佐賀『いいモノさがし』 名尾農園「ゆうじろうの凍熟柿」(前編)

やわらかく、ジューシーで、モチモチとした弾力が持ち味の佐賀市大和町松梅地区の柿。生産期間が短い、半生半熟の干し柿を厳選し、一年を通じて味わえるよう冷凍熟成した逸品が名尾農園の「ゆうじろうの凍熟柿」。佐賀市が認定する『いいモノさがし』に選ばれています。

名尾農園「ゆうじろうの凍熟柿もち入り」

名尾農園「ゆうじろうの凍熟柿もち入り」

「ゆうじろうの凍熟柿 プレーンタイプ」。ご覧のとおり、〝とろあま〟が魅力です。

「ゆうじろうの凍熟柿 プレーンタイプ」。ご覧のとおり、〝とろあま〟が魅力です。

和紙と柿の二足のわらじ

――「いいモノさがし」のパンフレットを拝見しまして、「え、名尾農園さんってあの和紙で有名な名尾手すき和紙さんと同じところ? 干し柿も作られているの?」と驚きました。

(名尾農園の谷口文代さん・以下同)和紙と柿と両方の仕事をしていますと、ときどき頭がこんがらがって、「はい、名尾手すき和紙です」と電話で応えるはずが、「はい、名尾手すき柿です」と思わず、言ってしまうんですよ(笑)。

インタビューにお答えいただきました名尾手すき和紙(株)と名尾農園を切り盛りする聡明でかわいらしい奥さま、谷口文代さん。

インタビューにお答えいただきました名尾手すき和紙(株)と名尾農園を切り盛りする聡明でかわいらしい奥さま、谷口文代さん。

――柿はいつから?

じつは、干し柿はうちだけではなく、この辺りで約300年前から作られていたんです。

――江戸時代ですね。

はい、名尾に紙漉(す)きの技術が伝わったのは、元禄12(1699)年までさかのぼると言われます。この辺りでは、その頃、どこの家でも和紙作りが始まっていまして、柿は、紙漉きの〝副業〟だったんです。

――柿と和紙とでは、シーズンが違うんですか。

柿は11月と12月、紙漉きは1月から10月。昔は、紙漉きは夏場はあまりしていなかったようですけれども、もともと自家用で作っていた干し柿を、商業ベースに乗せたということになりますでしょうか。

――名尾はきっとおいしい柿がとれるのでしょうね。

名尾地区は盆地ですので、寒暖の差が大きいのが特徴です。その気候を利用して、柿をとって干し柿にする。〝生活の知恵〟ですよね。この辺りは昔から柿の木が多かったはずです。地域の学校では、いまも、柿むき大会が伝統行事で行なわれています。

 

サラリーマンの妻、のなったつもりが……

――奥様は結婚されて、ここに来られたんですか?

そうなんです。結婚した頃、主人はサラリーマンでしたので、私もサラリーマンの妻、のつもりだったんですよ。もう25年前の話ですけれど。同居の紙漉きを家業にしていた(義理の)父、母も「紙漉きの作業は大変な仕事だから、しなくていい」と申しておりましたし、和紙のことは頭をよぎりもしませんでした。

ところが、家業としての紙漉きをやめる、という段になったとき、すでに和紙をやっているところはうちだけになっていましたので、主人は「自分がやらないと、名尾和紙がなくなるんだなあ」と思ったみたいで、「俺、やってみようかな」とつぶやいた。それが、私たちが和紙づくりに取り組んだきっかけです。

――そんなふうに言われて、驚かれたたでしょう?

それは驚きますよ~(笑)。主人は25、6歳。私はもっと若くて、ちょうど長男が生まれた直後でしたので、「そんなこと、聞いてないよ~」という気持ちでした。見たこともなければ、やったこともない和紙作りに、主人がいきなり飛び込むというんですから。

▲300年以上の歴史を持つ名尾和紙。昔は沢山あった紙漉(す)きを稼業とする家も、いまはこの谷口さん一家が営む「名尾手すき和紙」一軒だけになっています。

――奥様はどちらのご出身ですか?

隣町の(佐賀市)富士町です。

――同じ佐賀市内でも、和紙作りにはなじみがないものですか。

和紙もそうですし、富士町から見ると、名尾は奥深い田舎だとばかり思っていました。実際は、そんなに変わらないんですけれども(笑)、

(先代である)主人の両親と、その上の世代、息子からいえばひいおじちゃん、ひいおばあちゃんも健在でしたので、四世代同居。夫婦で「とにかく、やれるところまで頑張ろう」と心に決めて、和紙の修業生活を始めたんですが、私は慣れるまでに時間が掛かりました。

本当に想像もしていなかった流れで、いまでこそ、「おかげさまで、父母の手助けでなんとか、ここまでやってこれた」とわかりますが、当時は何もわからず、ただ必死でした……。

――近頃は、「伝統の手仕事を大事いしましょう、和の文化を残しましょう」という考えが主流ですが、25年前はもっと経済もよかったですし、外へ外へという感じでした。

ええ、私たちも「伝統を残す」なんてことまでは考えませんでしたし、日々一生懸命というか、「自転車と一緒で漕(こ)いでないとだめ」、「とにかく前進あるのみ。後ろは絶対、振り向かないぞ」という気持ちでした。

 

色の付いた和紙を作るという決断

――ことしの夏、NHK佐賀で放映されました名尾手すき和紙のドキュメンタリーを拝見しましたが、長い伝統をもつ名尾和紙に、色をつけたときが最大の決断のときだったというエピソードが印象的でした。

はい、主人が決断したんですが、心が痛む思いだったらしいです。

▲今年の7月、佐賀市プロモーション大使の宇都宮直高さんと吉武大地さん(ともに歌手・舞台俳優)が、名尾手すき和紙を訪問。うちわ作りを体験しました。紙を漉く谷口さんの息子さんの手元をのぞきこむ吉武さんたち。

▲名尾手すき和紙の展示ギャラリーでは、さまざまな種類の和紙のほか、和紙を使った小物やインテリアグッズ、名尾農園の干し柿などが購入できます。

――ずっと色をつけてきていない和紙に色をつけるというのは、それだけ大変なことなんですね。

いまも昔もそうですが、和紙は見よう見まねの世界です。色をつけようと思ったとしても、うちでは誰も経験がないし、うまくいくかどうかもわからない。ですから、主人と二人、全国の和紙やさんで受け入れて下さるところには、足を運ばせていただいて、勉強させてもらいました。

恥ずかしながら、そこでどういう和紙を作られているかも佐賀にいてはわかりませんでしたので、うちに勤めている主人の姉も一緒に、高知県、岐阜県、福井県はじめ、いろいろ訪ねて行って、和紙に色をつけることを習うところから始めました。

知識もなかったので、そこからが試行錯誤の始まりです。

▲うちわ作り体験では、自分で紙を漉いて、型抜きを上に置いて、上から染料を流し込む。染料はきものの友禅染に使う高価なものを使う。

▲型を置いた後、紙を乾燥させる工程へ。

▲紙が乾いたら、うちわの形に切って、持ち手をつけて出来上がり!うちわづくり体験は15名より受付(平日のみ・要予約)。1人1500円。
電話 0952-63-0334

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