名君・鍋島直正公の銅像が再び、佐賀に建ち上がる

名君(めいくん)の「君」とは、いまの言葉でいえばリーダーですが――名君の条件とは何でしょう?

おそらく目の前のことだけにあくせくするのではなく、治める地の人々の

過去:その土地が育んできた文化や風土

現在:そこに暮らす人々の衣食住と安全を保証する

未来:100年先もこの地が豊かであるように、高い教育を施し、先端技術や知識を取り入れた新しい産業を準備する

の2つに思いを致し、一生涯を懸けてそれに邁進(まいしん)した人なのだろうと思います。

稀代(きだい)の名君とうたわれた佐賀藩の鍋島直正公(14代藩主・1814~1871)が17歳で、江戸の藩邸から佐賀に移られたとき、出発の前の晩、佐賀藩にお金を貸している商人たちが大勢押しかけ、出発が一日遅れました。藩がおかれた厳しい経済状況を目(ま)の当たりにして、若き日の直正公は、人々の暮らしの困窮(こんきゅう)ぶりと自分が背負うことになる重大な責務を思い、駕籠(かご)の中で涙を流したといわれています。

17歳から31年間、直正公は佐賀藩を治めました。

無駄を省いて財政を立て直し(質素倹約を自ら実践し、絹ではなく、木綿の着物を身につけ、父に拝謁するとき以外は足袋をはかず、裸足で過ごしたといいます)、門閥(派閥)や生まれに関係なく、才能のある人をどんどん登用し、藩校で若い人材を次々と育て、当時最先端の技術と西洋医学を積極的に取り入れ(その頃は死病だった天然痘の種痘<ワクチン>を初期に試み、それが大阪などに広まっていきました)、軍事力を高めて外からの侵入を未然に防ぐと共に、進んだ技術や知識を使った新しい産業を興すことに尽力しました。

「わが藩はこの軍事力を使って戦をするなどして、将来のある大事な人材を失わずにすんだことは幸いだった」という意味の言葉を遺しておられますが、お人柄がしのばれます。

1868年の明治の夜明けを見届け、1871年に世を去った直正公ですが、生誕100年にあたる大正2(1913)年、早稲田大学を建学した大隈重信公が中心になり、県内外から多額の寄附が寄せられて、直正公の銅像を建てることになりました。

最新の技術が用いられた高さ4メートルの大きな銅像が、北御堀端(いまの佐嘉神社の近く)に建ち上がり、佐賀図書館もそのそばに出来て、直正公が見守っておられたのですが、そこから30年がたった昭和19(1944)年、太平洋戦争の末期に、日本軍が銅や鉄が不足してどうにもならなくなった折に、この直正公の銅像も供出されました。

銅像になってもなお、人々を守るために、直正公はわが身を投げされたのでした。

それから73年が過ぎた2017年3月4日、新・鍋島直正公の銅像が建ち上がりました。

2017年3月4日、新たに建ち上がった鍋島直正公の銅像。(写真提供:佐賀城本丸歴史館)

2017年3月4日、新たに建ち上がった鍋島直正公の銅像。(写真提供:佐賀城本丸歴史館)

場所は直正公の本丸御殿を忠実に復元した佐賀城本丸歴史館の城門手前にある、広々とした芝生の前庭。

除幕式では晴れ上がった空にお祝いの色とりどりの風船が舞い、直正公はこうしてまた、佐賀の人々を見守られることになりました。後ろにはNHK佐賀の電波塔がそびえていますが、これは近く別の場所に移転が決まっており、電波塔&直正公の組み合わせは間もなく見られないように…。

73年ぶりに佐賀の地に還ってこられた名君・直正公にぜひ一度、会いにこられてはいかがでしょう。

佐賀城本丸歴史館の敷地は広く、一枚の写真におさまらない。写真は外から鯱の門(しゃちのもん・写真右奥)をくぐって中に入り、正面入り口の御玄関(手前の建物)まで来たところ。拝観はここから入る。
写真提供・(一社)佐賀県観光連盟

佐賀城本丸歴史館の敷地は広く、一枚の写真におさまらない。写真は外から鯱の門(しゃちのもん・写真右奥)をくぐって中に入り、正面入り口の御玄関(手前の建物)まで来たところ。拝観はここから入る。
写真提供・(一社)佐賀県観光連盟

 

「外御書院(そとごしょいん=大広間の意)」。一之間、二之間、三之間、四之間と外回りの廊下を合わせると広さ、三二〇畳に達する。その場に立つだけで清々しい気分に。
写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

「外御書院(そとごしょいん=大広間の意)」。一之間、二之間、三之間、四之間と外回りの廊下を合わせると広さ、三二〇畳に達する。その場に立つだけで清々しい気分に。
写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

 

写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

 

写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

写真提供:(一社)佐賀県観光連盟

佐賀城本丸歴史館

TEL:0952-41-7550

※佐賀城本丸歴史館は入場無料、皆さんのお気持ちで募金をお願いしています。

佐賀観光のポータルサイト「あそぼーさが」

◎参考図書:『佐賀の幕末維新 八賢伝』福岡博著・出門堂(2005年刊)/『生誕200年記念展 鍋島直正公』公益財団法人鍋島報效会(2014年刊)

※情報は2017.6.9時点のものです

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