【方言ポッコリ】方言コンプレックス~ロボット編~

「あーもう、うざい!」

「しゃーしぃ!」で聞き慣れていた耳に、標準語の喧嘩はより攻撃的に聞こえる。

上京して丸13年。

現在私は、主に標準語を遣って生活しています。

イントネーションを間違ってしまうことはときどきありますが、方言がこぼれるのは、帰省したときか、地元の人と電話で話す時くらいです。

ただし、東京に住んでいるからと言って、無理に標準語に直す必要はありません。

むしろちょっと訛りがあったりするほうが、好ましい印象を与えるような気がします。

しかし私には、プライドにかけて、どうしても方言・訛りを矯正しなくてはならない事件がありました。

上京4年目、夢であった映像業界に、晴れて足を踏み入れた私は、

「私は訛っていない!」

と思い込んでいました。

悲劇はそこから始まります。

映像を編集する時、まずは尺(長さ)を決めるために、「仮ナレーション」を撮ります。

通称「仮ナレ」。これは、プロのナレーターではなく、制作スタッフが読みます。

編集の初期段階で、尺やタイミングにアタリをつけるために、重要な作業になってきます。

忘れもしません。私の仮ナレデビューは、とあるロボットとの会話でした。

ロボットの音声は電子音声ですでに吹き込まれており、私はナレーターさんが読む部分だけを担当しました。

緊張しながらも、無事に仮ナレ撮り終えた私に、先輩ディレクターが一言。

「訛りすぎて、ロボットとお前とどっちが話してるのか分かんねーよ!(大爆笑)」

・・・は?

まさに、大爆笑、です。

お腹が捩れるほどに笑い転げる先輩に、私は何がそんなに笑われているのか分からず、ただ呆気にとられるしかありません。

そのとき私は、「標準語が話せている」と思っていたわけですから。

しかし、実際に撮った自分の声を聞いてみると。

「な、な…、…なんじゃこりゃー!!!!!」

膝から崩れ落ちるほどの衝撃でした。

自分の声を録音して聞く機会なんてほとんどないですから、気づくわけもなかったんですよね。

私の言葉は、無理に標準語を話そうとして、イントネーションがぐちゃぐちゃの日本語でしかなかったんです。

 

このときの不幸は、相手がロボットだったことです。

『無邪気な電子音声 VS 自信たっぷりの訛り言葉!』

そりゃ面白いよ…。

あのときの悔しさがバネになって、今の私がいます。

というのは強がりで、ほんとに恥ずかしすぎて、穴があったら、いや、穴が無いならいっそ自分で掘ってでもうずまり入りたかったです。

上京した当初、「茨城出身?」と言われることが多々ありました。

北関東は、方言が無い代わりに、イントネーションがちょっと違っているのです。

茨城出身に疑われるたびに、(なんでこんなに間違われるんだろう?)なんてのんきに考えてた自分!!

方言と訛りは1セット!お前は訛っているぞ!と、過去の自分に諭したい。

しかし、災い転じて、じゃありませんが、こんな経験をきっかけにして方言への興味がどんどん増していったので、人の気持ちというのは不思議なものです。

※情報は2014.6.9時点のものです

久保田美栄

1982年生まれ。福岡県うきは市出身。高校卒業後、上京。
在京13年を経て、筑後弁と標準語を使い分ける『方言バイリンガル』に。
現在は、東京にて映像制作の仕事に就く。

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