九州紀行小説 “Q子の休日” vol.5/関門エリア・下関編「国内最古尽くしのレトロ建築探訪」

お腹も満たされたところで、下関駅から次なる目的地へ移動。

10分ほどバスに乗って降り立ったのは「唐戸」というバス停。

唐戸市場や海響館は有名だけど、敏腕紀行ライターの取材対象ではないわよね・・・とか思いつつミツグくんと並んで歩いていると、いきなり豪奢な洋館が目の前に現れた。門の脇にはユニオンジャックがはためいている。

「国の重要文化財・旧英国領事館。竣工はいまから110年前の明治39年。領事館として建設された現存する建物のなかで国内最古なんだって」という解説がサラリと入る。

領事の執務室にはどっしりとした机が鎮座していて壁際には立派なマントルピース。

「天井から下がった照明はどことなくアール・ヌーヴォー調だね」

年下彼氏のワンポイントチェックに耳を傾けながら、100年前、この灯りの下でどんな会話が交わされていたんだろう、と思いを馳せる。

旧英国領事館を後にして、唐戸交差点の歩道橋を上る。

ミツグくんがカメラを向けた先に、またまたクラシカルな建物が。

近づいてみると物凄い迫力。そのたたずまいに圧倒されていると、ミツグくんがさらっと解説してくれる。

「手前は国の登録有形文化財・下関南部町(なべちょう)郵便局。竣工は1900年で現役の郵便局舎としては国内最古。その隣は、旧秋田商会ビル。竣工は1915年(大正4年)で国内最古級の鉄筋コンクリート造りのビル」

「国内最古、国内最古級・・・って、100年前この辺はどんだけ栄えてたのよ」

つぶやく私をほったらかしにして、ミツグくんは旧秋田商会ビルの中へすたすたと入っていく。

1階はL字の受付カウンターの形跡があり、かつては事務所として使っていたのだろう。現在は観光案内所になっていて、案内スタッフの女性が2階へどうぞ、と勧めてくれる。スリッパに履き替えていざ2階へ。

???・・・何だか様子が変。階段は洋風なのに天井や壁の感じが・・・。

「なにこれ!廊下を挟んで和風建築と洋風建築が共存してる!!」

驚く私に、いつでも冷静沈着なミツグくんが一言。

「僕たちが住んでるマンションの中にも和室があるじゃない。日本人が得意な和洋折衷。いいとこどりだよ」

そういわれてみれば、そうかも。しかし、いまから100年も前にこんな斬新な建物を作っちゃうなんて、当時の人は相当驚いただろうな。

感慨にふけりながら建物の外に出ると、ひんやりとした海風を頬に感じた。私はミツグくんと肩を並べ、ドーム型の塔屋とその突端に揺らめく風向計を眺めながら、海外との貿易拠点として栄えた下関の活況に思いを馳せ、しばしの間、その大正ロマンの風に吹かれたのだった。

<九州紀行小説 “Q子の休日” vol.6につづく>

※情報は2017.1.20時点のものです

AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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