ワインを知ろう、深めよう(その3 Vintner)

前回からご紹介している、ワインを知るための4つの「V」

・Variety(葡萄品種)

・Vinyard Location(葡萄畑のロケーション)

・Vintage(収穫年)

・Vintner(作り手)

 

今回は最終回「Vintner」について。

 

Vintnerはワインの作り手のことで、私がワインをお客様へお薦めする際

一番大切にお伝えしようと心がけている、ワインの個性の最も核となる部分です。

 

濃い味付けのものが好きで、ど~んと大皿で作るお母さん

繊細な味付けが好きで、いろんなものを少しずつ食卓に並べるお母さん

素材は同じでも家庭の料理はいろいろですよね。

ワインにもまったく同じことが言え、たとえ畑が隣同士であっても、つくり手が違えばできあがるワインは違います。

 

これは4月に訪問した山梨で購入した甲州

同じ甲州ですが色、香り、味わいが全く異なります。

これ実はワインとして出来上がったときの見た目もですが、畑に植わっている時点で葡萄がどんな風に栽培されているのか、すでにそこから全く違っています。

こんな風に同じ葡萄であっても、スタート地点ですでに大きな違いがあるのがワインの面白さなのですが、

しかし、誰がどんなワインを作り出すのかは、毎年いろいろなワインをいただいて初めて覚えることができることであって一般のお客様には至難の業だと思います。

 

「なにを選んで良いのかわかんないんだよね」

とおっしゃるお客様に私は時々

「人を選ぶようにワインを選んでみましょうよ」といっています。

 

大雑把に言うと、アメリカのワインはアメリカっぽい

フランスのワインはフランスっぽいからです。

以前も書いた通り、現在、ワイン醸造技術の最先端をいくカリフォルニアでは

「どんな味わいのワインにするか」をまず決めて、そこを目指してどのクローン葡萄を使い、どんな酵母を使うのか逆算して決める作り手も多いと書きました。

アメリカのワインにもいろいろありますが、世界の嗜好の最先端をいくモダンなつくりが多いといえます。

 

フランスはどちらかといいうと、伝統を重んじる作り手が多く、重くても軽くてもミネラルが豊かで深遠な味わいのものが多い。

 

イタリアは自由。

戦争でいったん壊れてしまったワイン文化や畑は、アメリカ主導のワイン嗜好の動向に影響を受け「濃い、強い!」という方向へ向かいましたが

「そうではないはず」と今、古きよき伝統的なものをよみがえらせる動きみたいなものが起きています。

 

ドイツは昔からある残糖でワインをクラス決めする難解なワイン法にとらわれず、自社畑の単一畑から、完熟させた葡萄を使用し非常に高品質なものを作り出し始めている作り手が増えてきました。

 

ワインは人が作り出すものなので多かれ少なかれ国別の個性や国民性が出ます。

まずはご自分の興味ある国、見た映画や旅行に行った国のものを選んで

そこから広げていくのも楽しいのではないでしょうか?

 

そしてもう一点vintnerに関わる点として欠かせないのが「自然派」ワイン

 

・・・「自然派ワインって美味しいの?」

このところワイン教室を行うと必ず受ける質問のひとつです。

ワイナリーへ見学へ行った際にも他のお客様から必ず「自然酵母は使いますか?」との質問が出ます。

 

ここでごくごく簡単にこの自然派ワインなるものを説明いたします

 

自然派といっても段階があってみな同じではありません

自然派ワインは

・機械や人工的な肥料、農薬を使用せず有機農法で葡萄を栽培し

・二酸化硫黄などの酸化防止剤を無添加

・天然酵母を使用し、補糖や補酸しない。

・無ろ過、無清澄、無着色、そのほか特殊な醸造技術を使用しないこと

などの決まりがあります。

 

栽培段階での自然なことはもとより、ワインを作るうえでも自然であることが求められるわけです。

一言で有機農法といっても段階はさまざま

 

①リュットレゾネ

人工の肥料や農薬を極力抑えた農業、減農薬法とも言って現在これが最も多いのではないかと思われます

②ビオロジック

人工合成された肥料や農薬を一切使用しません。ただし硫黄や硫酸銅など自然界に存在する薬剤は使用できます

③ビオデナミ

思想家ルドルフシュタイナーが提唱した農法。人工の肥料や薬剤をしようせず、土壌や生物、環境の力を最大限に引き出すために、プレパラシオンとよばれる天然に存在する物質由来の独自の調剤をしよう、天体の運行に則した栽培を行います

日本は特に天然であることに敏感な市場なので、この「自然派」ワインは少し前から一世風靡するほどの人気を博しています。

 

確かに

私も以前、力のあるビオデナミのワインをいただいた時、聖体拝受をうけたような衝撃がはしりました。

自然派って何なんだ!?すごい!と大きな感銘を受けたものの…でも、正直そんな本物は残念ながらごくごくわずかであると思います。

 

自然派…という言葉が現在独り歩きしていますが

もともとビオデナミが提唱する「月の運行」によって葡萄を栽培するという考え方は葡萄でなくても昔の農家が普通に取り入れてきた考え方です。

私の実家ではたしか、祖父の代、よく育つからと、蕎麦を満月の数日前に植えて、新月から何日かで収穫していました。

良識ある農家が美味しいものを作ろうとして、代々受け継がれたそのやり方は、自然の生態系を壊さない本来「自然」なものであるはずです。

そして、健全な葡萄を作ると自然に収穫時のPH(酸度)は低くなり、SO2は必要最低限の添加ですみます。

しかし、それはあくまでも葡萄が健全であれば…が大前提。

湿度が高く病害虫の害のおそれのある地域で無理にSO2を無添加にしてしまうと、できあがったワインが飲み手の口に入る頃には劣化し、健全ではない状態になってしまうおそれもあります。

無添加だから良いということではなく、添加する必要があるのに添加しなければかえって危険だということです。

 

もともと、海外から日本へワインを輸入し、それを全国くまなく流通させようと思うときに、自然なものが無添加であるということは大変なことなんですね。

常に温度や管理に最新の注意を払う必要があります。

まず「安全かどうか」「飲むときに美味しい状態かどうか」ということは非常に大切なことです。

 

SO2だけではありません。

酵母に関してもそうです。

先日山梨へいったときあるワイナリーのオーナーが

「自然派ワインはおいしいですか?天然天然っていうけど、培養酵母ももともとは天然の酵母の中から適したものを培養してつくった天然のものです。その辺を浮遊する天然の酵母でワインをつくると発酵が不安定になることもある。そんなあやふやなものに品質や出来上がりをゆだねることは非常に危険。なので僕は培養酵母を使用します」とおっしゃっていました。

栽培に関する考え方

醸造に関する考え方は作り手それぞれで違う

 

今インターネットなどで「SO2は危険な添加物です。ワインはSO2の入ってないものを飲みましょう」と書いてあるものをよく目にしますが

SO2はローマ時代からワインに添加されてきたもので、過剰に摂取しなければ危険ではありません。

 

ワインはその美味しさで人を感動させ、癒す飲み物です。

目の前のワインの希少価値や、自然派だからという肩書きは本来必要ありません。

感動に値するくらい美味しくてさらにそれが自然派なら「なるほど」と感動が生まれるだけです。

 

「自然派だから美味しい」「自然派だからすばらしい」ではなく

 

ただ単に美味しいから、すばらしいのです。

 

美味しいかどうかを決めるのは

そのワインの謳い文句ではありません。

 

あなた自身の舌です。

 

私があげた4つのV

これを参考に、今までとはちょっと違うワインも時には手にとってみてください。

どんな人がどんな風につくっているのかな?と少し思いをはせてみてください。

きっと新しい美味しい出会いがまっているはずです。

 

※情報は2015.6.21時点のものです

伊藤 治美さん

福岡市のレストランでソムリエとして勤務。2014年度公式ベネンシアドール(スペイン、ヘレス地方の特産品であるシェリー酒の専門職)認定試験に合格。福岡県内で2人目のベネンシアドーラ。シニアソムリエ、チーズプロフェッショナルの資格も持つ。プライベートでは2児の母。

伊藤さんのインタビュー記事⇒https://fanfunfukuoka.com/people/19834/

関連タグ

この記事もおすすめ