BSEの風評被害で大ピンチ!「肉の直売」がチャンスへのきっかけ

「ピンチはチャンス」とよくいわれます。博多黒毛和牛の肥育農家、堀田美保さん(59歳)はまさに、BSE(牛綿状脳症=狂牛病)というピンチから肉の直販というチャンスをつかみました。今津湾を望む福岡市西区今宿の高台で、博多黒毛和牛の肥育場と加工場兼販売所、焼き肉店、さらに自家製米や野菜まで「堀ちゃん牧場」というブランド名に統一し、家族で営んでいます。

どんな困難も「チャンスに」と笑顔の堀田さん

どんな困難も「チャンスに」と笑顔の堀田さん

BSEきっかけに「自分たちで売るしかない」と決意

2001年に日本でも発生したBSEは堀田さんの農場にも大きな打撃を与えました。風評被害で牛肉が売れなくなり、売れても安価で買いたたかれたといいます。ところが、買った業者は通常の値段で販売していたことを知りました。

「もう、それがカチンときて。だったら自分たちで売るしかない」と、翌2002年5月に加工場兼販売所「堀ちゃん牧場」の店舗を自宅横に建設し、自家製牛肉の販売を始めました。「堀ちゃん牧場」の名前は、夫の和秀さん(63歳)のあだ名からとりました。この直売が好評で堀田さん一家はピンチを乗り越えたのです。今は毎週、1頭分の牛肉を金・土曜日に店頭販売しているほか、新開玉子さんの直売店「ぶどう畑」などにも卸しています。

 

リーマンショック、口蹄疫を乗り越えて義父の夢「焼き肉店」をオープン

店内は木目調で暖かい雰囲気。

店内は木目調で暖かな雰囲気。

2008年のリーマンショックに端を発した不況、追い打ちをかけるように起きた2010年の口蹄疫でも、牛肉の販売が落ち込みました。この時も「こちらから何かアクションを起こそう」と、義父の夢だったという博多和牛の焼肉店「堀ちゃん牧場」を2013年10月、農場内にオープンしました。

もともと福岡市城南区で農業をしていましたが、周辺の都市化の波に押されて現在地に移住してきました。しかし、当時は臭いや衛生面への不安から、移住先では反対の声もあったそうです。堀田さんは川を汚さないよう、臭いがしないように気を遣い、地域の役職などもすすんで引き受けました。そんな苦労も、焼き肉店オープン時に地域の人から「今宿に良かもんばつくってくんしゃった」との言葉をかけられ、吹き飛んだといいます。今では応援者も増え、地域の老人会や青年の集まりなどに店を使ってもらっているそうです。

 

3本の矢」家族ぐるみで牧場支える

現在、今宿で120頭、筑前町で80頭の計200頭の肉牛を育てているほか、二丈町では米も作っています。「うちは完全循環型農業なんです」と堀田さんは胸を張ります。水田から出たワラを牛の餌にし、牛のふんを水田の肥料にしているからです。そんなこだわりが「堀ちゃん牧場」に客を呼び寄せているのです。

3人の息子たちも肥育、焼き肉店、ネットでの通信販売など業務を分担して牧場で働いています。「(毛利元就の)3本の矢みたいでしょ」。家族そろっての経営も自慢のひとつです。堀田さんは主に事務、接客を担当していますが〝宝物〟があります。それは、長年つけている「農作業日誌」だそう。日々の売り上げ、客層、天候、直販のイベントに持っていったものなどあらゆる情報を記載しています。息子たちも「去年のあのイベントはどうやったかね」と尋ねにくるほど頼りにしているそうです。

 

「おいしいものは、人生変えることも」と実感

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堀田さんのやりがいは、牛肉を食べたお客さんから「ありがとう」と喜びの声を聞くことだといいます。中には「離婚した妻に牛肉を贈ったことがきっかけで復縁できた」という報告をもらったり、「東京に就職後、やつれて帰省した娘を元気づけたい」と父親が買いに訪れたりすることもあったと言います。「おいしいものは人を元気づけ、人生を変えることもあるんですね」。堀田さんはしみじみと語ります。

「母親は子どものそばにいてほしい」という夫の思いを大事に、子育てが落ち着くまで家庭を守ることで家業を支えてきた堀田さん。仕事に本格的に参加してからも「家のことと仕事とをやらないといけませんでした。両方をバランスよくコントロールすることが大事ですね。あと、自分が楽しむこと。楽しまないと続きませんよ」と強調しました。

いま「堀ちゃん牧場」は子牛を育てる肥育農家ですが、母牛に子牛を産ませる繁殖農家にもチャレンジしています。少子高齢化による需要減、輸入肉との競合、担い手不足など畜産業の先行きは決して明るくはありません。でも、BSEやリーマンショックも乗り越えてきた堀田さんは「前に進むしかありませんから」と快活に語ります。笑顔が堀田さんの武器なんですね。

※情報は2017.12.27時点のものです

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