【長廣百合子】命の誕生は奇跡 国全体で認識共有を

「い、痛い!」。早朝5時。「陣痛が始まった…」と臨戦態勢に入ろうとする私の隣でうめきだしたのは、妊娠していないはずの夫だった。聞けば、強烈に頭が痛いらしい。おかしいやら腹立たしいやら。次第に心配が勝り「あなたがそんな調子じゃ集中できない。病院に行ってきて! まだ産まないから!」と追い出した。シャワーを浴び、化粧をし、食事を済ませる。夫が帰宅したころには、陣痛の間隔は5分刻みになっていた。

 

結局、かかりつけの産院に到着したのは午前11時。そこから5時間、夫立ち会いのもと分娩室で格闘を重ね、ようやくわが子を抱くことができた。自分の命が削られた感覚と、命に替えても守るべき存在に出会えた喜びが交互に押し寄せてきた瞬間だった。

 

その後、病室に戻るまでのことはあまり覚えていない。というのも、分娩後自然に剝がれるはずの胎盤が出てこず、手術を受ける羽目になったからだ。大量出血による死亡や子宮摘出のリスクを伴う「癒着胎盤」。事態をのみ込めないまま全身麻酔で意識を失った。

1 / 2

関連タグ

この記事もおすすめ