九州紀行小説 “Q子の休日” vol.10/福岡県福津市「宮地嶽神社に春を告げる寒緋桜」

江戸時代、博多港の外港として栄えた津屋崎の港。やがてその地に塩田を利用した製塩業が興り、その塩を輸送する海運業が栄える。塩を積んで出た船は、西日本各地の特産品を運んで帰ってきて、街は栄え、ついた名は「津屋崎千軒」。商家が千軒も並ぶほど活況に満ちた街、という意味。

江戸時代に続いた大火により、当時の建物の多くは失われたが、明治期に建てられた古民家が今も往時の活況ぶりを語ってくれる。

その代表的な建築物が、津屋崎千軒民俗館「藍の家」。明治34年(1901年)に建てられた元紺屋(こんや)、いわゆる藍染めを主とする染物屋さん。平成6年に市に寄贈され、平成19年には国の有形文化財に認定された、津屋崎千軒を代表する古民家の一つ・・・。

紀行ライターの彼氏・ミツグくんの軽快な解説を聞きながら、その建物の中に足を踏み入れる。

まず目に入ってきたのは豪華絢爛な雛飾り。代々続く商家のたたずまいそのままに、きらびやかな空間が広がっていた。

部屋の中の調度品も見事。襖の上の欄間(らんま)。細かい仕事に思わず目が奪われる。

軒先には摘みたてのイチゴ。その瑞々しさに思わず喉が鳴り、見かねたミツグくんが1パック買ってくれた。なんて優しい彼氏なんだろう・・・。

津屋崎千軒を後にして向かったのは、ご当地の総鎮守・宮地嶽神社。

参道には名物「松ヶ枝餅」や土産物を販売するお店が軒を連ねている。

長く連なる階段を上ると立派な楼門が現れる。

そして、その楼門の脇にある木が真っ赤に染まっている。

この地に春を告げる「寒緋桜(カンヒザクラ)」。台湾原産の桜で、もともとは緋色をした寒桜ということで、「緋寒桜(ヒカンザクラ)」と呼ばれていたそうだけど、日本原産の「彼岸桜(ヒガンザクラ)」と区別するために、そう呼ばれるようになったらしいよ・・・

口早に解説をしながらも敏腕紀行ライター・ミツグくんの持つカメラのシャッター音は途切れることなく続いている。まさに絶景。春爛漫の景色だ。

境内の寒緋桜は淡いピンク。その向こうには日本一の大しめ縄が、凄い迫力で鎮座している。

スマホでパシャリ。いい画がとれた、自画自賛。

いまの私なら、どんな試験を受けても合格しそうな感じ・・・。

春の風景を追って奥の院へと突き進んでいくミツグくんは放っておいて、私は楼門の脇にある雰囲気のある茶屋の方へ。

私的には、花より団子、団子よりビール・・・。

街歩きのあとのビールはやっぱり最高。しかも酒器がお茶碗なんて、この場の雰囲気にぴったりな感じ。

ちょうど一缶飲み上げたところで、楼門からミツグくんが出てくるのが見えた。

爽やかな気分で再び合流。

帰り道に迎えてくれたのは参道から海へと続く一本道。彼方に広がる空と海がキラキラと輝いている。

「光の道、いつか見に来ようね・・・」

期せずして二人同時にハモった一言に、思わず顔を見合わせて笑いながら、春爛漫の参道をゆっくりゆっくり下っていった。

<九州紀行小説 “Q子の休日” vol.9~10/福岡県福津市編 完>

九州紀行小説 “Q子の休日” vol.9/福岡県福津市「津屋崎千軒の古民家を味わう」

【参考サイト】

■福津観光ナビ・ふくつぶらり

http://fukutsukankou.com/

■宮地嶽神社公式サイト

http://www.miyajidake.or.jp/

■ファンファン福岡・特集「三つの日本一、地下の正倉院…宮地嶽神社の魅力とは …」

https://fanfunfukuoka.com/feature/35885/

※情報は2017.3.14時点のものです

AKASAKA BOY

謎のライター

1978年福岡市赤坂生まれ。福岡の街の魅力を小説形式で発信中☆

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