【方言ぽっこり】流れてきた方言?「じきたくり」

「その夢をぐすと掴んで離さんじょくな~♪」

 

よく、歌詞を方言に変えて歌ってみた、なんて動画を見ますが、

青春前向きソングも、筑後弁では民謡のようになるなぁ、とにやついた帰宅中。

[ぐすと【形】:強く、の意味]

 

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お正月、帰省してまいりました。

 

福岡空港に降り立った瞬間に、言語中枢のスイッチが瞬時に切り替わり、

迎えに来てくれた兄への電話も、

 

「今、空港着いたばーい。どこにおるとー?」

 

と、この始末。数時間前まで東京にいて、きっちり標準語を話していたというのに。

人間の脳みそって面白い。

 

さて、わが実家は農家を営んでおり、

家の敷地内には農業機械などを入れている大きな倉庫があります。

空間だけは無駄に広く、風も入ってこないので冬でも暖かい。

なのでここ数年、

年末は家族そろってその倉庫内でバーベキューをするのがならわしになっており、

今回は牡蠣とサザエで贅沢な海鮮祭りをやりました。

お腹も落ち着いた頃、大人はしっぽり炭を囲んでお酒をたしなんでいたのですが、

幼い姪と甥は飽きてしまって、倉庫内で遊び出します。

すると、遊んでいたボールが軽トラの下に入ってしまいました。

甥は気にせず、腹這いになってボールを取ろうとしたのですが、それを見た母が一言、

 

「じきたくっちゃ汚かばい!」

 

じきたく・・・?

出ました!きました!私でも分からない方言!絶滅危惧言語!レッドデータワード!

 

「お母さん、その『じきたくり』について、ちょっと詳しく!」

 

私、甥をそっちのけです。

(彼はすでにボールを手中におさめ、服は見事に汚れてしまっていました)

 

「じきたくり」は、「直接・じかに」という意味の筑後弁なんだそうです。

調べてみると、大分の日田地方、熊本の方でも遣われているみたいですね。

これまでいくつか紹介してきたものもそうですし、

筑後弁はやはり、博多弁よりも熊本弁と関わりが深いのかな、と再認識。

そして、ひとつの仮説が思いつきました。

古くは四大文明など、川の近くに人間社会が生まれてきたと言いますが、

もしかしたら、

阿蘇から流れ出て日田を通り、我がうきは市も流れゆく筑後川が、

流れに乗って人と言葉もつないできたのかな?と。

 

 

多少スケールが大きい話ですが、県の境目と言語の境目、それは決して重ならないんです。そう考えると、なくもない話なのかも。

 

そして、方言に偏った知識欲をすっかり満たした私は、

帰京してしばらく、わざと方言を遣い続けてみました。

けれどやはり、周りの人が話さないと、方言で話し続けることができませんでした。

方言は、同じ方言同士の会話がないと生きていけない言葉なのだなぁと、身を持って実感し、とても感慨深く感じました。

※情報は2015.1.19時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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