【方言ぽっこり】そこを右さい曲がれば、もう東北ばい。

「あぁ、あんたはあそこんちの娘さんね。」

 

住所は書かれていないのに、名前だけで祖父宛のハガキが家に届いた、なんて話はザラで。

地元ではめったに乗らないタクシーですら、親の名前があれば道の説明をしなくても家までたどり着ける、ビバ・田舎。

 

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私の生まれ育った筑後地方では、「~の方向へ」を意味する助詞として、「さい」を遣います。

 

「そこを右さい曲がれば、うちばい。」

という風に。

 

この「さい」という方言は、平安~鎌倉時代に遣われていた「さまに/さまへ」という、方向を示す古語が由来となっています。

実は、現代の敬称である「様」という言葉。これも同じく、この古語が由来になっている、というのはマメ知識。

話を戻して、「~の方向へ」を意味する方言について。

筑前の方では「さえ」、佐賀に近い地方では「さん」という場合もあるようで、九州全土でも、さ、から始まるものが多いそうです。

 

 

さて、過去にこの「方言ぽっこり」でも紹介しましたが、

青森の方言に、「どさ」という言葉があります。

 

「どさ?」=どこへ行くの?

という意味です。

 

お気づきですか?

「どさ?」の「さ」の遣い方が、方向を示す言葉だということに。

この「さ」の遣い方は、青森出身の歌手・吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」という曲のタイトルにも登場しますね。

この、青森、ひいては東北で広く遣われている「さ」。

調べてみると、前述した「さまに/さまへ」という古語が由来になっていることが分かりました。

 

さらに、前回のテーマに取りあげた、逆接の場合に使う「ばってん」。

こちらも古語を由来にしたものだというのは書きましたが、

青森では、逆接を意味する方言として「ばって」という言葉があるそうで、もちろん由来も「ばってん」と同じ。

偶然にしては出来すぎていますよね。

 

 

この現象について、面白い仮説を見つけました。

 

言葉は、文化や流通の中心地から同心円状に広がっていき、発生の古い言葉ほど、遠隔地で話される、というものです。

その仮説にのっとって、平安京のあった京都を中心にして、放射状にだんだん円を広げていくと、九州と東北は、同じ大きさの円で出会います。

つまり、日本の端と端。この二つの土地で似たような方言が話されていてもなんら不思議なことではない、となるわけです。

 

方言は西日本と東日本ではまったく違うなぁ、なんて縦割りの感覚をぼんやり考えたことのある私としては、この仮説はまったく目から鱗な話でした。

 

ひとつの言葉を由来にした方言が、それぞれの土地で、現代でも遣われている。

まるで、同じ花の種を分け合ったみたいですよね。

そう考えると、遠いと思っていたかの土地が、急に身近に感じられてきませんか?

 

「そこを右さい曲がれば、もう東北ばい。」

 

【隔週月曜日更新】

次は、5月26日っちゃけど、方言ネタは難しかね~。

※情報は2014.5.12時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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