佐賀藩のお姫さまに会いに行こう4 「貢姫(みつひめ)」後編

貢姫制作の紙ばさみ。デザインを考えた下絵も残っている。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫制作の紙ばさみ。デザインを考えた下絵も残っている。
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貢姫が作られたタカと桜をモチーフにした紙ばさみの細部。すごい臨場感。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫が作られたタカと桜をモチーフにした紙ばさみの細部。すごい臨場感。
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貢姫が作品の材料にした〝はぎれ〟。切り抜いて使った跡がわかる。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫が作品の材料にした〝はぎれ〟。切り抜いて使った跡がわかる。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

貢姫の弟、11代直大公は佐賀で育ち、貢姫は7歳からずっと江戸で育って、お嫁にいかれたので、姉と弟は会ったことがなかった。弟・直大公が15歳になった1860年(明治にかわる8年前)、生まれて初めて、江戸へ行き、お姉様のいる川越松平家を訪問します。

このとき、貢姫は24歳。

同い年の夫は結婚直後から病気で、父の直正公は、「私も覚えがあるが、若いときというのは理想に走り、まわりのものたちとぶつかったり、うまくいかなかったりもする。しかし、年をとり、経験をつめば、おのずとおさまるのだから、おまえも話す機会があれば、そう言っておあげなさい」と、父親らしい気遣いと助言を手紙で送っていました。

父・直正公から24歳の貢姫にあてた手紙。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵
生まれて初めて佐賀を出て、江戸の貢姫を訪問した15歳の弟・直大が、帰りたくなくて、お付きの老女・幾山を突き飛ばした家族間の話が出てくる。

父・直正公から24歳の貢姫にあてた手紙。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵
生まれて初めて佐賀を出て、江戸の貢姫を訪問した15歳の弟・直大が、帰りたくなくて、お付きの老女・幾山を突き飛ばした家族間の話が出てくる。

そんな折、弟が佐賀からたずねてきた。直大公は、お姉様と初めてお会いして、とても楽しかったらしく、帰る刻限になっても、帰るのを嫌がり、貢姫お付きの老女・幾山(いくやま)がおそらく、「もうお帰りにならなければなりませんよ」と何度も申し上げたのでしょう。おしまいには、直大公が幾山を転ばした(突き飛ばした)と。

この話を貢姫は父・直正公に手紙に書き送り、父は、

「直大が幾山を転ばしたとは、さぞやその場は笑いに包まれたことでしょう。しかし、そんなときは、遠慮なく、𠮟って下さっていいのですよ」という返事を書いています。

画面やや左に「雪」の字が見えるが、直正公の弾む心をあらわすように踊っているような感じ。前掲の書状に比べて、字が大きくなったり、小さくなったり、デザイン的な効果をみせている。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

画面やや左に「雪」の字が見えるが、直正公の弾む心をあらわすように踊っているような感じ。前掲の書状に比べて、字が大きくなったり、小さくなったり、デザイン的な効果をみせている。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

雪の降り出しそうなある日、貢姫が父の好きなものをつめたお重を佐賀の藩屋敷に届けさせた。それを喜んだ父が返礼の品に添えた手紙。「おいしかったから、一度に食べてしまわないで、夜食にとっておく」、「雪が降っているけれども、これから馬に乗って来る」「奥方は温石を当てて体を治療などしている」と個人的な事柄が綴られている、きわめて貴重なもの。

父・直正公もなくなり、何十年もたった鍋島家の家族写真が、冒頭の1枚です。

直大公の息子で、12代当主になる直映(なおみつ)公が1900(明治33)年、イギリスのケンブリッジ大学から帰国して、結婚した折、貢姫は甥に対し、

「移し植えし 園の小松もこの殿も 三つ葉 四つ葉に栄え行くらむ」
(大きく育つようにと移し変えたこの園の小松のように、この若殿も伴侶を得て、三つ葉、四つ葉と家族を増やし、栄えていくことでしょう)

とお祝いの歌を詠みました。直大公のお印は「松印」。その子供を「小松」と重ねたのです。

鍋島の紋入りのお重。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵
貢姫が雪の日、父に届けたお重には、嫁ぎ先である松平川越藩のご紋が入っていたのでしょうか?

鍋島の紋入りのお重。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵
貢姫が雪の日、父に届けたお重には、嫁ぎ先である松平川越藩のご紋が入っていたのでしょうか?

もうすぐ、佐賀に春を告げる「佐賀城下ひなまつり」が始まりますが、毎年、多くの人が足を運ばれるのが「鍋島家の雛祭り」(徴古館)。

他に類をみない大雛段かざりは、貢姫の弟・直大公の奥方で鹿鳴館でダンスを踊った栄子様と、直大・栄子夫妻のお孫さんにあたる13代当主・直泰公と結婚された紀久子様(明治天皇のお孫さん・朝香宮鳩彦王の娘 1911~1989)がお輿入れのときにお持ちになられた、見事なお雛様です。

栄子様の大ひな段飾り。端から端まで写真に入りきらないほど幅がある。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

栄子様の大ひな段飾り。端から端まで写真に入りきらないほど幅がある。
公益財団法人 鍋島報效会所蔵

ことしはおひなさまが終っても、4月16日(月)から、「肥前さが幕末維新博覧会」の展示として、徴古館では貢姫に関するものも含めて、展示される予定です。(徴古館では2階フロア限定で、3月17日から幕末維新博覧会の展示が部分的にオープンする予定です)

「鍋島家の雛祭り」お知らせ

徴古館HP(今月の逸品コーナーに、三人官女が取り上げられています)

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※情報は2018.2.2時点のものです

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