【人生の輝いてゐる夏帽子】佐世保での革命的な出会い

【人生の輝いてゐる夏帽子】

大正時代の俳人、深見けん二の句です。男性のパナマ帽や少女の麦わら帽子など、夏帽子から想像される連想される光、匂い、人はどれも夏そのもので、私のお気に入りの季題であります。

文学から飛び出して美術の世界でいうと。

夏帽子といえば、ルノワールの作品が思い起こされます。上の俳句が書かれる更に100年ほど前の作品です。ルノワールの作品がなんと佐世保の美術館に来ていると知り、馳せ参じました。

通称しまびこと佐世保市博物館島瀬美術センターに特別展示されてあるルノワールの作品。

通称しまびこと佐世保市博物館島瀬美術センターに特別展示されてあるルノワールの作品。

と、そこで、革命的な出会いが待っていたのです。

しまびは、佐世保駅からタクシーで3分ほどです。今回、福岡からフランス人のレネちゃんも同行しました。麦わら女を彷彿とさせる可憐な乙女ですが、一番好きな絵はムンクの「叫び」だそうです。そんなロックなレネちゃんに、それぞれの作品のフランス語読みなどを教えてもらいながら巡るうちに、一つの力強い作品に辿り着きました。作品の画家名、それはシュザンヌ・バラドンだったのです。

シュザンヌ・バラドン!

書物の中で何度も憧れたその女性です。まさかその憧れのシュザンヌ・バラドンの作品に佐世保で出会えるなんて。革命的な出会いに、血圧が一気に上がりました。

シュザンヌ・バラドン。アンニュイでありながら力強い美人。

シュザンヌ・バラドン。アンニュイでありながら力強い美人。

シュザンヌ・バラドン。

最初は、エリック・サティという音楽家の恋人としてその名を知りました。サティは私の特別に愛する音楽家です。そのサティの恋人のシュザンヌとやらはどんな女だろうと思い調べるうちに、彼女の虜になりました。貧しい洗濯女の私生児として生まれ、サーカス団のブランコ乗りをしていましたが、あるとき事故に遭います。サーカスを引退して以降は、絵画モデルとなりました。サティの他にも、ロートレックやルノワールなど芸術家たちと恋愛を重ねるうちに、私生児として画家のモーリス・ユトリロを産みました。その情熱と奔放さ故、父親が誰なのかは分かりません。

ビッチです。しかしただのビッチではありません。実力派のビッチです。画家のモデルを務めるうちに、シュザンヌは自身でも絵を描き始めました。そして努力と鍛錬の結果、見事な実力派の女流画家となったのです。私生児としてスラム街に生まれ、サーカスのぶらんこ乗りを経て実力派の芸術家になる。まさにマイノリティの星。

こちらが先日、しまびで邂逅したシュザンヌ・バラドンの作品《コントラバス奏者》です。

美しい。

原始的で力強く、正々堂々とした美です。私は滅多に泣きませんが、このように美しいものに出会うと涙が出ます。コラムに掲載の為に写真をお借りしたのですが、今こうして眺めているだけでも魂が震えます。

シュザンヌに憧れたのは思春期の頃で、当時は私も将来出産するならシュザンヌみたいに父なし子を産もうとか狂気じみたことを考えていましたが、三十を過ぎた今改めて彼女の半生と作品を味わうと、また違う感慨があります。

女性が輝きながら働くというのは、いつの時代も当たり前のことではありません。当たり前ではなく、今までの歴史において誰かが勝ち取ってくれたものです。

今回の佐世保の特別展では、働く女性を描いたものが沢山ありました。現代社会において、女性はものすごく働いており、というよりも戦っており、またビッチな女性も多いですが、輝きながら働くことや堂々とビッチでいられることは、有り難いことなのです。過去のビッチヘ敬礼であります。

【人生の輝いてゐる夏帽子】

特別企画展【印象派から新印象主義へ女性を描く~クールベ、ルノワールからマティスへ~】

会期:平成28年7月16日(土曜日)~8月28日(日曜日)44日間

会場:佐世保市博物館島瀬美術センター(住所:長崎県佐世保市島瀬町6-22/TEL:0956-22-7213)

アクセス:佐世保駅より徒歩20分/「島瀬町」バス停すぐ

HP:http://www.city.sasebo.lg.jp/kyouiku/simano/index.html

※情報は2016.7.23時点のものです

佐世保市博物館島瀬美術センター

住所長崎県佐世保市島瀬町6-22
TEL0956-22-7213
URLhttp://www.city.sasebo.lg.jp/kyouiku/simano/index.html

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カミーユ綾香

北九州市出身。在日韓国人と中国残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。 警固インターナショナルの代表として、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。http://www.kego-international.com/

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