41歳で突然半身不随…「哀しきフリーランス」【病床ROCK尺】vol.6

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もともと、病気前はワーカホリックに、マラソンにと、ちょっと異常なテンションで人生を生きていた身。いきなり静かな病院生活には戸惑うばかりです。弁護士も作家も休んでいては収入の無い職業。意識が戻ってすぐに考えたのは、仕事のことでした。

もちろん家族の心配事でもありましたが、「早く戻らないと」と言う妻に対し「忙し過ぎたのよ。半年くらいゆっくりリハビリして先のことはまた考えないと」と悠長なことを言う義母。弁護士業はとりあえず、外出できるようになるまで裁判を3カ月ほど延期してもらい、他の予定に関しては全てキャンセルです。

作家業では近々『弁護士探偵物語 完全黙秘の女』が『逆転尋問 弁護士探偵の反撃』に改題して文庫化する予定だったため、ゲラをチェックする必要がありました。それはベッド上でなんとか終わりました。西日本新聞社発行の『のぼろ』に連載していた短編は、1回休みとさせていただきました。短編とはいえ、小説を頭の中で練ることまでは難しかったのです。

また、某スポーツ紙で倒れた翌日から連載し始めたばかりの、アビスパ福岡応援コラムの締め切りも近付いていました。アビスパの調子は上がっているし、文字数はそう多くはないので何とか書きたいと、レポート用紙に手書きで書き始めたのですが、なぜか、左下が真っ白。その後長く悩まされることになる「半側空間無視」でした。

たとえば車いすで自走していて、左に障害物があるとわかっているのに、いつの間にかぶつかる。食事の時に左側の皿のおかずをそのまま残してしまう。全く見えていないわけではないのに、その部分の空間を無視してしまう症状なのです。

こうやって病室で仕事をしていると、看護師さんからは言外にいい加減にしなさいよ、というニュアンスを込められた「大変ですね」という言葉を掛けられるのですが、ただ、じっとしていても不安になるばかりの悲しきフリーランス、ともかく何かしら片付けるべき仕事があったのは精神の安定には役立ちました。

 

Profile

法坂一広(ほうさか いっこう)

福岡市を拠点に活動する弁護士、小説家。2011年に『弁護士探偵物語・天使の分け前』で第10回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞。以降、弁護士探偵物語シリーズを執筆する。最新作は『ダーティ・ワーク』(幻冬舎文庫、2015年)。趣味はアビスパ観戦とトレイルランニング。西日本新聞社刊登山情報紙『のぼろ』でショートストーリーを連載中。

 

※情報は2016.9.9時点のものです

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