【灰塚鮎子】街で心救われた「よかよか~」の一言 小さな思いやり 人つなぐ

コラム連載も最後となった。執筆中はよく夕暮れどきに公園を歩いた。時間の移ろいとともに太陽は光の色を変え、やがて闇の一部を街灯が照らし、おごそかに夜が始まる。川は流れ、その先の海へと続いていく。ふりむくと中洲のネオンと点滅する信号の光が川面に細長く伸び、多彩な色の帯となってゆらいでいた。

 

昼と夜、川と海、自然と都会、人間は言葉で線引きするが、自然はゆるやかなグラデーションを描く。分け隔てなくなだらかにつながり続ける自然の在り方を私はとても美しいと思う。そして私たちもまた自然の一部であり、社会も全体でひとつの有機体なのだ。

東京に暮したとき、子どもと外出すると街ですれちがう大人たちに舌打ちされ、邪魔者扱いされることも多かった。子連れであることが、他人の足手まといになるようで申し訳なく感じていた。だが福岡の駅の切符売り場でもたついたとき、後ろに立っていた男性に謝ると「よかよか~」と声をかけられ、心癒された。たった一言で、心が救われることもあると気づいたとき、自分は無力だと感じていたことは間違いだと分かった。小さな思いやりが人を助けることもあるのだ。

 

生態系がさまざまな生物で構成され、どれも欠かせない存在であるように、社会もまた人と人のつながりでできている。分け隔てせず優しさを伝えることで、健常者と身障者、大人と子どもなど多様性を持つもの同士がともに生きられる。有機的につながる自然に大切なことを学んだ。

from西日本新聞「わたし活性化計画」面

※情報は2014.8.30時点のものです

灰塚 鮎子

経営者。新潮社、雑誌編集を経て、株式会社Elephant設立。企業向けカウンセリングサービス、「HARDIAL」を展開し、組織コンサルティングを提供している。ウェブサイトFan Fun FUKUOKAにて詩を連載中。

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