新酒祭りで賑わう「安心院葡萄酒工房」(大分)を訪問

10月ワイン新酒の季節がやってまいりました。

九州ワインのヌーボーはもうお召し上がりになりましたか?

先日、新酒祭りでにぎわう大分県は安心院葡萄酒工房へお邪魔しました。

安心院は大分県の国東半島の付け根を少し内陸に入ったところで、北東に瀬戸内海の周防灘、南東に別府湾があります。

福岡の感覚では海から近いと寒そうですが、そこは瀬戸内海。

海からの冷たい風は入ってきません。

夏暑く、冬には雪が積もる日もあるそう。夏と冬の寒暖差の大きな場所です。

 

安心院葡萄酒工房の本体は麦焼酎でおなじみの「いいちこ」を有する三和酒類株式会社。

ですが、実はワインのほうが焼酎より歴史が古く、昭和40年代に安心院町の農地整備によりマスカットベリーA、デラウェア、キャンベルアーリー等を植えたことがきっかけとなり、ワインの製造が始まったとのこと。

そこから様々な段組を経て、現在の設備の充実や交配品種の開発、商品の多様化、本格的な辛口ワイン作りへ発展し、今に至ります。

 

ワイナリーは緑豊かな丘の上にありました。

すっぽんの養殖で有名な場所が近くにあり、併設のレストランではすっぽんをいただくこともできるそうですが、木立が美しいマイナスイオンたっぷりの中庭にお弁当を広げるのも楽しそう。

訪問した日も新酒祭りということで、ジャズライブが開かれ、様々なお料理のテイクアウトショップが並んで、お客様でにぎわっていました。

さて

安心院ワインの一部をご紹介させていただきます。

安心院葡萄酒工房では広大な自社畑を中心に安心院で育った葡萄からワインをつくることにこだわっていらっしゃるため、全て安心院産です。

 

特に有名なのが安心院スパークリングワインでしょう。

安心院産のシャルドネを瓶内二次発酵させた本格的なシャンパーニュ方式のこのスパークリングワインはすでに多くのファンを持ち、福岡でも多くのレストランでグラス販売されています。

口の中にするっと馴染む繊細な泡立ちと、洋ナシやリンゴなどのフルーツの香りや、トーストのような酵母の香りを爽やかな酸が支えている。非常にまとまりのある高品質のスパークリングワインです。

このスパークリング。

ワイナリーでは2005年までは濁りスパークリングを作っていましたが、「辛口の本格的なスパークリングをつくりたい」と試行錯誤をかさね、「これならいける!!」と満を持して出てきたのがこの安心院スパークリング。

当初はきりっとした辛口の味わいを作り出すため出荷前にリキュールを加えるドサージュという作業を全くしなかったとのことですが、試行錯誤の上、ほんの少し門出のリキュールを加え複雑味を出す今のスタイルにたどり着いたとのこと。

オリとワインがふれあった状態で熟成の様子を見ているストックもあり。

この長期間熟成させたスパークリングワインがどのような変貌を遂げてリリースされるのか…!? 現在のスタイルを基準に今後別の発展もありそうな予感でますます将来が楽しみです。

 

それと双璧をなすように有名なのが「イモリ谷」の区画からの白ワインと赤ワイン。

「イモリ谷」名前から美味しそうだと思うのは私だけでしょうか?

これは独特の地形がイモリのような形を成す谷の丘の上の畑だそうで、他とは土壌の組成も違い、より香りが華やかに立ち上る葡萄が出来上がるのだとか。

イモリ谷のシャルドネは先にグレープフルーツやかぼす(大分なので…)などの柑橘類の香りから、空気を含ませると熟したリンゴやパッションフルーツなど南国の甘いフルーツの余韻を残します。酸は穏やかですが、きちんと骨格を作っておりミネラルも豊かです。

先日の九州ワインフェスタで「イモリ谷シャルドネ」に感激した私ですが

今回ワイナリーを訪問してさらに「シャルドネリザーブ」に出会いました。

 

目立つラベルの「イモリ谷」に隠れるようにひっそり佇むフラッグシップの「シャルドネ リザーブ!!」控えめなところが素敵です…。

ラベルについては要らぬことをエノログ古屋さんにも申し上げ大変失礼いたしました…。

 

ラベルは控えめなのに(しつこい)…なんと!このリザーブ。

より高品質でスペシャルな葡萄を厳選、新樽で発酵、熟成させています。

優しく素朴なものの、複雑なアロマ。バターやヴァニラの香りと、リンゴやパイナップルのようなフレーバー。バランスよくまとまっています。

 

安心院葡萄酒工房では昔から実に様々な葡萄を栽培していて、さらにそれらを交配して新しい可能性を持つ品種の模索にもつとめていらっしゃいます。

 

2014年のソーヴィニヨン・ブランは青リンゴやカボス(大分なので…)レモングラスを感じる爽やかな香りと、ミネラルのニュアンス。豊かな酸味が口に広がる秀作でしたし、試飲コーナーでは、ブランデーも大人気のようで、食前から食後まで安心院のワインで完結できるような多様性をめざしていらっしゃるんだなと感じました。

 

最後に

忘れられないのが「小公子」

小公子は山葡萄系の品種を交配させて作られた葡萄品種なんですが、現在秋田県と島根、そしてこちら安心院葡萄酒工房のものが有名です。

 

東北と島根のものはピーマンのような独特の香りが強く、野性味あふれる、いかにも「山葡萄です」というワインなんですけども、この安心院のものは爽やかな酸味に溶け込んだ渋みと豊かな果実味がボディをつくって実にまろやかなんですね。

温暖な九州ならではの味わい…と簡単に考えていましたが

そうではありませんでした。

 

この小公子は皮が非常に薄くて破れやすい。

青臭い香りが出ないように、完熟を待っていると、想定外の雨や台風で皮が破れて葡萄が傷んでしまいます。

2014年は小公子は台風にやられて収穫が五分の一に落ちてしまったそうです。

「台風の被害を受ける前に収穫しよう」

「でもせっかくここまで完璧な状態なのに、もう少し待ちたい」と、ぎりぎりの選択をしたそう。

収穫のとき、手の上で皮が破けて手が赤く染まる小公子の写真をみせていただき…

ちょっと、いえ、かなり胸が熱くなりました。

そこに単なる焼酎メーカーのワイン部門ではない、ワインつくりのプロの悔しさや妥協のなさを見ました。

5分の1に減ってしまった収穫で生まれてきた、完熟小公子なんですね…。

 

どんな葡萄もところ変われば味かわる。

畑によって

作り手によってそのキャラクターは違います。

 

どこが好き

どこのは苦手

それは、もちろんあります。

 

日本でワインを本格的につくったら、少しお値段高くなってしまいます

 

しかし

その土地で、そこに根を下ろして生きている葡萄のワインを、ぜひお召し上がりいただきたい。

 

買った瞬間もボトルの中でワインは生きています。

 

 

※情報は2015.10.19時点のものです

伊藤 治美さん

福岡市のレストランでソムリエとして勤務。2014年度公式ベネンシアドール(スペイン、ヘレス地方の特産品であるシェリー酒の専門職)認定試験に合格。福岡県内で2人目のベネンシアドーラ。シニアソムリエ、チーズプロフェッショナルの資格も持つ。プライベートでは2児の母。

伊藤さんのインタビュー記事⇒https://fanfunfukuoka.com/people/19834/

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