倉科カナさんが語る、主演映画「あいあい傘」の撮影秘話

映画を見た後、誰の声を聞きたくて誰に会いたくなったか…
改めて大切な人を想うきっかけになればうれしいです。

 生き別れた父と25年ぶりに再会する娘の切なくも温かい5日間を描く映画「あいあい傘」。宅間孝行監督が主宰していた劇団の名作を11年の歳月をかけて映画化。主人公・さつきを演じた倉科カナさんに話をうかがいました。

倉科カナさん

倉科カナさん

-脚本を読んだ印象は?

 登場人物一人一人が人間くさくて温かい。初めて脚本を読んだ時は、思わず泣いてしまいました。素晴らしい脚本を壊さずに、私たちが演じることでより一層素敵なものにしなくてはならない-。そんなプレッシャーはありましたが、私も子どもの頃に父と離れ、最近再会したんです。偶然にもさつきと境遇が似ていたので彼女の心情がすごく理解できましたし、作品とのご縁を強く感じました。

-役作りで心掛けたことは?

 監督には「“ただ父に会いに行く”という思いだけを胸に現場にいてもいいですか?」とお伝えしました。そしたら「それでいいよ」と。頭で考えることなく現場でダイレクトに受けるものをそのまま素直に出すことができました。私自身は父がいないことを気にしていなかったつもりでしたが、父がいないことの空虚感や心の傷がやはりどこかにあったようで、その心の痛みを種として役を広げていきました。

-1シーン1カットの撮影が多かったそうですね。

 心がずっとつながっている感覚なので役者としては演じやすかったです。普段、撮影後に「ああすればよかった…」と後悔してしまうことがあるのですが、この作品に関してはそれが一つもなかった。すべてが正解だったんです。撮影中のアクシデントも皆がものにして新しく塗り替えていく。アドリブも多い現場でしたし、監督も丁寧に気持ちを伝えてくださるので伸び伸びと演じることができました。

-共演者は個性派ぞろい。撮影の雰囲気は?

 父・六郎を演じる談春さんとの撮影は本当に一瞬で。25年ぶりに再会する役なので、現場でもできるだけ距離を保って、会わないようにしていました。遭遇しても「あれは談春さん。六郎ではない、あれは談春さん…」と言い聞かせて(笑)。六郎の妻・玉枝を演じた原田(知世)さんに対してもそう。同性の私も憧れる、とっても可愛い大好きな先輩なので、たくさんお話ししたかったのですが、そんな気持ちを抑えるのが苦しかったです(笑)。市原(隼人)さんや高橋(メアリージュン)さんは同世代。先輩のやべ(きょうすけ)さんはムードメーカー。居酒屋での撮影後はそのまま飲んだりして(笑)。本当に仲良く和気あいあいとお仕事させていただきました。

-タイトル『あいあい傘』の意味を語るセリフが印象的でした。

 「激しい雨が降れば降るほど相手を気づかう、濡れてしまうからもっとくっついて歩いていく」このセリフは私の結婚観、家族観にもつながります。困難な時こそ、一緒に居てくれる人のことを気づかいたいと思いますね。(貫一役で出演する)トミーズ雅さんが「愛が強い方が濡れるよね」っておっしゃっていて、確かに…と。

-改めて、この映画を通して伝えたいことは。

 自分で演じておきながら、完成した映画を見て涙が止まりませんでした。さつきと一緒に私自身も救われたようで心が軽くなりましたし、自分の心の傷みを糧に演じきったからこそ昇華されたような感覚にも包まれました。年代や性別、国籍も超えてすべての人に伝わる物語で、本当に愛にあふれた映画です。大好きだと思う人やモノを大切にしようと思っていても、それが日常となり忙しい日々に追われると、そんな気持ちをつい忘れてしまいがち。この映画を見た後は、誰の声を聞きたくて誰に会いたくなったか、一瞬でも歩みを止めて、改めて大切な人を想うきっかけになればうれしいです。ラスト20分、九州の方は心根の熱い方が多いのでハンカチでは足りないんじゃないかな。よく吸収するタオル地のハンカチを忘れずに(笑)、ぜひ劇場へ足をお運びください。

[プロフィール]
倉科カナ/1987年生まれ。熊本県出身。主な出演作は連続テレビ小説「ウェルかめ」(09~10)、映画「3月のライオン」(17)、ドラマ「刑事7人シリーズ」(15・16・17)、「春が来た」(18)など。


映画『あいあい傘』 10月26日(金)公開

(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

25年前に姿を消した父・六郎(立川談春)を探しに小さな田舎町を訪れたさつき(倉科カナ)。テキ屋の清太郎(市原隼人)の案内で現在の六郎の生活を知り、新しい妻・玉枝(原田知世)に会いに行く決心をするが…。

※情報は2018.10.25時点のものです

秋吉真由美

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