「カレーほーろー記」第2回~消えたカレー店数知れずの巻~

 すごく人気のあるカレー店でいつも楽しみに行ってたのに、いつの間にやら閉店、どうなったんだろうってことありませんか?私の住む福岡でも、そんなお店数々あります。天神ビルの「Kサムソン」、サンセルコの「アングロ」、古くは中洲の「湖月」、雑餉隈から福大の近くに移転した「シェフ」、名前は忘れましたが、渡辺通りのかつてRKBがあった裏あたりのこぢんまりした安価なインドカレーのお店・・・。全部好きだったお店です。

 独特のねっとりしたカレーで、おかわり自由のレーズンバターライスを何杯もイケた「Kサムソン」。福岡市の中心・天神ビルの地下にありました。今は、別のお店になってます。どの場所だったか今は忘れちゃいました。

 もはや影も形もありません。

 全国版のカレー名店図鑑みたいな本にも「閉店。消息不明」みたいなお店がけっこうあります。
 なぜなんだろう?と思ってました。

 (株)カレー総合研究所という会社があります。3年ほど前、その社長・井上岳久さんをご紹介いただき、昼食(当然カレー)をご一緒しました。その時に井上さんは言われました。

 「カレー屋ってのは、基本儲かる商売じゃないんですよ」。「外食でカレーは、大体お昼ごはん。夜カレーの店に飲みに行く人ってあんまり居ないでしょ」。「手間がかかる割に、一日の勝負が昼食時の2、3回転では売上を上げるのはなかなか厳しい」。

 う~む。かつて「横浜カレーミュージアム」の再興を手掛け、中小企業診断士の資格も持つビジネスマンの発言、説得力があります。たしかに、飲みに行って、「ラーメンでシメようや」って話にはなりますが、「最後、カレー食ってくか」ってことにはなかなかなりません(私は無性に食いたくなって時々ひとりで食べちゃいますが)。

カレー店の経営、よっぽどうまくやらないと、長年にわたり安定的に維持するのは難しい構造のようです。

 それに加えて、「カレー道」を志す人の性格、生き方も影響しているようです。

 私が東京単身赴任時代に買った、カレー巡りの道しるべの一冊「本当は教えたくないカレー東京最好の100店 RETURNS」。“東京カリー番長”こと水野仁輔さんという方の著書です。その中で、あのくまモンの仕掛け人、放送作家の小山薫堂さんと水野さんが対談してます。消えてしまった幻の名店に触れ、「ラーメン店主は宗教家、カレー店主は哲学者」という目からウロコの、的を射た分析がなされます。

 これがキリスト教徒にとってのバイブル、イスラム教徒におけるコーランにあたるカレー好き必携の書です。

 

 たしかに、こだわり派のカレー(カリーというべきでしょうか?)は、坊主にあごひげ、鋭い眼光でただ黙々とストイックに香辛料と格闘してるような人々がやってます。使用人も雇わず、「俺の世界は誰にも触らせねえ」とかいう近寄りがたい雰囲気を醸し出します。福岡では、お勘定のたびに、「修行しておきます」と申し訳無さそうに目を伏せていた「スパイスロード」という中央区高砂のお店の店主さん(高田さんといわれたらしい)がその典型でしょうか。

 そうです。彼ら(彼女はほとんどいない。女性は現実的でロマンを追わないからなのでしょうか。※個人の見解です。女性の方、批判は甘んじて受けます)にとって、カリー道は、けものみちを傷だらけで進む修行です。孤高の旅路です。小山さんたちは、哲学者と言われてましたが、宗教であれば、山伏とかチベット密教の修験者あたりが当てはまる感じです。

 男の料理は、「お金ばっかりかけて全然ありがたくない」と家計を気にする主婦のみなさんからひんしゅくを買います。「孤高のカリー道」は、採算度外視、生活設計無関係、理想と折り合いをつけられない不器用な者たちの果てしない挑戦なのです。私たち凡人の客は、ひとときでもその「作品」を味わえたことに感謝しなければなりません。

 片や、ラーメン。元々こちらも無口な頑固親父の侵すべからざる世界だったかと思いますが、今や「大乗仏教化」が主流です。有名店ののれん分け、家元よろしく「□□家」、「○○系」・・・。若者にも人気の職業になったりしてます。これは、修行とか堅苦しいことを言わず、そのノウハウを全国いや世界にまで展開するビジネスセンスのある経営者の力によるところ大です。一風堂の河原成美さんがその最高峰でしょう。亡くなられた佐野実さんも、険しい顔されてましたが、その実商才ありでしょう。

 どっちが良いとか悪いとかでなく、カレーの名店は「そこだけでしか味わえない世界」、ラーメンの多店舗展開は「どこでも同じものが食べられるもてなし」。一慨には言えませんが、大雑把にいえば、そんな感じだと思いませんか。

 いっとき、熱狂的なカレー好きをうならせた名店がいつのまにかひっそりと店をたたみ、個性的な店主はどこで何をしてるやら。さびしくて、「もっかいあのカレーが食いてえよう~~~!」と泣き叫んでもムダです。新しい贔屓のお店を見つけて、スピッツの「君が思い出になる前に」を口ずさみながら♪、今この瞬間に全力投球、一期一会のカレーを口に運びましょう。

 悪口を言うつもりはありませんが、閉まっていた有名店の名前が復活して、「あの味を再現」とやってることがありますが、私がこれまで試した限り、その「あの味」だったことは一度もありません。それは、悲観することじゃなくて、「新しいカレーのお店が出来た」と思うのが正解です。SMAPのそっくりさんたちが集まっても、そりゃSMAPじゃないでしょう。

 ところで、有名なラーメン店チェーンは色々ありますが、カレー店のチェーンで有名なのは、「CoCo壱番屋」さんがダントツにメジャーです。。大手メーカーのS&Bさんも、「カレーの王様」を広げるのに苦戦してきました。

安定の「ココイチ」についての思い出は、またいつか。

私のカレーほーろー、続きます

 

※情報は2017.3.13時点のものです

久留仁 譲二(くるに・じょうじ)

 カレーを食べて半世紀。食べるのも、つくるのも、関連本を読むのも、レシピ番組を見るのも大好き。「家のごたる」タイプから激辛インド風まで万能に食べこなす。

 でも、パクチーは苦手。

カレーに限らず、子どもの頃の味覚から抜けられない。ハンバーグ、卵焼きからも離れられない。

アラジンの魔法のランプみたいな容器からカレーをごはんにかけるのが夢だったが、家では一度もやったこと無し。

ジョージ・クルーニーと同い年。

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