満足度は三つ星級!? 遠出してでも味わいたいイタリアン「ディマーレ」

隠れ家的なたたずまいの「ディマーレ」

隠れ家的なたたずまいの「ディマーレ」

 2019年現在、世界で最も権威のある飲食店の格付け媒体の一つ「ミシュランガイド」。その掲載店の中でもトップクラスの味と認められる店舗にのみ冠される「星」の3段階について、公には下記のように定義されています。

一つ星:そのカテゴリーで特においしい料理
二つ星:遠回りしてでも訪れたい料理
三ツ星:そのために旅行する価値のある卓越した料理

 星に選ばれる店舗のほとんどは、平均予算が1万円を超えているのに比べ、3,500円を下回る優れたお店には「ビブグルマン」という称号が付与されています。

 近年は、「東京ミシュランガイド2017」で、安価なラーメン店が型破りにも一つ星を取るといった現象も起きているようですが、この経緯を鑑みるに、いわゆる「星」の称号に行き着く道筋とは、広義の「顧客満足度」が築き上げているのかもしれません。

 さて、福岡県を含む九州3県のミシュランガイド2019特別版の今夏発刊が発表され話題になっている中、今回、ご紹介したいお店は、そのミシュランが、前回(2004年)、不運にも見落としてしまったとしか思えない、わざわざ遠出してでも味わいたい福岡市西区のコスパ最高&絶品イタリアン「ディマーレ」。

 福岡前原道路付近の今宿交差点から車で7、8分ほど進んだ小高い丘陵地(住宅街)にあるそのお店は、お世辞にもアクセスが良いとはいえないロケーションにありながら、営業はランチがメインという特異なスタイル。それでも広々とした店内が女性客を中心に大いににぎわう恐るべき人気度を誇っています。

 その要因を一言で表現するなら「圧倒的な満足度の高さ」。筆者の感じたところ、退店するまでに積み上げられた満足要素は枚挙にいとまがありません。分かりやすい数字や外部評価軸にはのりにくい、すばらしい魅力の数々が、このお店には秘められています。

 その1つ1つをひも解いていくと、まず挙げられるのが、店舗環境のすばらしさ。シックなえんじ色に塗られた洋風建築の壁面を這うアーティスティックなツル植物、見渡す限りの四季の草花・木々の生い茂る幻想的な庭園など、まるで小説「秘密の花園」の世界観を思わせる光景が広がっています。

シックな洋風の建物

シックな洋風の建物

草花や木々が茂る庭園

草花や木々が茂る庭園

  たとえ遠方からでも、足を運んで良かったなと、まるで広大な砂漠のただ中にオアシスを見つけたような安堵感を覚えます。それら膨大な植物すべてをオーナーのお父さまがお世話されているとのことで、その献身ぶりには、来店客に向けた目に見えない“おもてなしの心”を感じてしまいます(庭園はスタッフの方に声がけの上、自由に観覧することができます)。

季節を感じられる可憐な花々も

季節を感じられる可憐な花々も

 外観のすばらしさに夢中になったのも束の間。店内に入ると、今度は西洋アンティークな雰囲気に心を奪われます。長い時間の経過とともに渋く鈍い輝きを備えたウッディーな内装、童話のような世界観を演出するレトロな照明や調度品とインテリア。あたかも、そこだけ時間が止まってしまったようなセピア調の空間と不思議な温もりに、ふと郷愁の念にも似た懐かしい感覚が沸き起こります。

西洋アンティークの雰囲気漂う店内

西洋アンティークの雰囲気漂う店内

童話のような世界観が広がる

童話のような世界観が広がる

レトロな照明や調度品

レトロな照明や調度品

 同店は、現在、ご家族で経営されていて、そのムードあふれる空間とは裏腹に非常にアットホームな雰囲気。訪問当日も、オーナーである丸山ますみさん直々の出迎えからテーブルへの案内、その後のサービスまでしていただきましたが、こちらは恐縮するどころか、その温かい歓迎ぶりに心からリラックス。いつの間にか、家族の一員になったような居心地の良さを感じている自分に驚きます。(詳細は後述)

リラックスできる居心地よい空間

リラックスできる居心地よい空間

ワイン選びも楽しみ

ワイン選びも楽しみ

 調理は娘さんが担当され、ランチメニューの構成は手頃なパスタコース(税別1,500円)、オリジナルコース(2,500円)、フルコース(3,500円)の3種類(ディナーは8人以上の要予約制でコース3,000円~)。その組み立ては、糸島産の新鮮な野菜類や宮崎から直送される魚介類を軸に、それら食材本来の鮮烈な風味や食感が生かされた、いわゆる“引き算”の料理です。

 中でもオススメは、前菜2種盛 / 自家製パン(お替わり自由) / パスタ / スープ / 魚料理 / デザート / ドリンクを楽しめる定番の「オリジナルコース」。成人女性が十分に満足できるボリュームです。フルコースはこれに肉のメイン料理が追加されます。

 特にすばらしいのが前菜とメインの魚料理。みずみずしく彩り豊かな糸島野菜を宝石のように飾り付けた前菜、そのキラキラとした美しさは女性シェフの感性ならでは。しかも、さまざな風味が混在していながら、全体の味わいは少しも濁らず、むしろお互いを高めあっているようにさえ感じられます。これは同じ糸島の土壌で育った食材のテロワール(その土地ならではの味わい)が繋ぎ手となって相乗効果をもたらしているのかもしれません。

前菜(天然真鯛と糸島野菜、フルーツと生ハムのサラダ二種盛り合わせ)

前菜(天然真鯛と糸島野菜、フルーツと生ハムのサラダ二種盛り合わせ)

自家製無添加のパン

自家製無添加のパン

「トマトソースとモッツァレラチーズのスパゲティ 庭どれルッコラ添え」

「トマトソースとモッツァレラチーズのスパゲティ 庭どれルッコラ添え」

 この日の魚のメイン料理は「本ガツオのソテー 野菜のクーリソース バルサミコ風」。全体に程よく火入れされ、アクセントに皮目をこがした、ほのかに燻香が付けられた本ガツオの香ばしい風味を、バルサミコ風・野菜クーリソースの柔らかな酸味が適度に引き締めてくれます。この香りの絶妙なバランスは特筆モノ。シェフの調理センスの良さに、確かな高揚感が心を支配していきます。

「本ガツオのソテー 野菜のクーリソース バルサミコ風」

「本ガツオのソテー 野菜のクーリソース バルサミコ風」

「庭どれバターナッツのポタージュスープ」

「庭どれバターナッツのポタージュスープ」

「自家製マロンのタルトとパンナコッタとキャラメルアイスクリーム」

「自家製マロンのタルトとパンナコッタとキャラメルアイスクリーム」

 料理だけでも相当に高い満足度を与えてくれるディマーレですが、その真のすごさは、実は「サービス」にあります。前述した”居心地の良さ”とは、スタッフの方の柔和な笑顔と接客、会話、さりげなくかつ押し付けがましくないサーブ&バッシング、すべてが”自然体”であること。それは、お客さまを「スタッフ各人が自分の大切なゲストとして迎えている」かのようなナチュラルさです。

 お昼を過ぎて、窓際の席のお客さまに差す日光が強くなれば、オーナー自らそのテーブルに出向いて、場の雰囲気に寄り添うように、会話の合間にそっと遮光の提案をされるといった配慮の一つ一つがすばらしい。


日差しにも配慮

寄り添うように日差しにも配慮

 仮にその時は不要でお断りしたにしても、お店からのそういう丁寧な心配りは、料理とは違った意味で顧客の”満足度”を掛け算式に高めていくものです。そして、そのピークはおそらく退店後、それも余韻の時間に来るものだと筆者は考えます。「あのお店は良かった…」という思い出の領域に刻まれる満足や感動が多いほど、その後の「また行きたい」「誰かを連れていきたい」というリピートへの強いモチベーションにつながります。数値化・明文化されない飲食店の本当の魅力が、こういったカタチの無い「心」の部分に潜んでいることを同店は教えてくれています。

笑顔で見送ってくださったオーナーの丸山ますみさん

笑顔で見送ってくださったオーナーの丸山ますみさん

  「ディマーレ」は、まさに環境・料理・人(サービス)の3拍子がそろったまれなレストランとして、ジャンルの枠を超えて推したいお店です。この高い満足度をわずか2,500円(2019年3月現在)から提供されている同店の企業努力にも本当に頭が下がります。都市部に置き換えれば、もはや計り知れないコストパフォーマンスの高さ。筆者は、星や外部評価の有無に関わらず、同店を”飲食店の範”の一つとして今後も繁栄を願うと同時に応援し続けたいと思っています。

ディマーレ
住所:福岡市西区今宿上ノ原254-40
電話:092-807-0048
営業:ランチ 11:30~16:00(L.O.14:30)
   ディナー17:30~22:00(L.O.20:00)※8人以上から受付(1週間前までに要予約)
水・日曜休

※情報は2019.3.19時点のものです

ディマーレ

住所福岡市西区今宿上ノ原254-40
TEL092-807-0048

フードアナリスト フジワラ コウ

福岡市内のミシュラン星付き店に広報として勤務する傍ら、料理に寄り添うワインの奥深い魅力に目覚め、ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」を取得。その後も食への飽くなき探究心は尽きること無く、ついには”食の司法試験”と言われる難関資格「フードアナリスト」の上級資格を取得。以降、専門家として培ってきた知識と経験を以って、優れた「食」を様々な文化の融合した”総合芸術”として捉え直し、消費者の心の琴線に触れるような料理や飲食店の発掘、またその価値観や認知向上を目的に日々情報発信を行っている。その礎となる外食歴はジャンルを問わず県内外で正味1000軒を超え、現在も増え続けている。座右の銘は「神は細部に宿る」。

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