイヤル=050(5542)8600

※情報は2018.11.13時点のものです

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