娘とアイルランドへ 異文化に触れ自分を知る

 ひと雨ごとに寒さが緩み、小鳥たちのさえずりが春の訪れを告げているようだ。

 中3の娘にも一足先に春が来たので、仕事と家事を夫と次女に押しつけて、思い切って娘と二人旅に出た。行き先はアイルランド。寒々しいグレーの世界を想像していたが、訪れた所は、澄み渡る空、草原と海がどこまでも続く美しい場所だった。娘いわく「空に手が届きそう」であり、どこにてもスナップ写真の一枚のように私たちと景色が一つに溶け合った。羊が放牧され、海辺にはアザラシが昼寝をしていた。小さなアザラシが近づいた私たちに気付き、慌てて海に戻っていった。彼らと同じ時間を生きていると実感し、無性にいとおしく思った。

 娘は、公立高校と私立の女子高に体験入学させてもらった。授業は静かに先生の話を聞くのではなく、生徒が絶えず質問し、それに答えながら進めていた。全国一斉の数学学力テストでは、10点問題に対し、答えが間違っていても考え方や式が合っていれば減点1~2点、逆に答えが合っているだけではバツになる。どれだけ理解しているかが重要となる。公立の学校では塾に行っている生徒はいなかった。皆、分からない問題は先生にいつでもメールして教えてもらっていた。

 休み時間、娘は中学の生徒たちに、簡単なことから日本の政治問題まで、どう思うか具体的な疑問を投げ掛けられた。学校は自由で活気に満ちていた。帰るとき、彼らは娘に「来年必ず戻って来てね」と言ってくれた。皆、無邪気で優しく、自信に満ちあふれていると娘は感じた。見知らぬ土地で人の優しさや異文化に触れ、何も知らない自分を知ったのだった。

 

※情報は2016.2.27時点のものです

小野寺亜希

神奈川県の海岸沿い、湘南で育つ。結婚を機に大手広告会社を退職し、福岡へ。九州の豊かな自然暮らしに魅了され「地に足がついた暮らし」を求めて佐賀市三瀬村に移住。養鶏「旅をする木」を夫婦で営む。娘2人。

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