「おいしかった」で食べ支え〜天神で「農と食をつなぐシンポジウム」

「農と食をつなぐシンポジウム」が2月12日、福岡市中央区天神の天神スカイホールで開かれました。市民と農業者との交流を通じて福岡の農業の魅力、食の大切さを知ってもらおうと「農業の魅力発信事業運営協議会」が主催したイベントです。530名の応募の中から選ばれた市民と農業者等125名が参加し、講演やシンポジウム、福岡市内産の農産物の試食会などで、農業への理解と交流を深めました。

「消費者の声にやりがい」柴田さん、「顔が見えるとおいしく」久保田さん

冒頭の講演には福岡市青年農業者連絡会会長の柴田陽平さん、女性農業者の久保田夕夏さん、福岡市女性未来農業サポーター代表の新開玉子さんの3名が登壇、現在の活動状況や将来の抱負などについて報告しました。

「消費者のニーズに沿った野菜をつくり続けていきたい」と話す柴田さん

「消費者のニーズに沿った野菜をつくり続けていきたい」と話す柴田さん

福岡市西区の柴田さんは西洋野菜など少量多品種を栽培し、農産物直売店で販売しています。非効率で利益の少ない方法ですが「消費者の表情や声をダイレクトに見聞きしながら直接販売できることにやりがいを感じています」と柴田さん。「将来は大学から弾いているチェロを生かして、交流の場を作りたいです」と夢を語りました。

 

「生産者の顔が見えると、ご飯がもっと美味しく感じますよ」と久保田さん

「生産者の顔が見えると、ご飯を美味しく感じるんです」と久保田さん

久保田さんは福岡市南区の農産物直売店「ぶどう畑」でレタスなどの水耕栽培に取り組んでいます。大学時代「自分で育てた新ジャガのおいしさに感動して」農業を志しました。「農産物の安全、安心が叫ばれる社会となっているのは、消費者が農家を信用していないからだと思います。でも農家も皆さんと同じ普通の感覚を持った人たち。生産者の顔が見えるとご飯がおいしくなります」と交流の大切さを訴えました。


「これからの農業には女性の力が必要」新開さん

「農業は一人よりも家族や大勢ですると楽しいんです」と話す新開さん

「農業は一人よりも家族や大勢ですると楽しいんです」と話す新開さん

農産物直売店「ぶどう畑」の代表でもある新開さんは、福岡市の女性農業者の草分け的存在です。12年かけて準備を整え、20年前に直売店をオープンさせました。現在最も力を入れていることは農業の後継者育成と食育の2つです。特に「これからの日本の農業は男性だけでは成り立ちません。女性の力が必要です。『ぶどう畑』でも女性の農業インターンシップを受け入れています」と、インターンシップ生を演壇に上げて紹介されました。

また、食育も幼稚園で梅干しづくり、小学校で田んぼ作りなどに取り組んでいます。「年間を通して農業をすることで苦労が分かり、命の大切さを感じていきます。こうした活動を今後も続けていきたいと考えています」と語りました。

若手育成、子どもたちの食育…将来の農業に向かって希望を抱く名の農業者

続くパネルディスカッションでは青年農業者連絡会の毛利哲也さんと川嶋正信さん、女性未来農業サポーターの髙木智代さんと真子慶子さんの4名が登壇。 「農家と消費者」「食育と地産地消」「将来の農業」について自らの経験や思いを語り合いました。

「地元の小田部小学校の子どもたちと一緒に大根を作ってます」

「地元の小田部小学校の子どもたちと一緒に大根を作ってます」と毛利さん

毛利さんは「直売所を中心に野菜を販売していますが、農家と消費者の距離は近いですし、地産地消にもつながっています。お互いの顔が見える関係は、生産者の生産意欲が高まるから重要です」と語り、将来は「数年前のヨーロッパ視察の経験を生かして、カット野菜など消費者のニーズに合わせた技術を高めたい」と将来像を描きました。

「AIなど進化した技術も取り入れていきたいですね」と展望を語る川嶋さん

「AIなど進化した技術も取り入れていきたいですね」と展望を語る川嶋さん

ネギの水耕栽培に取り組んでいる川嶋さんは「近くにある小学校3年生が総合学習で農場を見学します。子どもたちの疑問は奇想天外で面白い。子どもが農業に興味を持つことで地域のつながりにも貢献できていると思います。将来はAI(人口知能)など新しい技術を取り入れて農業の発展につながるようなことも考えていきたい」と語りました。

「農業も高齢化社会、残った農地の活用についても考えていきたい」と意気込む髙木さん

「農業も高齢化社会、残った農地の活用についても考えていきたい」と意気込む髙木さん

髙木さんは消費者との距離について「私は農家であり消費者でもあります。『自分だったらこの野菜を買うか?』という目線を大事にしています」と述べました。また「健康のために食育を広めたいです。特に男性は病気になって初めて食に気をつけますから。健康なときから食育を意識してほしいですね」と訴えました。

「収穫を体験すると、みんな笑顔になるんです」と語る真子さん

「収穫を体験すると、みんな笑顔になるんです」と語る真子さん

真子さんは「消費者との交流の中で美味しい食べ方を伝えたり、逆に消費者から情報をもらったりと、顔の見える関係を大切にしています。うちの農場に直接買いにくる方には、収穫体験をしてもらうこともありますよ。これからは後継者を育てて、地域の農業が続いていくように努めたいですね」と語りました。

福岡尽くしの農産物を満喫「おなかいっばいです」

博多和牛とサラダ

博多和牛とサラダ

締めくくりは、福岡市内産農産物の試食と農業者との交流会でした。テーブルには西洋野菜カーボロネロなどを使ったラタトゥイユ、博多和牛のサラダ、博多春菊のサラダが並びました。中央のフラワーアレンジは福岡市東区と西区で大事に育てられた花々です。

マーマーレードの乗ったビスケット、あまおう

マーマーレードの乗ったビスケット、あまおう

後から早良区脇山産のお米でつくったおにぎり、博多大根の漬物、デザートにイチゴの博多あまおう、能古島産マーマレードが乗ったビスケット、脇山産の紅茶も出されました。

穏やかな雰囲気の中、生産者と消費者が交流を深めました

穏やかな雰囲気の中、生産者と消費者が交流を深めました

 参加した市民は農業者と談笑しながら、福岡づくしの農産物を満喫したようです。夫婦で参加した男性は「おなかいっぱいになりました。地元産は安心・安全ですね」と笑顔、親子連れの母親は「食育の大切さがよく分かりました」と話していました。

参加した農業者に共通した思いは、消費者と生産者との交流の大切さでした。それは適度に都会で適度に田舎、都市と自然との距離が近い福岡市だから可能になること。髙木さんの言葉が印象に残りました。「私たちが消費者から掛けられてうれしい言葉って単純です。『あなたの野菜おいしいね』。どうか私たちのことを〝食べ支えて〟ください」。都市化、後継者不足、耕作放棄地の増加……。問題は少なくありませんが、この言葉に解決のヒントがあるのではないでしょうか。

今後も福岡市内産の野菜をお願いいたします。
福岡市直売店

※情報は2018.2.27時点のものです

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