グルメ小説“N氏の晩餐”in東京<後篇>/浜松町「秋田屋」

※グルメ小説“N氏の晩餐”in東京<中篇>/神田駿河台・山の上ホテル「天ぷらと和食 山の上」

ランチのあと、「これからちょっとした仕事が」というH氏といったん別れ、私は以前から行きたかった美術館をいくつか回った。

存分にアートを満喫したあと、H氏との待ち合わせの場所、東京駅丸の内口へ。今日は最終便で福岡に戻ることになっていて、それに間に合うようにディナーの場を設定してくれている。夜・昼・夜と余すことなく東京の名店巡りができるなんて、私は本当に幸せ者だ。

約束の時間より5分ほど遅れてH氏登場。

よっぽど急いできたのか、額には汗がうっすらと浮かんでいる。どうやら仕事が予定以上に長引いたらしい。

山手線で浜松町へ。

貿易センタービルを出てしばらく歩くと、「これぞ酒場!」という雰囲気のお店が登場。店の外側までお客さんがあふれている。彼方に見える東京タワーとの絶妙なコントラストといったら、まさに異次元の世界に迷い込んだよう。

「福岡にはないような雰囲気のお店」という私のリクエストに応えて案内してくれたのがこちら。

H氏のあとに続いて、吸い込まれるようにそのお店の暖簾をくぐる。

運よくカウンターが2席だけ空いていて、そこに腰を落ち着ける。

レモンサワーで乾杯。

まずは串もの。H氏のオーダーは子袋とカシラ。文字通り、豚の子宮と頭だ。

子袋はしゃきしゃきとした触感が心地よく、独特の風味がレモンサワーによく合う。

カシラは大ぶりだが、噛むと柔らかく、肉の旨味が口中に広がる。

続いて登場したのは季節限定の谷中生姜。穂先の白い部分を味噌につけていただくと、口のなかに爽快な刺激が。

添えられたのは秋田の名酒「高清水」。これぞ表面張力の勉強とばかりにヒタヒタに注いでくれ、もちろん口から迎えに行く。

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