昭和のほろにが映画「秋刀魚の味」小津安二郎作品(1962年)/ 銀幕ヨーコ

こんにちは! すっかり朝夕が冷え込む季節となりました。 

 

今回は前回お約束した秋にちなんだ映画ということで、このコラムでご紹介する最初の小津作品、「秋刀魚の味」(1962年)です。 

日本が敗戦から立ち上がり、アメリカの影響を受けつつ経済成長していく時代背景とともに、年頃の娘を持つ父親の複雑な心境を、周りの友人や恩師のエピソードを交えて描いた作品です。

平山は細君と死別して以来、娘の路子と次男和夫とともに穏やかな生活を送っています。ある日平山は中学時代のクラス会で恩師と再会し、その恩師の娘が中華そばやのきりもりと父親の世話に追われ、婚期を逃している現状を知ります。それをきっかけに娘の路子を嫁がせるべきではないかと、心が揺れ動くのです。

この作品が作られた時代と今の結婚観は違っても、作品中のさりげない日常の会話は不思議と古臭さを感じません。

例えば、平山の旧友たちが飲みながら、若い女性と再婚した仲間のひとりをやっかみ半分にブラックユーモアでからかう場面のやりとり、共稼ぎしている妻に頭の上がらない平山の長男と妻との会話等々。

毒があっても優しい。そして人間の孤独を、娘を嫁がせる父親の姿や友人、恩師の生き様を通して描いている名画です。

小津監督が絶大なる信頼をおいていた昭和の名女優 杉村春子、若き日の岩下志麻、岡田茉莉、岸田今日子たちの生き生きとしたせりふも魅力です。 

ところで、映画の中で秋刀魚は出てきませんが、娘を嫁がせる父親のほろ苦い心情を表わした題名ではないでしょうか?これも日本独特の表現で好きです。

ハラワタはほろにがですよね

ハラワタはほろにがですよね

 時代を超え、国境を越えて世界中で今なお高く評価されているのは、小津監督のどの作品にも人間の本質が描かれているからだ、とこの映画でも感じました。小津監督の遺作でもあります。

 

では、季節の変わり目、お身体に気をつけてくださいね。

See you next!

※情報は2014.11.5時点のものです

銀幕ヨーコ

趣味は映画、美術、音楽鑑賞、旅行、読書、さらには空手。

映画は邦画、洋画、ジャンルを問わずなんでんかんでん観ていた時代を経て(オカルト系は苦手)、やっぱりヨーロッパ映画が一番好き。でも韓国映画もいい、中国、台湾、いやインド、イラン映画も捨てがたいな。そうやって私の好きな作品を選別していくと、実は世界の名監督たちが日本の小津安二郎監督作品に強く影響されているという共通点があったんです。これから小津作品に影響力受けた各国の名画を中心においおいご紹介したいと思います。

よろしく!

関連タグ

この記事もおすすめ