【西島亜木子】職人が減っていく 伝統工芸使って守って

先日、漆芸(しつげい)文化財の修復技術者の方と話す機会があった。18日開幕の特別展「美の国日本」で、「技あり日本!」と題し、伝統的に伝えられてきた日本の技を紹介するコーナーを作ることになった。その取材のためだ。

 

漆芸技法に蒔絵(まきえ)というものがある。「漆で文様を描き、それが乾かないうちに金や銀の粉を蒔(ま)いて固めたもの」というような説明が書いてあるのだが、文章を読んでもよくわからない。ということで、私が働いている九州国立博物館内の修復施設におじゃました。

 

技法の話もさることながら、道具の話が興味深かった。プロ用の漆刷毛(うるしばけ)(漆を塗る際に使う刷毛(はけ))を作っている職人は、今では日本で数人だそうだ。刷毛に使う毛は、日本人女性の毛髪を数十年寝かせたものが良いとされているのだが、現在は入手困難となり、ほとんどが中国産毛髪になった。また、根朱筆(ねじふで)と呼ばれる細い線を描くための筆は、ネズミの背筋の毛が最上級だとか。水毛(みずげ)とよばれる半透明な毛先が重要らしいのだが、近年は鉄筋コンクリートの建物によって水毛部分がコンクリートとの摩擦で擦り切れてしまったり、ネズミを捕る人も少なくなったりで、これもまた手に入りにくくなった。そのため、根朱筆の替わりとなる根朱替筆(ねじがわりふで)というものが作られ、これはネコの毛が用いられる。聞くと、やはり使い心地は違うということだった。

蒔絵の道具(一番右が根朱替筆)

蒔絵の道具(一番右が根朱替筆)

食卓で漆器を日常的に使う機会が減ると、漆器を作る職人が減り、道具を作る工房もなくなっていく。漆器に限らず、陶磁器や着物などの伝統工芸品も同様だろう。いいものは大切に使うし長持ちする。伝統の技を絶やさないために私ができること、それは伝統工芸品を使うことだと感じた。

 

※情報は2015.10.19時点のものです

西島亜木子

九州国立博物館(福岡県太宰府市)企画課アソシエイトフェロー。銀行勤務を経て、米国に留学、陶芸を学ぶ。2013年より現職。展覧会での分かりやすい解説パネルや体験コーナー、イベントなど企画を担当。趣味は長距離ウオーク。

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