【方言ぽっこり】「かき?」「かき。」「か、き?」「かき。」

「今日はえらい寒かねー!」

 

文字だけでは方言にはなりません。
発音するリズムがついて、初めて生きた言葉になるのです。

 

文章のリズム、イントネーション。そして、単語を強弱をつけて読み分けるアクセント。
地方では、これも大きく標準語とは違ってきます。つまり、「訛り(なまり)」があるわけです。
そして、訛っている人間にとって、“標準語のアクセント”、これが意外に難解なんです。

 

例えば、「牡蠣」と「柿」。
平仮名で書けば、どちらも「かき」ですが、この2つの単語は、アクセントが違います。

「牡蠣」⇒「か」にアクセント。カ↗キ↘
「柿」⇒「き」にアクセント。カキ↗

口にしてみてください。言い分け、きちんとできていますか?
実は、福岡(および九州)出身者は、この言い分けが苦手だと言われています。

 

ある日、千葉県出身の先輩と海鮮料理を食べに行く機会がありました。
そこで私は口にしたわけです。
「あの“カキ”美味しそうですね!」
すると、
「か(↗)き(↘)ね。」
すかさず、チェックが入りました。
最初、何を注意されたのか分からなかったのですが、確認してみると、「牡蠣」のつもりで言った私の「かき」が、アクセントが違ったせいで、先輩には「柿」で聞こえてしまっていたのです。
初めての指摘に混乱して、すっかり発音迷子になってしまいました。

「かき?」
「かき。」
「か、き?」
「かき。」

 

ひたすら、「かき」の応酬です。カオスです。いっそ後ろの席で聞いていたかったです。
というか、牡蠣か、柿かなんて、ニュアンスと場の流れで判断してもらえないかなぁ!誰が天然の岩牡蠣を前にして、果物の柿を食べたいなんて言うか!
・・・とは、先輩に対してさすがに伝えられず、そのまま場を濁しつつ、牡蠣を食したわけですが。

 

これ以来、私にとって「かき」は、すっかりトラウマワードになってしまいました。
「かき」の話題になると、「あ、ここはアクセント注意だぞ」と、一瞬ためらってしまいます。
だから、発言が自分の番になったら、こう逃げる!

 

「あのオイスター、美味しそう!」

 

他にも、「橋」と「箸」、「雲」と「蜘蛛」なんかもアクセント違いですね。
周りの人と言い比べしてみたら、面白いかもしれません。
ぜひお試しあれ。

【隔週月曜日更新】

次は、2月17日ですもんね。

※情報は2014.2.3時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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