【N氏の観劇日記】博多座二月花形歌舞伎 <夜の部>(2017.2)

2017年2月5日(月)16:00開演

博多座二月花形歌舞伎 <夜の部>

地下鉄の駅で見かけた博多座二月花形歌舞伎のポスター。大胆かつ斬新なデザイン、ポップな仕上げ。見ているだけで心が浮き立ってくる。

博多座では2月と6月は歌舞伎の月。2月は若手主体の「花形歌舞伎」、6月は大御所が登場する「大歌舞伎」というのが開場当時からの定番となっている。

夜の部の演目は『雪之丞変化』。

副題に「市川猿之助早替わり並びに宙乗り相勤め申し候」とある。

言うなら「市川猿之助が二役を素早く演じ替え、さらには空を舞いますよ」という謳い文句。これは行かない手はないだろう。

外の寒空とは打って変わって劇場内は役者の登場を今か今かと待ち構える観客たちの熱気で満ち溢れている。

そして、幕が開く。


時は江戸時代。長崎の貿易商・松浦屋の一人息子・雪太郎がこの物語の主人公である。雪太郎の両親は商売敵の貿易商・広海屋と長崎奉行・土部駿河守の陰謀により、抜け荷(密貿易)の濡れ衣をかけられ、非業の死を遂げる。幼くして両親を失った雪太郎は、秘かに剣術の腕を磨きつつ、両親が贔屓にしていた歌舞伎役者・中村菊之丞のもと、歌舞伎の女形・中村雪之丞として確固たる名声を得ていく。

そして、江戸猿若町の芝居小屋・中村屋の客席に、かつて両親を死に追いやった宿敵の姿を目にしたその瞬間、雪之丞こと雪太郎の復讐劇の幕が切って落とされるのだった。


今回の芝居の一番の特徴は、「仇討ち」という主題をとった作品でありながらも、“憎悪や怨念”ではなく“愛と友情”が色濃く強く描かれているところだ。

同門の役者たちのみならず、江戸の町を跳梁跋扈する大悪党・闇太郎をはじめとする無法者たちも、雪之丞の清らかで真摯な心に惹かれ、命懸けでその敵討ちに加勢しようと奮闘する。

世界のあちらこちらで、いい歳の大人たちが醜い批判の応酬を繰り広げ、己の保身に邁進するニュースがあふれるこの世の中。若者が抱くべきは大志であり、人生にとってかけがいのないものは愛と友情。心通じ合う仲間たちと出会い、互いに助け合いながら困難を乗り越えていくことで開けていく道、そして未来。そんなメッセージを受け取った。

まさに昨年4月にこの博多座で上演され大喝采を浴びたスーパー歌舞伎「ワンピース」を彷彿とさせる壮大かつ痛快な世界観が舞台上に満ち溢れている。若手俳優中心の座組みとなる花形歌舞伎の演目として博多座で演じられることを十分に意識した粋な演出が素晴らしい。

劇中に雪之丞がつぶやく「芝居は人の世を映す鏡」というセリフ。その響きが深く胸の中に染み入ってきた。

広重の浮世絵さながらの舞台芸術も見事。役者の着物も色艶やかで、きりりと締まった小粋な博多帯を目にすると、この地に生まれ育ったことが何だか誇らしく思えてくる。

そして印象的なラストシーン。

ポスターにあった謳い文句のとおり、猿之助が雪之丞と闇太郎の二役を早替わりしながら演じる大立ち回り。そして悠々と宙を舞う雪之丞のしてやったりの表情と澄み切ったような笑顔。

息をつく間もない三幕を堪能し、ちょっと早めの春風が心の中に吹いたかのような、温かい思いを胸に抱きながら博多座を後にした。

博多座『二月花形歌舞伎』

公演期間:2017年2月3日(金)〜26日(日)

会場:博多座

公式HPhttp://www.hakataza.co.jp/lineup/h29-2/index.php

観覧料(税込):A席 14,500円 特B席 11,000円 B席 9,000円 C席 5,000円

問い合わせ:092-263-5555(博多座電話予約センター)

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※情報は2017.2.9時点のものです

AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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