九州のワイナリーへ行こう!熊本ワイナリー編

熊本ワイナリーは植木インターを降りて車で25分ほど。熊本市北部の丘の上にあります。

さる天気のよい土曜日のお昼。南フランスを彷彿とさせる広い工場内を見学させていただきました。

まずは暗く涼しい貯蔵庫へ。

樽はフランス産…トロンセ、ヌベール、アリエールの美しいワイン熟成樽が静かに並んでいます。

フランス産の樽はアメリカ産と比べると目が詰まり、きめが細かいので、果実味や繊細な香りをゆっくりと大切に熟成していくことができます。

午前中の作業を終えた工場では隅から隅まで水でざぶざぶ洗われてピカピカ。

衛生面に気を遣っていらっしゃることもうかがえました。

また、日本でワインつくりをする際にネックになるのが「機材」

海外から取り寄せるとどうしても高額になってしまい、それがワインの価格に反映されてしまいます。

熊本ワイナリーでは、なんと!温度管理するためのシステムを手作り!

そんなところに肥後もっこすな一面を垣間見たりしました。

その横には品質管理、成分分析のラボ。

その横には品質管理、成分分析のラボ。

独自でこういった研究施設を持っていらっしゃることは珍しいそうです。

独自でこういった研究施設を持っていらっしゃることは珍しいそうです。

どんなワインをつくっているの?

熊本ワイナリーでは大変多くのワインがつくられていますが、今回ご紹介するのは二つの大黒柱的なシリーズ。

 

ひとつは親しみやすい味わいの肥後六花ブランド

肥後菊、肥後椿、肥後山茶花、肥後花菖蒲、肥後朝顔、肥後芍薬の六花は元々細川重賢の時代に武士のたしなみとして広まったもので、現在も門外不出。それぞれ保存団体が保護しているのだそう。

それら六花がラベルに描かれた6種類のワインは日本人におなじみのデラウエアや、日本で交配開発されたマスカットベリーA、また優しい甘みのナイアガラやキャンベルアーリーなど昔から日本で親しまれているフレッシュでフルーティなタイプのワインたちで、それぞれのラベルに描かれた花のイメージにもぴったりです。

 

肥後六花シリーズではないですが「マスカットベリーA」の樽熟成は私の個人的なお気に入りでワイン講座によく登場します。

マスカットベリーAの特徴である華やかなアロマとまろやかな渋み。少し土の香りと、余韻にはイチゴジャムのような甘い香りも広がります。

腰の強い酸もあり、トマトソースの他、脂身をこおばしく焼いたときの脂のうまみにとてもよく合います。

もう一方がフラッグシップである菊鹿ブランド

菊鹿カベルネソーヴィニヨンや、菊鹿ナイトハーベスト、菊鹿シャルドネがあります。

これらは、ワイン愛好家やプロも注目する本格的な辛口のテーブルワイン。

写真の菊鹿シャルドネは金色を帯びた淡い黄色。パッションフルーツやマンゴーなど南国の完熟フルーツを思わせる香りがあり、温暖な地方のシャルドネを連想させますが、こちらにもきりっと酸があってスタイルがしっかりしています。

 

「ナイトハーベスト」というのは夜中に葡萄を収穫すること。

夜中に収穫することで香味成分の強い葡萄果汁から香り高いワインつくりができるそうです。

 

カベルネソーヴィニヨンは渋みが柔らかく、こちらも香りが繊細で多彩。

 

さて。では九州のワインの特徴って?

山梨と比べたときに何かがあるのでしょうか?

 

ひとつが葡萄品種→「甲州」がほとんどないことです。

 

それはなぜなのでしょう?

山梨はワインを作るずっと昔から生食用の甲州が有名な土地でした。

九州のワイナリーの多くはまだ歴史が若く、この熊本ワイナリーも平成11年設立。

その土地にすでに植わっている「甲州をなんとかせねばいかん」という歴史がありません。

 

生食用の葡萄とワイン用の葡萄とでは栽培方法や収穫のタイミングが違い、もともと生食葡萄の栽培家だった農家にワイン用葡萄のノウハウを理解してもらうことが、山梨のような伝統ある産地ではひとつのハードルである場合もあるのに対して、熊本では「こうしてください」というお願いをストンと聞いてくださるそうです。

 

そして、この九州のテロワール。

雨が多く、台風の影響も受ける九州では葡萄の樹が雨に濡れすぎない工夫と、水はけ、湿気に対する対策に力を入れていらっしゃいますし

夏の気温も高いので、酸を大切にした果汁コントロールを徹底。

そういった工夫がただの温暖な産地の甘い香りの単調なワインに終わらず

熊本ワイナリーのワインに共通するエレガントな酸味と多彩な香りにつながっています。

 

また、「菊鹿」という土地の土壌は花崗岩と粘土を含む砂。

花崗岩土壌で有名なのはフランスのボジョレーヌーボーでおなじみのガメイで、

華やかでまろやかなアロマのワインを作り出すといわれています。

 

そういった土地の個性や、九州独特の食文化を背景にワインをつくる。

歴史が若い分、最新の技術なども柔軟に取り入れ、どの土地にどんな葡萄が適しているのか試しながらのワイン作りには夢と可能性がたくさん詰まっているような気がしました。

 

私がワイン教室に使用するのはマスカットべリーAの樽熟成やカベルネソーヴィニヨンなのですが、そういった本格的テーブルワインは酒屋さんで完売してしまうのか、物産コーナーは肥後六花や甘口ワインが中心です。

観光バスが到着すると沢山のお客様が甘口のワインをお買い求めでらっしゃいました。

 

・・・・が。

あくまでも私個人の意見なのです…

甘口のワインも優しくて美味しいんですけども

ぜひ、ワイナリーを訪問なさったら辛口ワインから試してみてください。

甘口ワインは醸造方法こそいろいろあるけれど、多くは発酵を途中で止め果実味を残すので味の個性が葡萄ジュースに近いものになります。

お酒としてテロワールや作り手のこだわり、失敗も妥協もここを感じてほしい!という自信も美味しさのポイントも長所も短所も辛口のテーブルワインに出てくると、私は思います。

ワイナリーで試飲するときにどうしても甘口を美味しいと感じるかもしれませんが

しかし、辛口のワインも手にとって見ていただきたいんです。

ワインの多彩な香りを九州の食に合わせてみていただきたい。

そうすると

観光地でワインだけを少し試飲したときとは別の格別な感動と発見が広がるはずです。

 

 

※情報は2015.9.3時点のものです

伊藤 治美さん

福岡市のレストランでソムリエとして勤務。2014年度公式ベネンシアドール(スペイン、ヘレス地方の特産品であるシェリー酒の専門職)認定試験に合格。福岡県内で2人目のベネンシアドーラ。シニアソムリエ、チーズプロフェッショナルの資格も持つ。プライベートでは2児の母。

伊藤さんのインタビュー記事⇒https://fanfunfukuoka.com/people/19834/

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