九州紀行小説 “Q子の休日” vol.4/関門エリア・下関編「名物ふく天うどんと絶品たこ焼き」

年下のボーイフレンド・ミツグくんは敏腕紀行ライター。天神の百貨店に勤める私は、たまに気分転換したいとき、休みの日を合わせてミツグくんの取材にお供させてもらっている。

本日の待ち合わせは朝9時に博多駅筑紫口の新幹線改札。

ミツグくんから手渡されたのは「新幹線小倉よかよかきっぷ」。土日祝日限定で博多・小倉間の新幹線自由席が往復3090円というから、かなりお得だ。

ホームに上がると旅行客やビジネス客が慌ただしく行き来していて、アナウンスと到着・発車を告げる音楽がBGMのように響いている。否が応でも気持ちが昂ぶる

ミツグくんの背中を追って、発車間際のこだま856号新下関行きに乗り込む。

所要時間16分。窓の外の風景を眺める間もなく小倉に到着。

「地下鉄だと博多から姪浜まで19分だから、新幹線ってほんと速いよね・・・」

新幹線から在来線への乗り換え通路を歩きながらミツグくんがつぶやいた一言に激しく同意する。

在来線に乗り換えて、20分足らずで下関到着。

今回取材するのは、関門海峡を挟んだ下関と門司港の二つの街、通称“関門エリア”なのだ。

この「しものせき」って響きが何とも“本州の西の玄関口”って感じで風情があっていいのよね・・・なんて感慨にふけっていると、ミツグくんはどんどん先へ。あわてて改札口で追いつくと、小倉からの乗り越し料金280円を二人分払ってくれているところだった。

「下関に来たらまずはこれを食べなきゃ」

ミツグくんがそう言って指さしたのは、駅構内のうどん屋さん。

お店に入ると手前が立ち席、奥がテーブル席と区分けされていて、自販機で買った食券をカウンターで渡してうどんを受け取る方式。

ミツグくんのおすすめの“ふく天うどん”登場。

うどんの上に下関特産のふぐの天ぷらとふぐをかたどった蒲鉾がのっている。下関では“不遇”ではなく“福”につながるように、という願いを込めて“ふぐ”ではなく“ふく”と呼ぶそう。

うどんの麺は細麺の軟麺で、塩味が効いたダシにすごくよく合う。“ふく”の身はかなり肉厚、プリプリほくほくで食べごたえ十分。これで530円はかなり贅沢じゃないかと思う。さらに、パラリとかけた一味唐辛子にビックリ。辛さはさほど感じないけど今まで味わったことがないくらい良い香りがする。

「ここ下関と韓国の釜山の間には100年以上前から定期航路があって、その間、人と物が自由に行き来してきたんだ。この唐辛子は間違いなく韓国産だね。しかもここまで細かく挽いてある唐辛子はほかの地域ではほとんど流通してないんじゃないかな。韓国では料理によって唐辛子の粒の粗さを使い分けるのかもね」

ミツグくんの話を聞きながら、早くもこの土地の歴史と文化、そしてその魅力に触れた気分。

うどんで小腹を満たして駅の外へ。それではいよいよ街歩き開始ね・・・と思いきや、ミツグくんは駅前のショッピングモールにすたすたと入っていく。地下へつながる階段を下りて向かった先は、またまた飲食店のようだ。

「“ふく”の次は“かめ”?」

状況を把握しきれずにいる私の前に出てきたのは、何とたこ焼き。

「これのどこが下関名物なのよ」・・・と言いかけたそのとき、私の鼻先を極上の鰹節の香りがかすめていった。「うわっ、なにこの、たこ焼き!」

1つ口に頬張ると、薄くパリッと焼けた表面の下にモチモチした生地が隠れていて、その食感がたまらない。シャキシャキした“たこ”の歯ごたえと旨味にキャベツの甘み、青のりと粉状になった鰹節の風味、ソースの香りが混然一体となった中で細かく散らされた辛子マヨネーズが全体の味を引き締める。気づいたら12個ペロリと平らげていた。

これはまさしく下関の街がはぐくんだ極上の一品だわ。序盤からこんな展開なんて、今日はどんなことになるんだろう・・・。

私と違って冷静沈着かつ満足げな表情でたこ焼きを味わうミツグくんの鼻筋を眺めながら、私はこれから出会うであろう感動シーンに胸を高鳴らせていた。

【九州紀行小説 “Q子の休日” vol.5につづく】

※情報は2017.1.20時点のものです

AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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