農家の主婦が「企画開発」特産のあまおうを使ったジャム

福岡県特産のイチゴ「あまおう」の粒を残し、キビ砂糖で優しい甘さに仕上げた「かね子のそのまんま苺ジャム」。フレッシュな甘酸っぱさが特長の一品は、福岡市西区元岡のイチゴ農家、浜地かね子さん(67歳)が手作りしています。

福岡市南区の農産物直売所「ぶどう畑」で販売を始めて約20年。農作業の合間に手作りしているため少量生産ですが、口コミでファンが広がり、関東地方などからも注文が入る人気商品へと成長しました。浜地さんは「自分のブランドがあるという喜びが暮らしの原動力になっている」と話します。

一株ずつていねいに手入れすることが大切

一株ずつていねいに手入れすることが大切

1株ずつ丁寧に。最盛期目前、イチゴの冬支度

浜地さんの自宅とイチゴ畑は、九州大学伊都キャンパスのすぐそば。九州大学のキャンパス移転に伴い最近は学生用の住宅や大型量販店などが立ち並んでいますが、周囲は変わらず、豊かな田畑が広がっています。

イチゴ畑はビニールハウス7棟分を1つにつなげた広い空間。約1万株のイチゴが整然と並んでいます。自動散水機に大型の暖房装置、光合成発生器など設備も充実。浜地さんは自宅近くの2か所で、計14棟分のハウスを息子と2人で管理しています。1、2月の収穫最盛期を前に、11月は冬支度が本格化。ビニールに小さな穴をあけ、葉を傷つけないように1株ずつくぐらせて土にかぶせていきます。根気よくかぶせていく作業は約半月かかります。

直売所が普及。農家の女性のアイデアが商品になる

あまおうを使った「かね子の苺ジャム」は県外からの注文も

あまおうを使った「かね子のそのまんま苺ジャム」は県外からの注文も

そもそもジャム作りは、漬物やウメ干しづくりなどと同様に、イチゴ農家の女性の家仕事。農産品直売所が普及する以前は、自宅で作った加工品を売るという発想がなく、親族やご近所に配るだけでした。それが20年ほど前、直売所「ぶどう畑」の開設準備をしていた新開玉子さんからジャムを売らないかと提案され、商品化へと進んでいったのです。

 

長く続けるポイントは「楽しんで作れる量」

果実の触感や甘さ、練り具合に至るまで、何度も試作を重ねました。当時ジャムと言えば、パンにべったりと塗る甘めのものが主流。しかし、浜地さんは流行し始めたヨーグルトに合わせて食べることを想定し、甘さを抑えて果実感を残した今のスタイルで売り出しました。瓶はイチゴをイメージさせる真紅の和紙とリボンで飾り付け。糸島産の国産レモンとキビ砂糖を使い安全安心にこだわったジャムには、自信を持って自分の名前「かね子」を冠しました。年間の生産量は大瓶と小瓶を合わせて約600本程度。口コミでファンの輪が広がり、関東地方などから注文が来ることもあります。ファンの期待に全力で応える一方、自分が楽しんで作れる量にとどめることも、長く続ける大切なポイントだといいます。

 

新規就農者も子育て中の農家女性も、経験がメリットになる

「直売所が身近になったことで、農家の女性の家仕事が現金収入になる時代が来ました。ウメ干しも柚コショウも漬物も、女性たちの張り合いになっていると思いますよ」と浜地さんは言います。農作業だけでなく家事や子育ても任される農家の主婦。忙しいから、日々の暮らしに知恵が出て、それが主婦目線の商品開発のアイデアにつながるのだとか。

アイデアや新しい挑戦が求められるこれからの農業を見越して、浜地さんは「違う分野からの就農者や子育て中の農家の女性たちはハンデを背負っているのではなく、むしろ経験がメリットになり、活躍してくれるのではないでしょうか」と期待を込めます。

農作業にジャム作り、孫の世話と多忙な浜地さんですが、長年続けている趣味が生け花です。とはいっても、普通の生け花とはちょっと違い、旬の農作物や農具を作品に取り入れた「農の生け花」と呼ばれるジャンル。農業の魅力を「食」以外でも幅広く発信したいと始め、農業イベントの会場に展示したり農協のロビーの飾り付けを担ったりしています。

稲穂やススキを並べて秋の農村の風景を凝縮させた作品や、色とりどりの農作物を鮮やかな着物の柄に見立てた人形など、毎回大胆に趣向を凝らし、見る人を引き付けています。「農業にもインスピレーション(ひらめき)が必要。農家の女性たちもどんどん外に出て新しい刺激に触れ、インスピレーションを養うことが大切ですね」

※情報は2017.12.26時点のものです

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