半身不随の弁護士&小説家が社会人生活を再開!「ネバーマインド、温かな無関心」vol.10

42歳、半身不随の弁護士&小説家がいよいよ社会人生活を再開する!

車椅子には「LOCK’n’ROLL」

弁護士であり、小説家としても活躍する法坂一広さんは、脳出血で倒れて半身不随となってしまう。

退院後、社会復帰を果たした法坂さんを待ち受けていたのは・・・

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病床ROCK尺

車椅子には「LOCK’n’ROLL」

 

vol.10/ネバーマインド、温かな無関心

こういう身体になってみて、「人の心って意外に温かいんだな、親切ってまだまだあるんだな」と身に染みたことはたくさんあります。逆に気になることも。特に大名界隈の自転車。狭い歩道をふらふら杖で歩いてる歩行者の周囲をわざわざ通らなくてもよくないかと思うわけです。やっぱり人間ができていないもので、「その立場にならないと分からないんだろう」と思いいたると急に怒りは萎む。よし、仏の顔も三度まで、と我慢するのですが、人の顔を覚えてられるほど、見てられないのですよね。歩くのに精いっぱいで。

仏の顔、というと、母の初盆で篠栗の南蔵院にいった時のこと。坂があまりにも急なものだから、うちの親戚は有無を言わさず、僕の麻痺側の左の腕を取って支え、歩かせようとするのです。動かない左腕でバランスとって何とか歩いてるのに、この動きを制限されると、かえって、歩けないし、怖い。支えたいのなら、右側で、杖の代わりになってもらったほうがいいんですが、この感覚は分かってもらえない。

嘆きながら振り返ると、涅槃像の優しげな顔が目に入る。涅槃の境地のことを英語でニルバーナと言うそうです。僕の大好きなロックバンドの名前。大ヒットしたアルバムのタイトルが「ネバーマインド(気にするな)」ってことで、僕のことは気にするなと言いたい気分でした。

大抵のことは周りの人から積極的に手を差し伸べてもらう必要まではなくて、こちらが何か頼んだ時に声の聞こえる距離にいてくれればありがたい。ニュース番組で、「温かな無関心」なんて言葉を使っていたことがありましたが、涅槃像のようなイメージで見守っていただければ。もちろん、僕はまだまだリハビリ道をまい進中ですし、もっと回復するつもりですけどね。回復した時に不自由な人に手を貸したい衝動にどう対処するかも、今のうちから考えておきましょう。ニルバーナを口ずさみながら。

 

Profile

法坂一広(ほうさか いっこう)

福岡市在住の弁護士、小説家。2011年に第10回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞を受賞し、弁護士探偵物語シリーズを執筆。2015年に脳出血で倒れ、翌16年に仕事を本格的に再開。「もう乗らない」と車椅子をLOCKして(鍵をかけて)、マラソン大会復帰を目指す。最新作は「ダーティ・ワーク」(幻冬舎文庫、2015年)、西日本新聞社「のぼろ」で連載中。

 

※情報は2017.8.24時点のものです

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