新鋭チェリスト・宮田大さんが語る九州の印象は?オケの裏話も

佐賀市文化会館で5月28日、佐賀を拠点に活動する九州のプロ・アマ音楽家87名によるオーケストラ・アルモニア管弦楽団の第16回定期演奏会が開催されました。今回は、この公演でチェリストとしてソロ演奏を披露した宮田大さんにお話を伺いました。

(聞き手・文 佐賀市シティプロモーション室 樋渡優子)

※関連記事⇒「〝日本人初の世界一〟チェリスト宮田大さん 佐賀でオーケストラと共演」

■一緒に音楽するよろこび

――佐賀は2度目と伺いましたが、九州にはよく来られますか?

今年は2月にアクロス福岡、3月に八女でコンサート、5月は別府アルゲリッチ音楽祭で、小澤征爾(おざわせいじ)さんが水戸管弦楽団を振られた(指揮した)とき、オケのメンバーで参加したのに続いて4度目です。

――地元のアルモニア管弦楽団と弾かれていかがでしたか?

とても楽しかったです。(指揮の)垣内悠希さんとは2度目ですが、39歳と若く、素晴らしい方ですので、垣内さん、アルモニアの皆さんと「一緒に音楽をやろう」と思って来ました。

東京など大都市にはプロというか、それでお金を稼いでいらっしゃるオーケストラが沢山ありますが、アルモニアの皆さんはアマ・プロの混合。音楽を弾くのが好きで、忙しい中、音楽を続けていらっしゃる方々ですので、リハーサルも本番もすごく楽しんでいる感じがありました。これまでいろんなオーケストラとこの曲を演(や)りましたが、オケのカラーによって演奏も変わってきます。

――演奏されたエルガーの「チェロ協奏曲」は難しいらしいですね。

作曲したエルガーは100年前のイギリス人で、全体に英国紳士のイメージの「大人の曲」。それに指揮者のコンクールの課題曲によくなるぐらい、(みなが)合わせるのが難しいんです。それがリハーサルでは合わなかった部分まで、本番では見事に合いました。 

――合う、合わない、は指揮者の力量によるものですか?

指揮者だけでなく、みながどのぐらい耳をダンボにして、お互いの音を聴いているか、が問題です。1、2、3……と機械的にテンポを刻んでいれば、自然に合うという曲ではないので、普通はあんなにぴったりは合わない(笑)。特に三楽章はものすごく音の揺れ幅が大きくて、全員プロの演奏家というわけでないのに、あのレベルまで合うとはすごいです。

――宮田さんは一番前で弾いていますから、オケの皆さんの様子は見えないんですね。

僕の出す小さな音は、後ろの管楽器の方たちまでは聴こえていなかったと思うんですが、そこもちゃんと息が合ってました。音なき音に耳を澄ますというか、意識的に「合わせよう」としているうちは、そこまで息は合わない。今日は、「みなが同じ音楽のほうを向いている」という感じが強くしました。

5月28日、佐賀のアルモニア管弦楽団と共演、熱のこもった演奏を披露した。
写真提供:アルモニア管弦楽団

5月28日、佐賀のアルモニア管弦楽団と共演、熱のこもった演奏を披露した。
写真提供:アルモニア管弦楽団

本番が終わって、この楽屋まで戻ってくるとき、そばにいた団員の方に、「ああ、これで終わりなんだ。淋しいなぁ」と思わず言っていて……こういう言葉が出てくるのは、オーケストラと共演するときにはあまりないんですけれども、佐賀のアルモニアの皆さんが、僕を「ウェルカム」で受け容れて下さって、一緒に音楽するひとときを本当に大事にして下さったからこそだと思います。

――大ホールは1800席ありますが、お客さんも沢山、入っておられました。

静かなパートでも物音一つ立てず聴いていらして、弾きやすかったですし、皆さん、集中して聴かれていました。

九州のお客さんは意識が高いと思いますね。クラシックに関しても、「東京のように毎日、沢山の演奏会があるわけじゃないから、ふと、興味が湧いて来てみた」という方も多くて、そういう〝機会〟をとても楽しみに、大事にされている感じが伝わってきます。

演奏する側にとってはホールの造り、特に、反響のし具合がとても重要です。自分の想定より小さな音しか返ってこないと、客席のどこまで自分の音が届いているか、考え直さなければなりませんし、逆に、反響しすぎるのもちょっと弾きにくい。その点、この文化会館のホールは、反響する音がこちらが想定する範囲内にきっちり収まっていて、好きでした(笑)。演奏者が弾きやすい、いいホールだと思います。

――当ホールの反響については、市としても、力を入れて設計していますので、嬉しいお褒(ほ)めの言葉です。

■チェロにもシートベルト!?

――チェロは大きな楽器ですが、どうやって佐賀まで運ぶんですか?

1席ぶん飛行機のチケットを買って、自分の横の席に置きます。座席と前の席のリクライニングとの間に、ちょうど人が前の座席に下に足を入れるような格好で。万一のとき、逃げ遅れるといけないので、楽器はかならず窓際の席と規則で決まっていて、だからチェロの横に座る僕は、景色は見えないんです(笑)。

――シートベルトもするんですか?

しますよ、1本ですけど。目的地に着いたら、リュックみたいに自分で背負って運びます。

――重さはどのぐらいですか?

楽器のほか、スコア(楽譜)も一緒にいれて、8キロから10キロになります。

――宮田さんはもうすぐ31歳になられますが、9歳の初出場以来、出たコンテストはすべて優勝、23歳で日本人で初めて世界一になられています。プロの演奏家として活動を始めて何年ぐらいですか?

よく質問されるんですが、いつプロになったのか線引きがはっきりしなくて(笑)。学生の頃も、地元の栃木交響楽団で弾かせてもらっていました。これもアルモニアのようなアマチュアを中心としたオケでしたが、そこでいろんな曲を弾いた経験がのちに、東京やプロのオーケストラと弾くときに、大きな糧(かて)になりました

今回は観光する時間はありませんでしたが、「旨辛(うまから)佐賀牛」をおみやげに…。

今回は観光する時間はありませんでしたが、「旨辛(うまから)佐賀牛」をおみやげに…。

――昨日の午後、佐賀にいらして、このあとすぐに東京に帰られるのですね。佐賀をゆっくり見て頂けず、残念です。

今回はスケジュールの都合で観光できませんでしたが、佐賀牛は前に食べましたよ。大分での演奏会のあと、食事に出てきて「美味しいお肉だな」と思ったら、佐賀のお肉だと言われました。少量のステーキでしたが、脂身ものってるけど全然脂っぽくなくて……つい、帰りに「美味しかったですねえ、さっきのお肉」と口から出たら、あちらの方が「……佐賀牛、ですね……」と少しがっかりなさったような……。

――佐賀牛も喜んでいることでしょう(笑)。

とても美味しかったので、東京や関東でも、もっと広まってほしいです。

――宮田さんはご出身が栃木県で「とちぎ未来大使」もされていますが、あちらの名産品は何ですか?

イチゴ、かんぴょう、僕の育った宇都宮はいろんな種類の餃子で有名です。あと、意外とおそばも美味しいんですよ。鹿沼(かぬま)そばといって、ざるそばの上に茹でたニラが盛大に盛ってあって、すごく美味しいです。

――これからのご予定をお聞かせ下さい。

6月からはコンサートその他、忙しくなってきます。高校生の頃、自分も参加した長野県松本市で開催される小澤征爾音楽塾で、「子どもたちのオペラ」のチェロ部門を、今年から教えることになりまして楽しみにしています。

――ますますのご活躍を祈念しております。最後に「クラシックって敷居が高いな」と思われている方に何かメッセージを。

そうですね……まずは一度、聴きに来て頂くしかないんですが、最初は格式ばったものより、アンサンブル(室内楽のような小規模の合奏)や小品の演目がお勧めでしょうか。最近は聴くだけでなく、楽器を使ったワークショップや参加型プログラムもありますので、音楽に触れるいい機会かもしれません。

クラシックは、アイドルのコンサートチケットよりお安いんですよ(笑)。ぜひ若い方も一度、生の演奏を聴きにいらして下さい。

宮田大さんオフィシャルHP

最初のCD「DAI  MIYATA FIRST」。副題のChanting with Celloは、〝チェロと謳(うた)う〟。

最初のCD「DAI  MIYATA FIRST」。副題のChanting with Celloは、〝チェロと謳(うた)う〟

 

2枚目のCD『チェロ 一會集 (いちえしゅう) ~Rencontre~』

2枚目のCD『チェロ 一會集 (いちえしゅう) ~Rencontre~』

佐賀市文化会館HP

アルモニア管弦楽団FB

宮田さんが「未来大使」をつとめる栃木県の観光と食のサイト

「とちぎ旅ネット」

佐賀県の観光サイト「あそぼ~さが」

※情報は2017.6.12時点のものです

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