【方言ぽっこり】ホントあんたは、ふーたんぬぅりかね!

「ホントあんたは、ふーたんぬぅりかね!」

えっ、お母さんごめん、それ何語!?

 

福岡には博多弁、豊日方言、筑後弁、柳川弁、大牟田弁など、県内だけでも様々な方言が存在し、さらには隣接する他県の影響を受けたりと、地域ごとにディープな進化を遂げています。

私は福岡の南部、筑後弁を話す地域で育ちました。
博多で言うところの「知っとー?」が「知っちょる?」になり、
北九州で言うところの肩車、「びびんこ」が「びびんちょこ」になり、
全国区での「かさぶた」を「つ」と呼ぶ。そんなところです。
(※「かさぶた」=「つ」は、熊本や長崎にもある方言)

数年前、祖父の法事のときのこと。
田舎ならではの自宅開催です。厳かな雰囲気はお経をあげて、みんなで焼香をするまで。座敷はそのあとすぐに、食事会場へ早変わりです。
我が家ではなぜか、法事には手作りの煮麺を振る舞うことが習わしになっています。その日も例外ではなく、あとは出汁を温めて麺を入れるだけの状態に仕込んでおいたのですが、肝心の出汁が見当たりません。
出汁のありかを母に尋ね、その返事は、名前を書いて冷蔵庫の中に入れてある、とのこと。
しかし、いくら冷蔵庫を探せども、それらしいものがない。

そんな時、私の後ろから親戚のおばさんがにゅっと腕を伸ばし、液体が入ったボトルを手にしました。
「どこ探しよるとね。ここにちゃんと書いとるやんね。」
そのボトルは確かに、手前の一番わかりやすいところにありました。もちろん見たけれど、そんな馬鹿な、出汁なんて書いてなかったはず!
疑惑の目で私が見つめた先、おばさんの手の中のボトルには、これでもかという大きな母の字で、

「スメ」

と書かれていました。

そうです。スメ、とは出汁のことです。確かにそれらは、イコールです。でも、方言のまま書くやつがあるか!

聞いて理解できていたものが、文字として視覚で捉えられなかった経験は、これが初めてでした。

方言とは、口伝えのみで地域に根付く、摩訶不思議な言語です。
新聞を読んでいるとき、テレビニュースを聞いているとき、受け入れる標準語に違和感はまったくないのに、話すとき、語尾に「~ったい」「~けん」を付けずにいられますか?
何も気にせず使っていた方言を、改めて“標準とは違う言語”として意識すると、いろいろ面白い側面が見えてきます。
どうでしょう。一度、自分は方言を話しているんだ、と意識して話してみては。
きっと、新しい発見があるはずです。

 

[ふーたんぬぅりぃ【形容詞】
のんびりしている、の意。
博多の方では、「ふうたらぬるい」という言い方もあるだとか。]

【隔週月曜日更新】

※情報は2014.1.20時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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