関ジャニ∞の錦戸亮主演/吉田大八監督作品『羊の木』劇場鑑賞リポート☆

 

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

© 2018『羊の木』製作委員会 ©山上たつひこ、いがらしみきお/講談社

【波紋(はもん)】

1.水に石を投げたときなどに水面に生じる、輪の形にひろがる波の模様。
2.ある物事がきっかけとなって、関連し合いながら次々と他に及んでいく影響。

――「大辞林第三版」より

北陸・日本海沿岸の地方都市・魚深市が移住を受け入れた6名の男女。その6名の共通項、それは「元殺人犯」ということ。刑務所の混雑緩和と自治体の人口減少抑制を目的として実施されたこの極秘プロジェクトがもたらした小さな波紋が、やがて町を揺るがす大事件へと発展していく。

本作品は、2007年『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で長編映画監督デビュー、2012年『桐島、部活やめるってよ』で第36回日本アカデミー賞最優秀作品賞及び最優秀監督賞を受賞、2014年には『紙の月』でも第38回日本アカデミー賞優秀監督賞受賞と、手がける作品、そして映画監督としての手腕に対する評価を不動のものにしてきた吉田大八監督の最新作です。

人を見た目や経歴で判断しないーー

口で言うのは簡単ですが、果たしてそれが実行できているかと問われると、返答に詰まってしまう人は少なくないのではないでしょうか。

錦戸亮演じる真面目で誠実な公務員・月末が直面する、元殺人犯と接することへの戸惑い、自らの先入観や偏見と葛藤する姿は、まさに「わたし」と重ねられ、強い共感を覚えます。

また、元殺人犯を演じる北村一輝、優香、市川実日子、水澤紳吾、田中泯、そして松田龍平といった名優たちの迫真の演技は、間違いなくこの作品の核といえるもので、人を殺めた者に漂う【悲哀】と【影】が六者六様に表現されています。

元殺人犯の一人・大野を演じた田中泯さんは、吉田監督の出身地である鹿児島での公開記念舞台挨拶にてこのように語っています。

――今自分は、偶然自分として生まれて生きているけれど、ちょっとした運命の違いで、自分がこの「大野であったかもしれない」という風に思いました。――

タイトルの「羊の木」は、中央アジアから渡ってきた綿を初めて見たヨーロッパの人たちが「綿は木に生えた羊から採れる」という話を信じていた、という西洋の故事に由来。すなわち「羊の木」とは「物事を愚直に信じること」を示唆しています。

目に見えるもの、自明のものに重きが置かれ、目に見えないものや物事の背景にあるものを見出す感性や想像力が軽視されがちなこの時代にあって、「運命と向き合う」ということ、「人を信じる」ということをあらためて考えさせられる本格サスペンス作品『羊の木』。ぜひ劇場で観て感じていただきたい一本です。

ライター:西山健太郎

※情報は2018.2.21時点のものです

西山健太郎

1978年福岡市生まれ。2017年2月、樋口一幸氏(Bar Higuchi店主、ウイスキートーク福岡・実行委員長)とともに、福岡の飲食文化・芸術文化に関する情報発信を行う非営利団体「福博ツナグ文藝社」を設立。西日本新聞社のアート情報サイト・ARTNE(アルトネ)でのアートイベントレポート・若手アーティストインタビューやリビング福岡ウェブサイトでの“福岡の美しい日常風景”をテーマにした写真コラム「福岡風景/Fukuoka View」の連載など、独自の切り口で情報発信を続けている。

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