佐賀藩のお姫様に会いに行こう 「貢姫(みつひめ)」(前編)

ことしもNHK大河ドラマ「西郷どん」が始まりましたが、1年掛けて放映されるこのNHKの歴史大河ドラマは、2000年代に入り、女性を主人公にしたものが増えています。

『利家とまつ』(前田利家の妻女・まつ)
『篤姫(あつひめ)』(徳川家定の正室・島津斉彬<なりあきら>の養女、天璋院篤姫<てんしょういんあつひめ>)
『江(ごう)~姫たちの戦国~』(浅井長政の三女・二代将軍徳川秀忠の正室)
『八重の桜』(新島襄の妻・八重)
『花燃ゆ』(吉田松陰の妹・文)
『おんな城主 直虎』(井伊直政の義母・井伊直虎)

『花燃ゆ』の最終回のクライマックス、鹿鳴館で主人公の井上真央さんがダンスをするシーンで着ていたドレスは、佐賀市の徴古館(ちょうこかん)が所蔵する鍋島栄子(ながこ)夫人がお召しいなった、当時のドレスを参考に作られたものです。

徴古館のFB記事

『花燃ゆ』のポスターより。右が吉田松陰の妹・文を演じた井上真央さん。

『花燃ゆ』のポスターより。右が吉田松陰の妹・文を演じた井上真央さん。

こちらが参考にされた鍋島家の栄子夫人のドレス。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

こちらが参考にされた鍋島家の栄子夫人のドレス。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

鍋島栄子様は、鎌倉時代からつづく京都の名家・廣橋(ひろはし)家(明治になっては伯爵)から、佐賀鍋島家の11代当主・鍋島直大(なおひろ)公に嫁がれたお姫様です。在イタリア日本公使(いまの外交官)になられた直大公とイタリアで結婚し、外交官の奥様の草分けとして外交に活躍されました。

英語とダンスがお得意で、あまりに踊りがお上手なのでヨーロッパ人たちが驚いたと。帰国されてからは、日本最初の西洋風の公式社交場・鹿鳴館(ろくめいかん)の華と呼ばれたお方です。

腰高のバッスル・ドレス姿の栄子様。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

腰高のバッスル・ドレス姿の栄子様。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

江戸時代、佐賀藩は〝お国替え〟がなく、鍋島家が代々、佐賀藩主をつとめてきました。有名なのが、幕末の名君とうたわれた10代鍋島直正公(1815~1871)ですが、直正公にもっとも可愛がられたのが、長女の貢姫(みつひめ)様(1839~1918、享年80)でした。

12歳で結婚された直正公ですが、お子様になかなか恵まれず、26歳のとき、側室との間にお生まれになった貢姫が、待望の第一子でした。

貢姫は7つで直正公の正室・盛姫に養育されるために、佐賀を離れ、江戸に行きます。17歳で川越藩松平家の藩主・直侯公に嫁ぎますが、同い年の夫は結婚直後から心の病になり、回復しないまま6年後に死別。23歳で未亡人になりました。

江戸から明治へと時代が大きく変わったときは29歳。江戸の情勢不安を怖れた父に呼ばれて、3年ほど江戸から佐賀に戻りますが、33歳のとき、最愛の父・直正公が亡くなると、葬儀のため江戸に戻り、そのまま松平家には戻らず、鍋島家の庇護(ひご)のもと、大正まで生きて80歳の生涯を閉じました。

直正公の長女・貢姫の肖像。写真ではなく、細密なタッチの絵で描かれている。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

直正公の長女・貢姫の肖像。写真ではなく、細密なタッチの絵で描かれている。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

昨年11月からことしの1月まで、佐賀の徴古館で、「貢姫展」が開かれましたが、「こんなお姫様がいたとは知らなかった」という声がほとんど。ファンファン福岡の読者の皆さんにも、ぜひ佐賀藩のお姫様のことを知っていただきたく、これから何回かに分けて、原稿を書きます。

展覧会の目玉の一つは父と娘がかわした手紙。

父・直正公は、幕末~明治維新期をリードした先見の明のあるお殿様として、名高い方で、従来、その政治的な功績が注目を集めてきました。残された書簡(手紙)もオフィシャルなもので、謹厳実直な面が出ています。

しかし、貢姫と姫のお付きの老女に送った手紙が200通残されており、そこには直正公のプライベートな人柄が写しだされています。

父・直正公が娘の貢姫にあてたプライベートな手紙。踊るような文字で、大きくなったり小さくなったり、デザイン的な趣。内容は姫が届けた父の好物をつめたお重(じゅう)の御礼で、「一度には食べてしまわず、あとで夜食にするためにとっておく」といった個人的な感情がつづられていて珍しい。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

父・直正公が娘の貢姫にあてたプライベートな手紙。踊るような文字で、大きくなったり小さくなったり、デザイン的な趣。内容は姫が届けた父の好物をつめたお重(じゅう)の御礼で、「一度には食べてしまわず、あとで夜食にするためにとっておく」といった個人的な感情がつづられていて珍しい。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

また、貢姫は少女時代から手細工が得意で、なんでも上手に作るので、おそばの者たちが驚いたといいます。煙草入れ、紙ばさみ(いまのファイル)、スケッチ画、水墨画、和とじの装丁本、組みひもの結び方見本帳のほか、江戸(東京)と佐賀を行き来する旅の途中に採取した植物や草花などの標本も残されていて、貢姫のお人柄を今日まで伝えています。

貢姫が作ったタカと桜をモチーフにした紙ばさみ。この下絵のスケッチも残っている。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫が作ったタカと桜をモチーフにした紙ばさみ。この下絵のスケッチも残っている。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫が江戸~佐賀間を旅する途中、箱根などで採取した花の標本。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫が江戸~佐賀間を旅する途中、箱根などで採取した花の標本。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫は横笛やお琴の譜の本に好きな和紙を貼って、マイ装丁していた。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫は横笛やお琴の譜の本に好きな和紙を貼って、マイ装丁していた。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

組みひもの結び方見本帳。もとは絵で描いてある資料をもとに、貢姫が実際にひもで作った組みひもカタログ。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

組みひもの結び方見本帳。もとは絵で描いてある資料をもとに、貢姫が実際にひもで作った組みひもカタログ。公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫展は終りましたが、佐賀市では毎年恒例の「佐賀城下ひなまつり」が2月11日から始まります。徴古館ではさきほどのドレスの鍋島栄子様と、栄子様のお孫様と結婚された明治天皇のお孫様で、朝香宮家のお姫様・紀久子様がお嫁入りの際に持ってこられた見事なおひなさまを展示します。

鍋島家のひなまつり@徴古館

鍋島家のひなまつり@徴古館

佐賀城下ひなまつり2018

佐賀市・徴古館 

(佐賀市シティプロモーション室・樋渡優子)

※情報は2018.1.31時点のものです

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