天神で月光浴! 写真家石川賢治さんの個展を見てきた

 福岡市出身の“月光写真家”石川賢治さんの個展「宙(そら)の月光浴 space of sprit(スペース オブ スピリット)」が福岡市・天神のイムズホールで9月25日(水)まで開催されています。石川さんが在廊されるという初日に、会場を訪れました。

イムズホールで展覧会が開催されるのは初だとか

 太陽光のわずか46万5,000分の1の明るさしかない、満月の光だけで自然を撮り続けている石川さん。7年かけて撮りためた作品をつづった写真集「宙の月光浴」(小学館、税込み3,024円)の作品を九州初公開。過去の代表作と合わせ、約70点が展示されています。

 暗い室内へ入ると展示されている写真パネル一点一点にスポットライトが当てられ、まるで満月の光で照らされているように見えます。石川さんは「満月の夜は地上で宇宙を感じることができる。なので、宇宙をイメージして作品はブルーの色彩を基調にしています」と話します。

本物の縄文杉が存在しているよう

 入ってすぐに目についたのが鹿児島県・屋久島の縄文杉の写真です。なんと実物の6m×6.5mサイズで展示されています。これは量産型のカメラとしては最大の8×10in判大判カメラ(通称エイト・バイ・テン)で撮影されていて、引き延ばしても鮮明に樹皮が映し出されています。写真の前にはベンチが設置され、何時間でも見ていられそうです。

パネルをつなぎ合わせて作成したようには見えません

 川のせせらぎや木々のざわめきが聞こえる、まるで大自然の中にいるかのようなBGMに身をゆだねていると、なんだか神聖な気持ちになってきます。音声も石川さんのこだわりで制作されたのか尋ねると、「これはサウンドクリエーターの中田悟さんが作ってくれた音なんです」という答えが返ってきました。

月光で照らされたような作品

 石川さんが撮影をしているその横で、中田さんがさまざまな音を拾い、より研ぎ澄まされた“満月の夜の音”を再現したといいます。石川さんは「自分が満月の夜、実際に聞いていた音よりもするどく聞こえます。澄んだ音ですね」と分析していました。

 石川さんは中田さんに「夜でも昼でも、音は変わらないだろう」と聞いたことがあるそうなのですが、「夜の方が音はより響くし、昼間は雑音が入ってしまう。作品に合う音を作りたい」と言われ、今回の作品展では「中田さんの音も感じてほしい」と流すことに決めたといいます。

約70点が並びます

 石川さんが満月の光で作品を撮影するようになって35年がたつといいますが、きっかけは何だったのでしょうか。石川さんは「もともと自分はプロのカメラマンをしていて、広告の撮影などをしていました。休暇でハワイ4島を訪れた時、カウアイ島でふと夜の散歩をしてみようと思って、外に出たんです。その日がちょうど満月で、浜辺を青白く輝かせていました。すごく明るかったんです」。

 「その時は綺麗だなあ、意外と月の光でも明るいもんだな、とそのくらいにしか思っていなくて。しばしそこで見とれていたら、1羽の鳥が、水面すれすれのところをスーッと通っていきました。その姿を見た瞬間インスピレーションというか、『撮れる!』と思ったんですよ」。

遺跡の写真は神々しさを感じますね

 1990年頃は、月の光で撮影なんて暗すぎて到底無理と写真業界では言われていたそうなのですが、思わずカメラを持ち出して撮影してみたところ、撮影に成功。「まぐれ当たりみたいな撮影でなんとか成功したときはうれしかったです」と石川さん。以来すっかり月光写真のとりこになってしまったそうです。

 現在販売されている性能のいい一眼カメラでは、明るさなどもデジタルで加工ができます。撮影後にすぐモニターで確認もできるので、失敗すれば撮り直しも可能。しかし石川さんが当時から撮影で使用していたのはフィルムカメラです。

 「現像するまで撮影できているか分からないのも楽しいものですよ」と笑っていましたが、「世界中を回るロケ費はもちろん実費。アフリカのサバンナなどで撮影したい時は車などもチャーターするので何百万円という費用がかかることもありました。それで撮れていなかったら悔しいので、一枚一枚が真剣勝負です」。

 撮影対象を前にして、石川さんが撮影時に考えていることなどを尋ねると「畏怖(いふ)を感じます。いただきます、というような気持ちですね。元々カメラマンをしていたこともあって、技術でうまく見せようと思えば、そういうふうに撮影することもできるんです。だけど、大自然を前に人間の浅知恵では太刀打ちできない。もうあるがままを撮らせていただく、という気持ちでいつも臨んでいます」。

石川賢治さん

 自然は思うままにならないからこそ、撮影のしがいもあると言う石川さん。ここ数年は福岡県の糸島半島に移り住み、月の光で“小さなもの”を撮影しているそうです。

 「花や虫や、そういう小さなものは、余計に宇宙を感じる気がしているんです。大きなものを撮るよりも難しさを感じています。最近ようやく『これだ』というものが撮れるようになってきました」。

 石川さんの新たな“宇宙”を見る機会も楽しみですね。まずは天神のど真ん中で月光浴しに行ってみませんか。

 

宙の月光浴 space of sprit
日時:~9月25日(水) 10:00~20:00(最終日は19:00まで)
場所:イムズホール(福岡市中央区天神1-7-11 イムズ9階)
料金:一般800円、高大生600円、中学生以下無料
問い合わせ:イムズ
電話:092-733-2001

※情報は2019.9.17時点のものです

イムズ

住所福岡市中央区天神1-7-11
URLhttp://www.ims.co.jp/

やはた

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