久々の里帰り 温かな時間 幼い頃の「風景」今も心に

 あまりの静けさで目が覚めた。外を見るとやはり雪が積もっていた。一面銀世界。一晩にして、英国の児童文学「ナルニア国物語」の世界に変わっていた。動物たちの足跡だけがかわいらしく残っていた。私もまねして新雪に足跡を付けた。それらの跡もしばらくしたら雪に消され雪だけの世界に戻っていった。ついに来たか!この冬初めてである。

 初めてといえば、今年のお正月は養鶏を始めて初めて家族4人で実家へ戻った。鶏がいるので家族で泊まりはなかなかできないが、ありがたいことに近所の方が鶏の世話をしてくれた。10年以上ぶりの貴重な時間だった。80歳になった父に、子も孫もみんなで歌をプレゼントした。久しぶりの再会と思えぬくらい、声と心が重なり合った。にっこり笑う父母の顔。ふと懐かしい自分に会った気がした。慌ただしい日常に流れている時間と別に、子どものころにとても大切に思っていた時間がそのままそこに存在していた。私はこの温かさで育ったのだとあらためて感謝した。子どもたちはいつかこんな時間の大切さを思い出してくれるだろうか。

 「子どものころに見た風景が、ずっと心の中に或ることがある。いつか大人になり、さまざまな人生の岐路に立った時、人の言葉ではなく、いつか見た風景に励まされたり、勇気を与えられたりすることがきっとある」と、写真家の故星野道夫さんはつづっている。

 帰り際、父が「元気で」と言って握手をした。農家の私の方が大きく分厚い手になっていた。涙が出た。私の風景は家族との時間であった。このお正月、家族4人でそれぞれの風景を刻んだであろう。この年になって大切なお年玉をもらった気がする。

 

※情報は2016.1.23時点のものです

小野寺亜希

神奈川県の海岸沿い、湘南で育つ。結婚を機に大手広告会社を退職し、福岡へ。九州の豊かな自然暮らしに魅了され「地に足がついた暮らし」を求めて佐賀市三瀬村に移住。養鶏「旅をする木」を夫婦で営む。娘2人。

小野寺亜希

神奈川県の海岸沿い、湘南で育つ。結婚を機に大手広告会社を退職し、福岡へ。九州の豊かな自然暮らしに魅了され「地に足がついた暮らし」を求めて佐賀市三瀬村に移住。養鶏「旅をする木」を夫婦で営む。娘2人。

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