【五感と修行と盗み聞き】 断食明けの集中力

辛ラーメンとピザを連続で食べました。

悪魔的な魅力だったのです。辛ラーメンを食べ終えて味覚が馬鹿になったところ、そのままピザに突入したのです。満腹で五感が鈍くなる中、猛省し、翌日から修行僧のように断食しようと誓いました。

そして二日後、見事に断食達成です。克己!己を誇らしく思います。

断食明けは、味覚・聴覚・視覚・嗅覚・触覚、それぞれの五感が研ぎ澄まされます。仕事の効率も上がります。清々しい気分で大通りのカフェに向かいました。さあ、これから夕方の読書タイムです。

今、外出時に読んでいるのは【Nudge】という本で、邦訳は【実践行動経済学】といいます。私には難しい本ですが、どうにか頑張って読んでいます。どの本もそうですが、読書中には栞を使いません。弱い人間なので、栞があるとつい甘えてしまい、いつまでも読み終わらないことがあるからです。そういう事情で、一旦読み始めると必ずこの章まで読むという風に決めています。とはいうものの、今回のように難しい本になると、一章を読むのにも骨が折れます。

「大丈夫かな・・・読めるかな・・」

弱気になりますが、断食明けで五感が最高感度の私です。

「珈琲ブレイク中に一章を読み終える。」

そう決意し、アイス珈琲をぐっと飲みながら、ページを開きました。

読書は順調に進みました。

断食明けの集中力で、どんどん頁が捗ります。

「この調子だとあと30分ほどで読み終えるかな。」

そう思い、油断したときのことです。鋭い聴覚が、うっかり隣席の会話を聞き取りました。それを聞いたとき、「やばい」と直感しました。何故ならそれはバイト面接中の会話だったからです。他人のバイト面接ほど、興味深いものはありません。バイト面接の盗み聞き・・・こちらも悪魔のように魅力的です。読書に集中しようとしても、絶好調の聴覚が働きます。男性の猫なで声が聞こえます。

「明日から働ける?」と。

相手の女性は即答します。

「やれます」と。

それまで読んでいた英文が急にローマ字の羅列と化します。会話を盗み聞きしたい悪魔と、集中して読書したい良心の聖戦です。

暫く戦が続いたのちに、「それでは」と言って二人が席を離れました。面接が終わった!これでやっと読書に集中できる。苦しみからの解放です。と安堵したのも束の間、何故か男性は戻ってきたのです。しかも、新たな女性を連れて。そうです。ここから、まさかの二人目の面接が始まったのです。

私は、敗北を認めました。これはもう読み続けることは出来ない。本にも申し訳ない。無駄な抵抗はやめて聴覚に集中しよう。さり気なく、そして真剣に盗み聞きしよう。

テーブルの上のナプキンを一枚取りました。読みかけた本の頁に挟みました。本を閉じ、バッグに入れました。盗み聞きの体勢は整いましたが、テーブルに何もない状態でいるのも怪しいです。何かないかとカバンを探しました。ちょうど市役所で取ってきたチラシが出てきました。チラシを机に置いて、チラシを見ているふりをしました。それは、鬼の展示会チラシでした。

視覚の焦点をぼんやりと鬼のチラシに当てながら、聴覚を研ぎ澄ませて面接を盗み聞きしました。二人目の女性はなかなは気が強く、保険や正社員の数を聞いています。しかし徐々に聴覚がぼやけてきます。そして意識が視覚に移ります。目の前に置かれた鬼のチラシの方があまりに魅力的で、そこに視覚の焦点が集中してしまい、もはや面接の盗み聞きなんてどうでもよくなったのです。

その後小一時間ほど店に滞在し、苦戦して本を読み終えました。店を出る頃には、面接はとっくに終わっており、夕日もとっくに沈んでおりました。

人間の感覚は実に流動的です。夜風を浴びながら、まこと業は深いものだなあと嘆息し、鬼の世界展に行って修行し出直そうという決意したのでありました。

※【修正鬼会の世界展】

日時:平成28年10/1~平成28年12/25(午前9:00~午後5:00)

会場:国東歴史体験学習館「弥生のムラ」一階 企画展示室

http://www.city.kunisaki.oita.jp/site/rokugou1300/syuzyouoniesekai.html

 

※情報は2016.10.13時点のものです

カミーユ綾香

北九州市出身。在日韓国人と中国残留孤児の多く住む多国籍な街で育つ。 警固インターナショナルの代表として、十数言語による語学スクールとインバウンド支援の多言語ウェブサイト制作会社を運営する一方、難病の重症筋無力症とパンセクシュアルというセクシュアリティの当事者として、様々なマイノリティの生きやすい社会を目指して精力的に活動中。http://www.kego-international.com/

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