新たなスタート 温泉地にある【由布院ワイナリー】

今年最初のワイナリー訪問は大分県由布市にある由布院ワイナリー。

JR南由布駅から歩いてすぐ、立派なワイナリーの後ろに由布岳の雄大な姿を眺めることができます。

この由布院ワイナリーは、2009年から2011年の間休業しています。10年以上前、国産ワインが注目され始めたころに何度か休業前の由布院ワイナリーのワインをいただいたことがありますが、パワフルで力強く、国産ワインに対して不勉強だった私は「日本でもこんなフルボディのシャルドネができるんだなぁ」と衝撃を受けました。

日本ではワイン法はまだ確立されておらず、当時は、外国から葡萄や葡萄ジュースを輸入して国内で醸造したものを「国産ワイン」として販売して良いことになっていました。当時私がいただいたパワフルなワインも、実はカリフォルニアやオーストラリアから原料ブドウを輸入して作られたものだったのです。

国産ワインの現状

現在日本に流通するワインは、輸入ワインが約7割に対し、国産ワインは約3割。「国産ワイン多いなぁ~!」と、思いませんか?ここでいう国産ワインとは海外から原料を輸入して作られたワインを含み、日本で栽培されたブドウから作られたワインに限定するとたった3パーセントなんです。

東京オリンピックを控え、日本ブランドを海外へアピールするためにも、国税庁は日本で栽培されたぶどう100%をつかったワインを「日本ワイン」と表示し、地域で育てたブドウを85%以上使用した場合に限り、産地名をラベルに表示できるように指示。
「基準を厳格化することで国産ワインの品質を高め、海外にPRしたい」としていて、2014年、自民党主体で「ワイン法制に関する勉強会」も発足。国内法の制定に向けた準備が進められている段階です。

当時のYU-FU-INシャルドネなどは、高価な原料葡萄を輸入した高品質なものでしたが、しかし、現在もスーパーやコンビニで販売される安い国産ワインの多くは、海外から安価な葡萄果汁を輸入して作られています。

さて、

由布院ワイナリー

前置きが長くなりました。由布院ワイナリーは、2001年、温泉で有名な湯布院、南由布地区に建設されました。

今回見学申し込みのお電話をしたところ、「時間があれば応対します」と、とってもクール。

何しろ昔のハイブランドなイメージを持っていたもので、「食べ方を間違ったら追い出されるこだわりのラーメン屋さんみたいなワイナリーだったらどうしよう…」と、おっかなびっくり訪問したのです。

対応してくださったのは、昔から醸造に携わっていらっしゃった東さん(右)

当初小さな規模でワイナリーを運営する予定でしたが、行政の支援で規模が大きくなり、葡萄畑の十分な整備、原料葡萄の十分な量の収穫を待たずにワイナリーがスタートしてしまったそう。由布院の畑でサンジョベーゼやソーヴィニヨン・ブランなどを栽培しながら、カリフォルニアやチリ、オーストラリアから高品質の葡萄を輸入しつつワインを作っていたとのことです。

東さんは元々土木関係のエンジニアで、畑の排水などのプロフェッショナル。湯布院ワイナリーがお休みの間は同じ大分県の安心院葡萄酒工房で仕事をされていたそうで、大きな自社畑を持ち様々な葡萄栽培を行う安心院で、ワイン用葡萄栽培について、新たな発見や気付きも多かったそう。

「安心院で得たことを由布院で工夫してみたいな…」

そんな東さんが新しいオーナーから由布院ワイナリー再開を提案され、久しぶりに由布院ソーヴィニヨン・ブランの畑を訪れると…葡萄が東さんを待つようにやっと命を繋いで残っていた。せっかくの樹齢10年の葡萄。引っこ抜いて1から始めるよりも、なんとかこれを復活させよう…と、その後の1年は安心院で仕事をしつつ、葡萄の世話をしに由布院へ通ったそうです。

そして
2012年4月から新しいオーナーのもと、規模を縮小して営業を再開。
2013年ソーヴィニヨン・ブラン畑の収穫量は一反でわずか10キロ。
2014年、雨よけなどのケアをしたところ400キロだったそうなので、いかに葡萄樹に人的なケアが大切なのかよくわかります。
醸造設備は、広々として衛生管理が行き届いており、チリ産やカリフォルニア産、オーストラリア産の葡萄からつくるワインの醸造ステンレスタンクの奥に由布院産のサンジョベーゼと、ソーヴィニヨンブランが熟成されていました。

2013年サンジョベーゼ「めざめ」をテイスティングさせていただきました。ロゼです。

2013年のものは濃い色合いになったとのこと。渋みが比較的しっかりしていて、動物的…とまではいかないものの、ほんのりキノコのような、土っぽいような香り。

以前に比べると、規模はかなり小さくなり、設備は年間生産本数15,000本程度で、すべての工程を手作業で行っています。今後は、サンジョべーぜとソーヴィニヨン・ブランを柱に栽培面積を拡大しつつ、国産原料の比率を増やしていきたいと考えていらっしゃるとのことで、広い施設と、駅からの近さを利用して一般の愛好家が葡萄やワイン作りに携われる体験型のワイナリーをしていきたいとのこと。福岡からJRの便も悪くないですし…そうなったら「ゆふいんの森号」に乗って、ぜひ参加したい…!

ワイン法が整備されていないがために、原産地や地理的表示のあいまいなままで需要拡大していった過去の国産ワインは現在各地でつくられるテロワールを意識した「地域のワイン」と比べて矛盾のようなものがでてきたのかもしれません。
いただいたサンジョべーぜは、外国からの輸入原料のワインと比べると軽く淡い余韻がじんわり広がる優しいワインでした。どちらが山間の温泉地「由布院」らしいかと言われると、やはり今のほうが由布院らしいワインだと思います。

東さんの帰りを今か今かと待っていたソーヴィニヨン・ブランはいよいよ今年の春にリリース。
由布院に根ざしたワイン造りのスタートを一歩ずつ踏み出した応援したくなるワイナリーのひとつです。

 

※情報は2016.2.2時点のものです

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