【方言ぽっこり】絶滅危惧!?な方言「ばさろ」

「おりゃあ、ちっごべんしか話せんきね。」

父に取材。

「筑後弁」という方言の名称すらも、方言になる面白さ。にやりとします。

 

福岡県で一番最初に誕生した道の駅が、朝倉市の原鶴にあります。

原鶴といえば、温泉ばい

原鶴といえば、温泉ばい

 

その名も、『ファームステーション バサロ』。


初めてこの名前を聞いたとき、地元民の私は、「なるほど、上手い!」なんて思っちゃいました。

 

ばさろ、とは、筑後弁で「たくさん」を意味します。

「ばさろ穫れたばい。」

と言われた場合、引っかける対象が青果であれば、

「ものすごい大収穫!両手で抱えきれないくらい収穫できた!やっほう!」

 

といったニュアンスで想像していただければよいかと。

きっと、この道の駅には新鮮な野菜や果物が「ばさろ」ありますよ~、という意味でつけられたのでしょう。

キャベツがばさろなっとる!!

キャベツがばさろなっとる!!

 

実際行くと、果物・野菜はもちろん、新鮮な魚介・お肉まで、ばさろ揃えてありました。

 

さて、ところ変わって、熊本・佐賀には、「ばさらか」という方言があります。

主に、「大雑把な・いい加減な」という場面で遣われるようです。

 

そうなんです。響きは似ているのに、「ばさろ」とは、意味がまったく違うのです。

熊本方言「ばさらか」。

ひも解くと、日本の中世で遣われていた、

「バサラ(婆娑羅)」

という仏教に関連した言葉に出会います。

バサラとは、

「身分を気にせずに贅沢に振る舞うこと」となっていて、

まさに「ばさらか」につながるのです。

 

 

では一方、「ばさろ」は、というと。

どれだけ調べても、由来が出てこないんです…。

これだけ近い範囲で話されていて、単語の響きも近いのに、共通点がないはずがないのに…!

そんなはずはない!と思いたいのですが、調査が行き詰りました。

 

なぜ、この由来が不明の方言「ばさろ」を紹介したのかというと、

この言葉が、まさに今、失われ行く方言のひとつだからです。

言ってしまえば、絶滅危惧方言。

レッドデータブックに方言の項目があったら、ぜひとも載せたい。そんな言葉の一つ。

実際、祖父と父は遣っていたのですが、友人たちとの会話ではあまり聞きません。

 

私の「ばさろ」のイメージは、実家が農家であるためか、季節ごとに実ったたくさんの果物だったり、野菜だったりします。

いちごがばさろある!

いちごがばさろある!

 

でも、聞いたらそれがイメージできるのに、その方言を無意識に遣えない。

つまり、私の中では「ばさろ」は話し言葉ではない。それが少し寂しい。

もちろん、絶滅危惧方言は、「ばさろ」だけではないでしょう。

もっと遣う人が少ない方言も、全国まで広げて調べなくとも、そのへんの町や、家に帰れば、いくつも見つかるはずです。

 

方言を調べていると、気づくことがあります。

地域の特定や、意味の変化、由来の考証と、さまざまな人が調べ、記録してきた方言達に出会っても、増えるのは知識だけ。

私はやっぱり筑後の言葉しか話せないし、ちょっと真似して博多弁を遣っても、いくつもボロが出て、筑後と博多のブレンド?新しい方言がここに!みたいになってしまいます。

むしろ、こうしたさまざまな地域のブレンドが、方言の化学変化のきっかけの一つなのかもしれませんね。

いまやどこにでも行ける時代。人が動けば、言葉も動く。

どれだけ寂しく思っても、方言の変化は止められません。

そうしてこれからも、廃れる方言にいくつも出会ってしまうんだろうなぁと、しみじみと考えてしまいました。

 

「ばさろ」の由来は、引き続き調査続行です。

さて、実家に電話でもしようかなぁ。

実家やね~

実家やね~

※情報は2014.9.1時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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