幻の若冲版木が縁側に 伊藤若冲の「乗興舟」 連載「オークラコレクション裏話」㊥

 12月9日まで、福岡県太宰府市の九州国立博物館で開催中の展覧会「オークラコレクション」。明治・大正期の実業家大倉喜八郎と長男でホテルオークラ創業者の喜七郎が集めた美術品約110点には、隠された逸話がある。九州国立博物館の主任研究員、山下善也さんに、展示作品の裏話を聞いた。

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乗興舟(じょうきょうしゅう)

 大胆な作風で人気の高い江戸時代の日本画家、伊藤若冲。その若冲が京都伏見から大阪天満橋まで、淀川下りの風景を延々と描いた版画がこれだ。長さ11.6㍍もの大作で、桜の版木5枚の表裏に図案が彫られた。ただし現存するのは京都国立博物館の1枚だけだ。

乗興舟(部分)

乗興舟(部分)

 「その版木は16年前に若冲の親類の家で見つかりました。一時期は縁側の床に使われていたらしいです」。九州国立博物館の主任研究員、山下善也さんから驚きのトリビアが。えっ、肉筆なら数千万円とも言われる若冲なのに? 国内外で10点ほどしか残っていない作品の版木なのに?

 しかもこの版画、中国から伝わった「石摺(いしずり)」という当時の最新技法が使われている。彫り上げた版木にぬれた和紙を張り、へこんだ部分に紙を押し込んで表から墨を塗る。鮮やかな黒を背景に、くっきり白く浮かぶ木々や家屋。まるで写真のネガフィルムのような味わいだ。

 そんな大事な版木をなぜ縁側に? 「不正に複製されないよう、版木を処分した作家は多いんです」。山下さんが京都弁で若冲のものまねを披露してくれた。「家を建てはるんですね。桜のいい版木を使いはったらどないです。どうせ捨てようと思うてましたし」

 縦30㌢、横1㍍。残り4枚の版木は、今も旧家の縁側で眠っているかも。

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オークラコレクション 12月9日まで開催。
■会場:九州国立博物館(〒818-0118 福岡県太宰府市石坂4丁7-2)
■休館日:毎週月曜日
■開館時間:
  日曜日・火曜〜木曜日9時30分〜17時00分(入館は16時30分まで)
  金曜日・土曜日【夜間開館】9時30分〜20時00分(入館は19時30分まで)
■観覧料: 一 般 1,500円、高大生 1,000円、小中生 600円
■問い合わせ:NTTハローダイヤル=050(5542)8600

※情報は2018.11.14時点のものです

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